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北朝鮮サバイバル

[Part3]「閉鎖国家に迫るには」 礒崎敦仁・慶応大准教授が見る北朝鮮

朝鮮労働党委員長の金正恩が弾道ミサイル発射実験を現地指導したことを報じる労働新聞。それを読む2人の男性。photo:AFP=時事/Kim Won-jin



閉鎖国家の内情を知るのは難しい。様々な手法について解説してもらった。


礒崎敦仁(43)慶応大大准教授

慶応大学の礒崎敦仁准教授 photo : Kamiya Takeshi

北朝鮮政治が専門の私は、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」の論調分析を重んじている。北朝鮮の職場ではこの新聞を読み込む会合が毎朝開かれる。指導者と党は、新聞を通して国民に求めることを伝えているので、体制の「マニフェスト」に近い。ただ、プロパガンダなので線引きも必要だ。


例えば、昨年9月下旬から金正恩は軍への視察をやめ、化粧品工場など経済の現場に多く足を運んだ。そして新年の辞で、韓国平昌での冬季五輪に出ると述べ、後の南北、米朝首脳会談の開催発表につながった。


対話の水準は予想を超えたものとなったが、上記の経済重視の視察などから、流れとして対話攻勢に出てくることは昨秋の時点で明確だった。すべてを予測する万能の方法だとは言えないが、方向性はつかめる。


金正日時代の核実験の報道は小さく、よく見ないと分からないほどだが、金正恩時代は1面に大きく載るようになった。核保有に自信を深めたことや、指導者の「実績」アピールの要素が強まったという点を見て取ることができる。


人々の暮らしや経済の姿は、労働新聞をはじめとした北朝鮮の公式メディアからは読み取りづらい。経済をみるには定期的に現地に足を運ぶことも有効だ。ただ、入るために体制の宣伝に引っ張られないよう心を配る必要も出てくる。


中に入れないなら、出てきた人から情報を集める方法がある。脱北者だ。韓国に亡命した脱北者は3万人に達し、社会・生活情報は容易に入手できるようになった。


北朝鮮分析の新たなツールとなっているのが商業衛星の写真だ。米ジョンズ・ホプキンス大学の「38ノース」は、退役軍人らによる衛星写真の精査でミサイル発射や核実験の兆候をつかんでいる。市場の広がりも衛星写真で分かる。


各国の政府では、外交官らが情報を集めて本国で集約している。軍や情報機関は精密に撮影できる衛星を使ったり、電波を傍受したりしている。新聞などのジャーナリズムは状況をリアルタイムで追い、現場で確認できるのが強みだ。しかし北朝鮮の場合は記者を選別して入国させる。入れても取材は当局が許可した対象に限られてしまう。


(聞き手・神谷毅)


(文中敬称略)



(「『矛盾と限界を抱えたまま』 神谷毅」に続く)



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