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ゼロから一人で画廊経営 タイの絵画批評も @バンコク(タイ)

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
バンコクの「アコ画廊」には毎日、多くの人が訪れる。右から2人目が鈴木さん photo: Atsuko Suzuki

私のON

バンコクに来たきっかけは、当時付き合っていた英国人のボーイフレンドが、この地で定職を得たからです。その後、2人ともタイの永住権を取得し、現地で結婚。夫は友人とドイツ料理のレストランを経営して成功し、私は仕事をやめて専業主婦をしつつ油絵を習うなど、優雅な生活を送った時期もあります。

ところが、夫がアルコール中毒に。断酒会に入ってようやくお酒をやめられたと思ったら、今度は重度のうつ病になりました。医師の勧めで夫は英国に一時帰国。レストランも閉め、私は48歳で2人の娘を抱えて、ゼロから生活を立て直さざるを得なくなりました。

商売をしようと考えた時、好きな絵のことが頭に浮かびました。

私の名前「アツコ」はタイの人には発音しづらいので、「アコ画廊」と名付けました。1990年にオープンした当時は運転資金がなくて、友人のアーティストから借りた10点ほどの絵しか集められず、土産物も一緒に並べていました。

それから26年間、何度か危機に見舞われつつも画廊を続け、100回以上の展覧会を開いてきました。苦しい時に大口の仕事が舞い込んだり、1年ほどで戻ってきた夫のアドバイスで行ったイベントが成功したりと、幸運にも恵まれてきました。

今では、タイの新人画家の作品を批評するのも仕事の一つです。タイの人は他人の作品をめったに批判しません。若いアーティストは、私の歯に衣着せぬ言葉を求めてやってくるようです。

私のOFF

日曜日には教会に行きます。つらいことがあった時には、心の中で神さまに文句ばっかり言っていますけど。教会の後は、「ゆっくりしたいな」と思いつつも、他の画廊の展覧会に足を運ぶことが多いです。

(構成・GLOBE編集部 太田啓之)

すずき・あつこ

1943年、満州に生まれる。64年東京写真短大(現・東京工芸大)を卒業し報道カメラマンに。68年バンコクに移住し、90年末に同市スクンビット通り沿いにアコ画廊を開いた。