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私の海外サバイバル

[第127回]インドで魚屋を始めた弁護士@グルガオン

西野良和

ニシノ・ソリューションズLLP代表

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グルガオン市内の中心部では高層ビルやショップが並ぶ(西野さん提供)

インド・ニューデリー近郊のグルガオンにある法律事務所で働いていましたが、退職し、2016年11月から魚屋を開業しました。インドには生魚を食べる習慣がなく、魚屋にはハエがたかっていることもあり、刺身を食べることができません。


もともと弁護士としての仕事の幅を広げたいとの思いでインドに来たのですが、インドの弁護士資格を持っていないため、インド人弁護士と日本のクライアントの橋渡し的な仕事しかできません。弁護士業の妙味は問題解決の立案ができること。それなら起業し、自分ですべてをやるビジネスに挑戦してみようと発想を変えました。


著しい経済成長を遂げているインドには、日本人だけでなく韓国や台湾、欧米の人々が多く住んでいます。新鮮な魚は売れる、と思いました。


新鮮な魚を常時入手できるように流通ルートをいかに確保するか。まずは信頼できるインド人のビジネスパートナーを探すことから始めました。


インド南部のポンディシェリで魚をとる地元漁師のムトゥさん(左)とアンドリューさん(西野さん提供)

インド南部・旧フランス領のポンディシェリの海ではアジやシイラ、マダイ、クエなどが取れます。五つの船で計15人のインド人の漁師をトレーニングし、彼らの監督チームもつくり、炎天下に放置されることがないよう空輸以外の輸送ルートはすべて自前でやるようにしました。鮮度を保つため、血抜きや内臓取り除きだけでなく、日本人のすし職人から神経締めも指導してもらいました。


最初は魚が1匹しか取れず、大赤字からのスタートでした。安心・安全を第一にしているため、インド人が売る魚の4倍ほどの値段になってしまいます。煮魚や焼き魚用の魚であれば、お客様にインド人の魚屋で買うように勧めることもあります。


4キロ取れても刺身として使えるのは1キロしかないこともあります。廃棄ロスをできるだけ減らすためにコロッケやハンバーグなど魚の加工品やお弁当販売も始めました。


インドでビジネスをする際に重要なのは、「こだわらない」こと。日本人はこだわって、この技術をインドに伝えたい、と挑戦したがる傾向がありますが、インド人は日本車以外は「日本ブランド」にあまり関心がないようです。インドの市場に合わせて商品・サービスを変える柔軟性が必要です。


一方で、ビジネスの実績がなくても、取引相手として話を聞いてくれ、ビジネスを始めるハードルが低いとも思います。面白ければ、すぐに一緒にやりましょう、となる。魚屋を軌道に乗せ、いずれはすし店などのレストランやIT企業の経営も手がけられればと考えています。



Yoshikazu Nishino

にしの・よしかず/1980年、千葉県生まれ。2011年に弁護士登録。日本の法律事務所で勤務後、14年からインドに移住。16年に「ニシノ・ソリューションズLLP」を設立し、魚の刺身や加工品の販売を始める。




(次ページへ続く)

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