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国境を越える電力

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発電大国ラオス、国内電力は「輸入頼み」

外資主導で「二重構造」 送電網整備がカギに






水力発電所の建設ラッシュが続き、今や国内の電力消費量の4倍も発電しているラオス。でも実は、自力では国内需要を賄えず、電力公社が9年連続で電力の輸入超過に苦しんでいる。いったいどうなっているのだろうか。


そのヒントは、中部ナカイ高原にある国内最大の水力発電所ナムトゥン2の「構造」にあった。


ナムトゥン2水力発電所のフロアに並ぶタービンはタイへの輸出用で、国内用は階段の奥の区画にある=写真はいずれも村山祐介撮影

体育館のような吹き抜けのフロアに大型タービン4基が並び、「ブーン」という回転音が響く。原発1基分に相当する100万キロワット(KW)の発電能力があり、2014年には国内の電力消費量の1・5倍を発電した。だが、「ここで発電された電力はすべてタイに専用の送電線で輸出されています」と担当者。国内向けは、奥の区画にある小型タービン2基(7万KW)だけという。つまり一つの発電所内に、タイ向けとラオス向けのタービンと変電所、送電線が2セットあり、別々に運用されているというわけだ。


そんな「二重構造」の背景には、「カネ」の論理がある。


ナムトゥン2の総工費は12・5億ドル(約1360億円)。着工した05年当時のラオスの外貨準備高3・1億ドルの約4倍もの巨費だ。ラオス側の経済状況にかかわらず、資金力のあるタイ電力公社が電力の95%を外貨で確実に買い取る――。そんな売電契約が土台となって、フランスとタイ、ラオスの出資で3割を担い、欧米やタイなど27もの金融機関が7割を工面する資金計画がまとまった。

これを機に、外資による大規模開発が次々と持ち上がり、ナムトゥン2が稼働した10年には外資を保護する法律も整備されて、外国マネーが水力発電に一気に流れ込んだ。14年のラオスの発電容量の約9割を、こうした外資主導の独立系発電事業者(IPP)が所有している。


模型の上部にあるタービン建屋でできた電力を左中央の大きな変電所でタイへ、左下の小さな変電所からラオス国内へ、それぞれ送っている=いずれも村山祐介撮影

電力輸出の拡大でラオス経済は活況が続き、国内の電力消費量も05年からの10年間で約4倍に膨らんだ。とりわけ暑さが厳しい乾期はエアコンで電力需要が増える一方、河川の流量が減って発電量は減ってしまう。IPPの電力はこうしたラオスの事情とは無関係に売買契約に基づいて輸出されてしまうため、国内向けは、電力公社がタイや中国から電力を輸入してしのいでいる。14年は国内消費量の3割を輸入に頼ったが、タイからの輸入価格はラオス電力公社が輸出する価格より1割ほど割高で、輸出で稼いだ外貨が目減りする構図になっている。


エネルギー鉱業省によると、こうして積み重なったタイ電力公社への「ツケ」は20億KW時(約100億円相当)に上る。同省エネルギー政策計画局長のチャンサベン・ブンノン(48)は「お金ではなく電力で返せばよいし、利息もかからない。国内の発電量が増えているから今後数年で返済できる」と強気だが、ツケを返そうにも、国際連系線の容量不足で輸出もままならないのが実情だ。


国内で電力が足りなくても、どんどん輸出されてしまう現状をどうすればいいのか。


ナムトゥン2の中央制御室

ラオス政府は、国内外を結ぶ電力網の整備を急ぐ考えだ。地域をつなぐ基幹送電網が整えば国内で効率的に電力を届けることができ、連系線の容量が増えれば輸出もしやすくなる。長期的には、電力を国内の送電網にいったんつないでから、余った分を輸出する仕組みづくりが課題だ。IPPが持つ開発権は25年から30年間。ブンノンは「開発期間が終われば、発電所やダムは政府保有になるので、大きなメリットがある」と話す。(村山祐介)



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