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豊かさのニューノーマル

[Part1]「アメリカに住む?考えたこともない」 ガエル・ガルシア・ベルナルに聞きました(上)

インタビューに答えるガエル・ガルシア・ベルナル=仙波理撮影

アメリカと言えば「移民受け入れ大国」、メキシコと言えば「いい暮らしのためアメリカをめざす移民の国」。……というのが、アメリカとメキシコの一般的なイメージかもしれません。でも、メキシコの人気俳優で監督のガエル・ガルシア・ベルナル(38)にインタビューすると、違った景色が見えてきます。米誌タイムの「最も影響力ある100人」にも選ばれたガエルは、最近はアマゾン プライム・ビデオ配信のオリジナルドラマシリーズ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』に主演。そんな彼ならではの「豊かさのニューノーマル」、2回に分けてお届けします。(聞き手・構成 GLOBE記者・藤えりか)




――俳優・監督として米国で撮影や取材、授賞式出席の機会も多く、また影響力のある発信者としても米国で注目されています。なのに住まいはあくまでメキシコ市と、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。「出稼ぎ労働者(migrant worker)」とも自称されていますが、人気のある成功した映画人としては珍しいですね。

「私は敢えて、米国に住んでいない。米国に住むなんて考えたこともない。(米国的なものの)反対側でたたかうことを選んでいる」

ガエル・ガルシア・ベルナル=仙波理撮影

――なぜでしょう?

「だって、他に住みたいと思う国はいっぱいあるもの。撮影があれば、その都度米国に行けばいいわけでしょう?」


「今は米国のアマゾン・プライムなどを通じて、ドラマも映画もどこからでも見られる。主演する『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』(※)も、昨年からメキシコでも配信されるようになった。それまでは、こうした米国のシリーズをどうやったら見られるかメキシコの友人に説明できなかったけれど、今や可能になった。すばらしいチャンスだよね」


※『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』はアマゾン・スタジオ製作、アマゾン プライム・ビデオ配信で2014年に始まったオリジナルドラマシリーズ。ガエル演じるラテン系の天才指揮者を中心にオーケストラの舞台裏を風刺的に描き、今はシーズン4の製作が進む。ガエルは今作で2016年、ゴールデングローブ賞のテレビシリーズミュージカル・コメディー部門で主演男優賞を受賞した。アマゾン プライム会員向けの定額制動画配信サービスは、日本では2015年に、メキシコでは昨年始まった。


「私がどこに住んでいるか尋ねる人はよく、『まだメキシコにいるの?』と言ってくる。まるで、有名になればメキシコを出るものだ、という風に。どうかしている、と言われるし、映画の仕事をするうえでは変わり者だ。多くの人は、仕事を求めて米国へ渡るからね。私はそれにある意味、異議申し立てをしている。業界の需要に合わせたりせずにいる自分を誇りに思う。そうしたものからから自由でいられてハッピーだ」

『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』より

「映画の仕事を始めた当初は、メキシコで作った作品が世界各地で見られる、という状況にはなかった。このため(世界の大多数の)観客がどう反応するか、考えることなくやってこられた。また、だからこそ自分はある意味、セレブと言われるものから距離を置くことができた。実際、例えば彼らのような発信もしていない。何か大きな問題についてセレブが理念を表明したりしても、うさんくさいよね。とても信用できない感じになる」


――米国では最近、ハリウッドの既存の大手スタジオよりも製作上の自由があるとして、著名な監督も俳優も、アマゾンのような動画配信サービスのオリジナル作品にこぞって製作あるいは出演しています。それに伴い、ハリウッドのスタジオに携わる人たちからは「自由がない」といった不満がよく聞こえてくるようになりました。

「そう、彼らは『自由がない』とよく言う。編集上の決定権がスタジオにしかなく監督にはない、といったことも、米国の人たちは言う。でもたとえばメキシコでは映画に補助金も出るからやりたいようにやれて、大いに自由がある。編集上の決定権も、監督の側にある。すばらしいことだよね。米国の大手スタジオ作品はまったくの民間資金に頼っているから、映画が商品でしかなくなってしまうんだ。私自身は、(ハリウッド大手の)スタジオの映画もテレビシリーズにも、出たことがないよ」

後編に続く


ガエル・ガルシア・ベルナル=仙波理撮影


ガエル・ガルシア・ベルナル

メキシコの俳優、監督。1978年、メキシコ第2の都市グアダラハラ生まれ。少年時代からテレビドラマに出演、名門メキシコ国立自治大学で哲学を学んだ後、英国の著名な演劇学校セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマにメキシコ人として初めて合格。カンヌ国際映画祭の批評家週間でグランプリの『アモーレス・ペロス』(2000年)出演で日本でも広く知られるようになり、『天国の口、終りの楽園。』(2001年)でヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)。『モーター・サイクル・ダイアリーズ』(2004年)でチェ・ゲバラの若き日を演じ、菊地凛子がアカデミー助演女優賞にノミネートされた『バベル』(2006年)にも出演、『ノー・エスケープ 自由への国境』(2015年)では米国境で逃げ惑う不法移民を演じた。2014年からアマゾン プライム・ビデオ配信のドラマシリーズ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』に主演している。ヒスパニックや移民をめぐる人権問題について発言を続け、2016年、米タイム誌「最も影響力ある100人」に選出。2017年9月、米ヒスパニック・ヘリテージ賞受賞。2017年11月11日、出演したチリ・アルゼンチン・仏・スペイン映画『ネルーダ』(2016年)が日本で公開。



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