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イビサはこうして「パーティー・アイランド」に 観光トップが明かす、行政の関わり方

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イビサ島のカルメン・フェレール・トレス観光局長=神庭亮介撮影

――年間どれぐらいの人がイビサを訪れるのですか。

昨年は5~10月のシーズン中に約270万人の観光客が来ました。60年代の観光客はわずか4万人ほど。島のリゾート開発が進んだ70年代初頭には35万人まで増えましたが、この時点では金銭的に余裕のある人たちが1カ月程度のバカンスに来るのが主流でした。80年代、地元DJによる「バレアリック・サウンド」が流行すると、ヨーロッパを中心にダンス目当ての観光客が急増。ここ10年ほどは200万人以上で推移しています。

――行政としてもダンス産業を支援したのでしょうか。

いえ、行政はダンス産業の宣伝やビジネス戦略にはかかわっていません。彼らは行政の力を必要とせず、独自に発展してきました。ただ、店を運営するうえでの基本的なルールや営業許可の発行といった法律面では行政も関与しています。

――具体的には。

クラブは年々ビジネスを拡大し、次第に営業時間が長くなっていきました。以前は朝6時には営業が終わっていたのに、朝以降も店を開ける「アフター・アワーズ」営業が常態化し、多くの問題が発生しました。

眠らずに一日中クラブで過ごすスタイルが定着したことで、長時間にわたるドラッグ摂取で亡くなる人や飲酒運転による交通事故が増えました。静寂を求めて休暇に来ている家族連れの観光客などにも、悪影響が出始めました。

そこで、2007年にアフター・アワーズ禁止令が制定されました。条例によって、朝から午後4時までは営業許可を与えないことにしたのです。

――クラブ側は反対したのでは。

クラブ経営者からは売り上げの減少を危惧する声があがりましたが、短期集中営業にシフトすることで、売り上げ減は免れました。条例により、クラブ目的の観光客もビーチで余暇を過ごすようになり、ドラッグによる問題も減りました。平和に過ごせる島として、クラバー以外のファミリー層にも安心して来てもらえるようになりました。

イビサにとってダンス産業は重要です。それなしでは観光収入は半減してしまうでしょう。ですが、ダンス以外にもビーチや夕日、世界遺産、豊かな食文化など様々な魅力があります。条例改正以降、島は非常によいバランスを保っていると思います。(文中敬称略)