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壁がつくる世界

新たな欧州国境沿岸警備機関とは

EUが対外国境管理を強化

欧州連合(EU)は難民危機をうけて2016年、それまであった欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)を強化するかたちで、新たに欧州沿岸国境警備機関(略称同じ)を立ち上げた。何が変わったのか、ポーランドのワルシャワにある本部で、広報官のイザベラ・クーパーに聞いた。(聞き手・GLOBE記者 浅倉拓也)

密航情報を集約するEU機関FRONTEXの職員

――FRONTEXが新体制になったのは、どういう経緯だったのでしょうか


欧州は(EU加盟国の大半と非加盟4カ国による)シェンゲン協定により、加盟国間の移動の自由を誇ってきました。そのためには対外国境が適切に管理されなければいけません。2004年に創設された旧FRONTEXは、シェンゲン圏外と接している国の国境管理を支援してきました。

しかし、2015年の難民危機は、大きな衝撃でした。一部の政治家や市民は、果たしてシェンゲン協定は機能しているのか、疑問を抱くようになったのです。

この年、約100万人の移民が主にギリシャ、一部はイタリアに押し寄せました。これは両国の国境管理のキャパシティーを超えるものでした。FRONTEXも支援をしましたが、移民の数は想定外の規模でした。

FRONTEXの役割は、その国の当局に代わることではなく、あくまで追加的な支援をすることです。加盟国から両国に、国境管理の担当官を派遣しましたが、十分な人数ではありませんでした。ヘリコプターや船舶も、もっと必要でした。権限も十分ではありませんでした。例えば、EU各国の国境管理当局は、犯罪やビザなどに関するデータを共有していますが、ある国の担当官がFRONTEXの一員として任務にあたる場合、そのデータベースにアクセスする権限がなかったのです。

FRONTEXの任務を説明する広報官のイザベラ・クーパー

――新体制でどのようなことが変わったのでしょうか


加盟国は国境警備官などの要員を、各国の割り当てに応じて、FRONTEXに供出することが義務になりました。常時1500人規模の要員をプールし、必要な時に派遣することができます。要員は、国際活動の経験が豊富な人たちで、指紋の専門家、旅券偽造の専門家などもそろっています。緊急時には、このプールから必要な要員を加盟国に派遣することができます。

この他、人身売買やドラッグの密輸といった犯罪にも、FRONTEXの要員が、加盟国の当局と協力して、対応できるようになりました。先ほど述べた、犯罪などのデータベースにアクセスできるようにもなりました。あと、これもたいへん重要なことですが、加盟国が難民認定しなかった移民を送還する際、その任務をアシストできるようになりました。


――強制送還の支援とは、どういうことでしょうか


処分を決める権限はあくまで加盟国の当局にありますが、FRONTEXも国境管理の担当官をギリシャやイタリアの現場に派遣し、移民に対するインタビューなどによる身元の特定や審査をしています。FRONTEXは難民認定機関ではありませんが、本当に保護の必要はないのか、インタビューなどで注意深く見極めています。シリア出身者であればほぼ100%難民として認められますし、イラクやアフガニスタンの出身者も高い確率で難民認定されます。実際の送還業務は、基本的に各国が行いますが、FRONTEXが航空機のチャーターなどを調整したり、費用を負担したりするケースもあります。


――EUは対外国境の管理を強化し、難民を含めて、移民が入ってくるのを阻止しようとしているのでしょうか


これは強調したいのですが、私たちは国境管理によって移民の流入をどうにかできるとは思っていません。国境管理は大きなパズルの一部なのです。移民や難民が生じるのは、戦争や貧困といった根本的な原因があるからで、そこから数十億ユーロの利益をむさぼっていると推計される密航ビジネスが生まれています。

国境管理はもちろん必要ですが、難民が合法的に欧州で保護されるルートも必要です。現状の制度では、欧州まで物理的にたどり着かなければ難民申請できず、そこで密航ビジネスが暗躍しているのです。問題を解決するには、多様なステップが必要なのです。しかし、移民というデリケートな問題で、すべてのEU加盟国が合意できる方策を見いだすのはとても難しいのも現実です。

日本でも移民に対して国内で様々な考えがあるでしょうが、EU全体では、それが28カ国分あるのです。それがいかに難しいことか、私たちはいま直面しているのです。




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