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北朝鮮サバイバル

[Part2]暮らしが変わったわけ 北朝鮮の経済に何が?

駐車場に向かって歩く少年と、バスに乗り込む女性たち。平壌。photo:AP/Wong Maye-E

北朝鮮の経済に何が起こっているのだろうか?


1990年代後半の飢餓のころ、配給を待つ人たちは飢え死にした。人々は「食べ物は自分でなんとかするしかない」と学んだ。市場(いちば)が広がり、当局は初めこそ社会主義をゆるがすと取り締まったが、配給が滞る今、暮らしに欠かせなくなった。体制は市場と共存の道を選び、全国に400カ所余りある。


当初、市場に入ってくるモノは中国製が多かった。中国との貿易が活発になり、もうける人々が現れ、市場でモノを買う力がさらに増えた。今は食品や日用品を中心に国産が増えている。


小さな商売に加えて大きなビジネスも動いた。今は経済制裁で行えないが、2010年ごろから中国への石炭輸出が増え始めた。当時は世界的に鉱物価格が高騰しており、北朝鮮に外貨がどっと入り込んだ。採掘に使う機械や自動車、労働者が使う道具に食事……。仕事が仕事を生み、お金が回った。


韓国の北韓大学院大学教授、ヤン・ムンス(55)は「市場(いちば)にとどまらない。中国との活発なビジネスは起業家的。価格が変動する仕組みも広がった。市場(しじょう)化が進んだ」と語る。北朝鮮は統計を発表しないので推し量るしかないが、韓国の中央銀行、韓国銀行によれば、ここ数年は成長し、2016年の経済成長率は3.9%だった。

夕闇に包まれた平壌の中心部。photo:AP/David Guttenfeld

北朝鮮における市場やビジネスを理解しようとするとき、人々と体制の「共存」がキーワードかもしれない。


例えば、北朝鮮版コンビニの経営主体は国営企業だ。客は米国のドルや中国の人民元でも買い物ができる。このため、「お金持ちが持つ外貨を体制側に吸い上げる目的がある」とみる専門家もいる。


02面のコーヒーショップは、店を開くこと自体に国の許可がいる。この店がそうだというわけではないが、小さくはこうしたお店から大きくは石炭を手がける企業まで、経営者と体制の役人が結びつき、合法・非合法を問わず利益を分け合う構図ができている。


北朝鮮には、配給や計画経済といった社会主義の「第1」経済、軍需の「第2」経済、金一族のお金を管理する「第3」経済があるといわれる。50回以上、北朝鮮を訪れている環日本海経済研究所の三村光弘(48)は、この三つ以外に市場を含む私経済があり、「体制側の経済は私経済の上に乗って回る」と語る。そして土台の私経済を、凍って硬くなった「永久凍土」に例える。


「今は凍って安定しているが、体制側が市場の拡大を黙認できないと取り締まりを強めれば、解けて泥のようにズブズブになる。すると下が不安定になり、上の体制まで揺れてしまう。統制の必要は感じているが、なくすことはできない。矛盾した状況なのです」


(神谷毅)


(文中敬称略)


(「北朝鮮シングルマザー『飛行機に乗って外国に行ってみたい』 電話インタビュー」に続く)



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