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ロシアの流儀

[Part1]いまも「大国」なのか(ロシアの流儀)


面積こそ世界一だが、人口は約1億4000万で日本をわずかに上回る程度。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下で、世界で12位。G7各国はもちろん、韓国をも下回る。そんな国がなぜ大統領選への介入疑惑で米国をゆさぶり、中東や朝鮮半島情勢で発言権を確保できるのだろうか。力の源泉をたどっていくと、石油と天然ガスが見えてきた。



ヤマル半島の氷に閉ざされた港に接岸したLNGタンカーは、高い砕氷能力を持つ=ロシア・ヤマル半島 photo:Komaki Akiyoshi


巨大エネルギーが生む「強さ」と「弱さ」


ロシアから北極海に突き出す半島、ヤマル。現地の先住民が話すネネツ語で「地の果て」を意味するという。3月下旬、東岸のサベッタを訪れると、零下30℃の中を、純白のホッキョクギツネが走り回っていた。


この極寒の地で、昨年12月から液化天然ガス(LNG)の生産が始まった。ロシアで、サハリンに次ぎ2カ所目のLNGプラントとなる「ヤマルLNG」だ。世界で初めて本格的な砕氷能力を持つLNGタンカーを使う。訪れた日は、日本の商船三井が保有する「ウラジーミル・ルサノフ」が接岸していた。氷が薄くなる夏季には北極海を東に進み、アジア方面に運ぶ計画もある。地球温暖化で注目される「北極海航路」だ。


「ヤマルLNG」には、ロシア・ノバテク社のほか、仏のトタルと中国国営企業2社が出資している。クリミア併合に起因する米国の対ロ制裁の対象となったが、中国の協力で軌道に乗った。


皮肉なことに昨年12月に出航した第1号タンカーがLNGを運んだ先は、米国のボストンだった。「100年ぶり」という大寒波に見舞われ、制裁対象のロシア産LNGの緊急輸入を余儀なくされたのだ。エネルギーが持つ有無を言わせぬ力の大きさを見せつけるてんまつだった。


広大な国土に眠る石油と天然ガスは、ロシアの国力そのものだ。輸出量で天然ガスは世界1位、石油はサウジアラビアに次ぐ世界2位。国家財政のほぼ半分を、石油と天然ガスが支えている。


この10年ほど、ロシアが戦略的に進めてきたのがアジア・太平洋方面への輸出の拡大だ。日本も石油・天然ガスともに1割近くを依存。欧米からの制裁が、「東方シフト」をさらに後押ししている。


北極方面からロシアの地図を眺めると、旧ソ連時代に建設された欧州方面へのパイプラインに加えて、中国や太平洋に向けて、両腕を広げるようにパイプラインの建設が進んでいることがわかる。欧州の命綱を握っているという自信が、国際的に孤立しても強気の姿勢を崩さない理由のひとつだ。さらに、どこにでも運べるLNGの生産能力を高めていくことがロシアの戦略だ。


だが、石油・天然ガスは、ロシアのアキレス腱でもある。1991年のソ連崩壊は、85年から86年にかけて起きた原油価格の急落が引き金を引いたと指摘されている。エリツィン政権時代も安値が続き、98年には債務不履行(デフォルト)に追い込まれた。それが、2000年のプーチン政権の誕生と機を同じくして価格は上昇に転じ、ロシアは瞬く間に債務国から債権国に。だが、その後もリーマン・ショックなどによる原油価格下落のたびに、ロシア経済は大きく揺らぐ。米国発のシェールガス革命は、天然ガスでのロシアの独占的な立場を脅かす。頼みの「東方シフト」の先行きも不透明だ。輸出先として期待する中国は中央アジア諸国からも輸入しており、ロシアの資源を安く買おうと揺さぶりをかける。石油とガスは、ロシアにとって諸刃の剣になっている。


(駒木明義)


「彼らに自由はあるのか」に続く) ※5月9日公開予定です。

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