RSS

壁がつくる世界

[Part3]2016年 「壁つくれ」の大合唱


四半世紀にわたって静かに進められてきた壁の建設は、トランプが大統領選で掲げたことで米世論を分断するテーマになった。

 

政権は8月、壁の試作品をつくる業者4社を選んだが、トランプが最大120億ドル(約1兆3000億円)と主張する建設費を確保するめどは立っておらず、その2?3倍かかるとの試算もある。いくつかの世論調査では反対がおおむね6割を超え、賛成は4割弱にとどまる。

 

それでもトランプは強気を崩さない。その成算はどこにあるのか。ラストベルト(さびついた工業地帯)といわれ、トランプが大統領選で接戦を制した北東部ペンシルベニア州に向かった。

 

かつて炭鉱と縫製業で潤ったルザーン郡は、12年の大統領選で民主党のオバマが制したが、昨年は一転、共和党のトランプが圧勝した地域だ。大統領選の投票日前日、「最後のお願い」で近くの町を訪れたトランプは「偉大な壁をつくる!」と訴え、支持者たちは「壁をつくれ!」と熱狂的な声援で応えていた。

 

その熱気とは対照的に、商店街は空き家が目立ち、通りには白人の高齢者ばかりだった。「テロリストが忍び込まないためには壁が必要だ」(重機運転手、62)、「壁で秩序を取り戻す」(航空技術者、56)。50人に声をかけると、5人が壁への支持をはっきりと口にした。「自分たちは忘れられている」という疎外感を口にする人も目立った。

 

カリフォルニア大学教授のフィッツジェラルドの言葉を思い出した。「少数だが声が大きく、必ず投票に出向く。トランプは接戦州でそんなコアな支持者を動員して勝利をつかんだ。彼らを熱狂させ続ける。それがトランプの狙いだ」

 

だが、なぜ壁なのか。

 

「目に見えて、テレビに映える。政府があなたのために何かをしている、と伝えるシンボルだからだろう」


(文中敬称略)


(「21世紀、壁が世界で急増している」に続く)




この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示