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北朝鮮サバイバル

[Part2]「北朝鮮は合理的だ」「北朝鮮は孤立していない」

マシュー・デュカテル欧州外交評議会副部長 photo : Kamiya Takeshi


北朝鮮は合理的だ

マシュー・デュカテル(37)欧州外交評議会副部長


多くのメディアは北朝鮮を「狂っている」「自殺的だ」と描くが、欧州の政策立案者の間では、北朝鮮は「合理的で戦略的」に振る舞っているというのが決まり文句だ。生存のために計算してリスクを取っていることを見逃している。


北朝鮮が実行に移していないことが二つある。グアムに向けたミサイル発射と大気圏内での核実験だ。今後もやらないとは言えないが、自分たちの行動が米国による迅速な報復を招くことをよく分かっている。コスト(損失)とベネフィット(利益)を冷徹に見極めている。


「彼らの合理性」から、どのように核兵器を捉え、使おうとしているのか理解しなければいけない。北朝鮮は化学兵器や生物兵器を持っており、今も攻撃に使おうと思えばできる。それでも核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を必要とするのは、米国に対する抑止のためで「自衛的」ということだ。


米国は北朝鮮を先制攻撃しても、全ての核弾頭とICBMを破壊できる確証を持てていない。北朝鮮には核で攻撃を仕掛けても途中で迎撃されない確証がない。双方の不確実性が、ある種の均衡を生んでいるのが現状といえる。


欧州は朝鮮半島への安保に関心を向けないが、世界の安保や法にもとづく秩序、核拡散を考えると、北朝鮮の行動は欧州の長期的な安全も脅かしている。

レストランの外で待っている女性定員たち。平壌。photo:AP/Wong Maye-E
オックスフォード大学のサミュエル・ラマニ photo : Kamiya Takeshi


北朝鮮は孤立していない

サミュエル・ラマニ(24)オックスフォード大学


北朝鮮は完全には孤立していない。1960年代からアフリカと中東の国々と強固な外交、経済、軍事の関係を維持してきた。コンゴとジンバブエは、治安を維持するため北朝鮮の軍と特殊部隊から訓練を受けている。ナイジェリアやエチオピア、ソマリアなど多くの国はミサイルなどの武器を取引している。こうした国々では、国連の制裁破りも日常的だ。


アフリカと北朝鮮の関係にも中国の影がある。アフリカの国々は中国と深く結びついており、制裁を破っても中国から報復がないと考えれば、北朝鮮との関係を強める要因になるだろう。ただ最近は中国も制裁に厳しくなっており、それに合わせるようにウガンダやスーダンのような親中国の国々も政策を変え始めた。


北朝鮮はエジプトとの関係も深い。73年の第4次中東戦争では北朝鮮のパイロットがエジプト空軍の兵士を訓練した。軍事の対価としてエジプトは北朝鮮の経済発展に投資し、エジプト企業が北朝鮮の携帯電話事業を行っている。


中東ではカタールとUAEなどが北朝鮮の労働者を受け入れてきたが、多くがこれをやめた。北朝鮮はイランとも核技術支援で関係を持つ。北朝鮮が中東の国々からの大事な現金収入を失っていけば、イランや、イランに近いシリアと関係を深めるかが注目される。


(聞き手・神谷毅)


(「『閉鎖国家に迫るには』 礒崎敦仁・慶応大准教授が見る北朝鮮」に続く)



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