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壁がつくる世界

壁を牛耳るメキシコ・マフィア

移民たちの証言②

米国とメキシコの国境の壁は、メキシコのマフィアに「利権」をもたらした。「コヨーテ」と呼ばれるガイドを囲い込み、移民に壁の「通行料」を迫り、支払えなければ麻薬を背負わせる。移民たちがその手口を語った。(GLOBE記者 村山祐介)


「Abema x GLOBE」壁特集より


●車塗装工 アレハンドロ・バスケス(21)@メキシコ・ノガレス



中米ホンジュラスから貨物列車に飛び乗って来ました。車内では、できるだけ知り合いをつくるようにしていました。マフィアが乗り込んできて恐喝されるからです。数が多いほど安全なので、10人以上でかたまっていました。


それでもメキシコでは2回、誘拐されました。明かりだけの部屋に2日間監禁されて、お金を奪われて朝3時に荒野に放り出されました。


早く米国に行きたいのですが、今は状況が危険すぎるので様子を見ています。国境越えがマフィアの利権になっていて、米国側に入るには、コヨーテに3.5万ペソ(約21万円)以上払う必要があります。払えなければ、唯一の方法は40~50キロの麻薬を背負って歩くことで、成功すれば2000ドル(約22万円)近くの報酬を出す、と言われました。


麻薬を背負う場合、出発の15日前からエアコン付きのいい家が用意され、食事も出してもらえます。コンクリート・ブロックのようなリュックの重みに耐えられるよう、脂肪を蓄えるためです。6日間で砂漠を横断する日程で、6~9人が一組になって3人のコヨーテがつくことになっていました。


マフィアの許可なく国境を越えることはできません。捕まったら殺されます。軍用装備で監視していて、勝手に壁を越えたら必ず見つけ出すと言うんです。国境警備隊もマフィアもやることは同じです。


ホンジュラスでは車の塗装工をしていました。地元のマフィアが毎週来て、みかじめ料を払えと脅されました。手元に残るお金の半分を渡すと、食べていけません。だからすべてを売り払って旅費にしたんです。もう帰る場所もありません。応援してくれている前妻のいるマイアミまでなんとか行きたい。仕事をもらえることになっているんです。


●建設作業員 フェルナンド・クルス(50)@メキシコ・ノガレス


これまで6回米国に入って、3回強制送還されました。昔に比べて、マフィアのせいで国境越えはより危険になっています。


今はお金を払わないと、国境を越えさせてもらえません。払うと、越境を見逃してもらえる合言葉を教えられます。「sabina3」といった名前と番号の組み合わせでした。タクシーはマフィアを怖がって、壁の近くまでは行ってくれないので、8時間かけて車止めしかない場所まで歩いて入国しました。


コヨーテ(ガイド)に1800ドルを払って手配してもらったこともあります。男女11人の集団で4時間歩いて、壁が高いところを回り道して国境を越えると、米国側にバスが待っていました。


正式な書類を持たない移民はとても弱い立場で、警察にも頼れません。コヨーテにだまされて誘拐されたこともあります。40人くらいで民家の裏庭に押し込まれました。家族を脅して、身代金を払わせるためです。女性に暴行し始めたので、みんなで助け合って逃げ出しました。


砂漠を越えるのは、5人の子供によりよい生活をさせるためです。米国なら工事現場で一日働けば120ドルもらえましたが、メキシコはわずか5ドル。ばかばかしくてやっていられません。だから体を張って砂漠に向かうんです。壁で国境を越えようとする人を抑え込むことはできません。越える方法を探すだけです。


(敬称略)


GLOBE10月号と「Abema x GLOBE」の壁特集の全編はこちらから

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