1. HOME
  2. People
  3. 美の町から流行を発信@ミラノ(イタリア)

美の町から流行を発信@ミラノ(イタリア)

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
ミラノの自宅近くの運河(坂本さん提供)

坂本貴代枝 

コーディネーター兼ジャーナリスト

ON

イタリア・ミラノでイタリアの衣食住のすべてを扱うコンサルタント会社「STUDIO SAKAMOTO」の代表を務めています。従業員はイタリア人と日本人のスタッフ2人と夫でカメラマンのフランクの計4人。

「ペン」や「フィガロジャポン」、「ヴォーグジャパン」などの雑誌でミラノのレストランやファッションの特集を企画したり、記事を書いたりするほか、日本の芸能人のCM撮影などのコーディネートをしたりしています。

2015年10月号のフィガロジャポンでは「イタリア夢旅案内」をテーマに、ミラノから列車で約4時間のリゾート地・ピエトラサンタを紹介しました。ここは天才芸術家・ミケランジェロが手がけたダビデ像の材料としても使われた天然大理石の産地として知られ、ミラネーゼにとっては人気のプチバカンス先。中心部の広場にある巨大な彫刻をはじめ、地元ワインショップの売れ筋ワイン、イタリア人アーティストがプロデュースする人気のレストラン&バーなどを紹介しました。料理や街角の風景写真もふんだんに使い、眺めているだけで読者も現場にいるような楽しい気分になるように心がけました。

私が対象としている読者やお客様は、キャリアウーマンや海外志向の強い人、芸能人など「とんがっている」人たち。フリーランスで会社の看板を持っていないため、自分の知識とセンス、人脈だけが頼りです。それに旅を特集するには、まず自分が旅の達人でなければいけません。ですから、時間があれば旅に出るようにしています。自分の中で一番いいもの、自分が食べておいしいものを紹介します。

一番早く流行を生むのは音楽だとも考えているので、音楽もジャンルを問わず何でも聴くようにしています。ファッションショーも必ず見に行き、デザイナーやPR会社の人たちとの交流も大事にしています。いつも流行の先に自分を置いておかないと、それらを提供できませんから。

ピエモンテ州の風景(坂本さん提供)

旅も食事も下調べの費用はすべて自腹。雑誌社は予算が厳しいので、企画を採用してもらうために、スポンサーも自分で見つけるようにしています。

イタリア、ヨーロッパ人を相手に仕事をする時は認識のギャップで苦労をすることも多いです。日本人は「消費者は神様」の思考が根強く、お金を払っているから良いサービスを受けるのは当然、と考えがち。日本の雑誌社が撮影にくる、というと日本人は「宣伝になる」と思いますが、イタリア人は「出てやるんだぞ」という構えの人が多い。日本人とイタリア人の間に入っていると、言い方を工夫しないとトラブルになることも少なくないんです。

一方で、相手が有名な芸能人であろうと、イタリアのマナーやしきたりに合っていなければ、はっきりと注意します。嫌がられようとも、イタリアでの自分の信用に関わりますから。

イタリアのファッションやインテリアの魅力は、やはり重厚感にあると思います。ウール素材一つとっても、布に厚みがあり、仕立てが凝っていて、身につけるだけで優雅な気分にさせてくれます。照明器具も造形的に面白く、しかも機能的。日本の伝統工芸はわびさびの世界に象徴されるように知識が求められますが、イタリアはもっとわかりやすい美しさがあります。そこにひかれています。

昨年末には、アート関連の会社「PHANTOM」を設立しました。ヨーロッパのインテリアデザイナーやカメラマンをアジアに紹介するためです。イタリアと日本の文化交流に貢献できればと思っています。

いつでも何にでも、情熱を持ち、美を追求してそれを形にしていく。それが、私の仕事の目標です。

OFF

プラダ美術館の中にある大好きなカフェ(坂本さん提供)

土日はほとんど仕事でつぶれることが多いですが、休みの日は世界中にいる友人に連絡をとります。ピエモンテに住むイタリア人弁護士の友人からトリュフが採れる時期だと聞くと、食材探しがてら会いに行き、ついでに地元のレストランや話題も取材します。

夫婦そろって料理が好き。仕事柄外食が多いので、休日は2人で市場に行き、旬の食材を仕入れ、料理を作り、友人を自宅に招きます。私はアジアン、イタリアンをよく作りますが、フランクはホロホロ鳥の煮込みなどオーブン料理が得意です。

自宅はイタリアの陶磁器ブランド「リチャードジノリ」の工場跡地を買い取り、改装しました。ひのきのお風呂と畳を入れ、和風にこだわりました。

(構成 GLOBE記者 倉重奈苗)

ミラノ

人口約135万で、イタリアの首都ローマに次ぐ大都市。ミラノ・コレクションで知られるように服飾・繊維産業が伝統的に盛んで、ヨーロッパのファッション関連産業の中心地の一つ。美食の街としても名高く、2015年には「食」をテーマに「ミラノ国際博覧会」が催された。

Kiyoe Sakamoto

1962年、神戸市生まれ。関西女子美術短期大(学校法人・関西女子学園)を卒業後、大阪市内の照明器具メーカーに就職。働くかたわら、インテリアコーディネーターを養成する夜間学校に通いインテリアを学んだ。イタリアの建築家・デザイナーのエットレ・ソットサスに憧れ、24歳でミラノへ。以来30年間、ミラノを拠点にイタリアの魅力を提供している。