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歴史的な出来事。ハーバードが社交クラブにペナルティーを科す

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サンディエゴ州立大学のフラタニティの建物。会員の性的暴行を理由に2014年に閉鎖された=Reuters

“In Historic Move, Harvard to Penalize Final Clubs, Greek Organizations”

5月6日付 ハーバード・クリムゾン紙

サンディエゴ州立大学のフラタニティの建物。会員の性的暴行を理由に2014年に閉鎖された=Reuters

私がイェール大学で勉強していた当時、社交的な側面で目立っていたものは、なんといってもsenior secret societies(4年生のための秘密クラブ)だ。中でもSkull and Bonesというクラブが特に有名で、ブッシュ元大統領親子や現国務長官のジョン・ケリーなど、メンバーには有名人も少なくない。こうしたクラブは歴史が長く、独自の建物を持ち、豪華なパーティーやディナーを開いている。

secret」なので、どのクラブに入っているか口外してはいけないことになっている。友人たちがどのクラブに入っているかを知ることはなかったが、各クラブのディナーが開かれる毎週日曜日は食堂に集まる友人の数も減り、寂しく食事をしなければならなかった(私もクラブの面接を受けたが、残念ながら選ばれることはなかった。クラブの半数は男性だけで構成され、女性がクラブに入るのは狭き門だった)。

イェールだけでなくプリンストンやハーバードにも同種のクラブがある。プリンストンではeating clubs、ハーバードでは見出しにあるようにfinal clubsと呼ばれる。いずれも歴史的な組織で、やや時代遅れの雰囲気はあるものの、各大学の特別な伝統として受け継がれている。ハーバードがその歴史と伝統あるクラブへの懲罰を発表した時、驚いた人は少なくない。

記事によると、懲罰の対象となるのはfraternities(男性だけのクラブ)やsororities(女性だけのクラブ)だ。もともと公立大学に多かったが、アイビーリーグ(ハーバードを含む米東部の名門私立大学の連盟)にも広まった。これらは一般的にクラブ名がギリシャ文字から成り立つ。見出しの「Greek Organizations」はこのことを指す。懲罰の内容は、クラブのメンバーはスポーツチームや学生グループのリーダーになれず、各種奨学金への推薦も受けられなくなることだ。

ハーバードが厳しい態度をとった理由は、対象のクラブが入会資格を一つの性に限っていることだ。こうしたクラブは大学の社交生活への影響力が大きい。記事は、ハーバードの学生部長のこんな言葉を紹介する。「クラブの多くは男性だけのためにあり、採用の方法、豊かな資産、権力のある人へのアクセスからみてexclusionary values(排他的な価値観)をpropagate(広める)。ひいてはハーバード全体の価値観をundermine(土台から壊す)。21世紀ではuntenable(維持できない、ありえない)と言えるほど時代遅れなものだ」

ハーバードのinclusive(多様な人が居心地よくいられる)環境をつくろうとする姿勢に、感心する人も多い一方で、保守的なスタンスをとるウォールストリート・ジャーナル紙などは、大学が学生の子守になる傾向を示すと批判する。私自身、こうしたクラブには多少疎外感を感じていたが、ハーバードのやり方も少し行き過ぎかなと思っている。

(5月6日付 ハーバード・クリムゾン紙から)