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逆風の外食産業、頼みはデータマイニング

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ニューヨークにある米国版"鉄人シェフ"の店のテーブルセット

To Survive in Tough Times, Restaurants Turn to Data-Mining

825日付 ニューヨーク・タイムズ紙

 

アメリカでは外食産業のtraffic(訪問客数)が伸び悩んでいるという。記事によると、今年の見込み客は、レストラン形式の店で2%ダウン、ファストフード店は横ばいの予想。そんなslump(不調)を打開する策としてdata-mining(データマイニング)、つまりビッグデータに注目が集まっていると見出しはうたう。

たとえば、売れ行きを管理するPOS(販売時点情報管理)システムやモバイル端末アプリを使って顧客の利用頻度や好みを把握し、おすすめ情報をタイミングよく送ったり、予約客についてSNS検索して接客に生かしたり。記事で紹介されているレストランチェーンのCEOは、常連が集う小さな個人レストランのようなきめ細かなサービスを、データマイニングによってチェーン店でもできるようにしたいという。業界団体の調査では、restaurateur(レストランの経営者)の8割がITを活用すれば経営がよくなると考えているそうだ。

IT企業にすれば、自分たちの技術で外食産業というinefficiency(非効率)の多いspace(分野)をdisrupt(打ち砕く)ことは大いなる商機となる。SNSやレストラン評価サイトの書き込みから天候データまで、あらゆる情報をデータマイニングに生かせないかと大手もベンチャーもscrambling(先を争ってがんばっている)と記事は伝えている。

しかし、来店した客がレストランの食事やサービスに本当に満足したのかどうか、そうやって集められたデータを解析すれば判断できるのだろうか。個人的には疑問を持っている。

先日、カリフォルニア州パロアルト市にある格式高いレストランを訪れたときのこと。昼食に招いた大切なクライアントと食事中に話し込んでいたら、ウェートレスに「ほかに何かご注文はありませんか」と何度も会話を遮られて不愉快な思いをした。データマイニングは、そのときの私たちの心の中を発掘することができるのだろうか。いつもよりチップが少なかった事実は記録に残っても、なぜ少なかったのかはわからないだろう。いくらITが進化しても、レストランで何が起きているのか、コンピューターの端末に入力されることのない出来事を観察、把握できる人間が必要だと思う。