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伝統と冒険 平尾成志が育む「BONSAI」というアート


東京・新宿の百貨店前に9月の週末、観客の視線を一身に浴びる平尾成志(36)がいた。DJの繰り出す音楽の中、鉢から抜いた木の根を「爪」と呼ばれる道具でほぐす。こぼれ落ちる土から立ち上る、生暖かい匂い。台に置いたオブジェのような「器」に、次々と草木を配していく。


ハゼ、ヤブコウジ、コガネシダ。クラブ調の音楽が最高潮に達するころ、平尾がゴヨウマツを手に、ひらりと台に飛び乗った。ぐらつく先端をとっさに木片で支え、フィニッシュ。ビルの谷間、突如立ち現れた「秋の山」。観客の緊張が、ほうっと緩んだ。


これが、平尾の「盆栽パフォーマンス」だ。バーやクラブなど人が集まる場所で、DJやバンドと競演し作りあげる。その間30~40分。作品は観客のインスタグラムやツイッターを通じ、拡散されていく。「中高年の趣味」「古くさい」。そんなイメージを打ち壊す熱量で、国内外に盆栽の魅力を発信する。技術指導も含めて訪れた国はスペイン、ブータンなど約20カ国に及ぶ。


「ショーとして見せるものではない」「音楽を流すなんて」。業界からの、そんな異論が耳に入ることもある。平尾は「こんなのは盆栽じゃない、と言う方もいますね」とさらり。「でも、ここから枯らさずに1本1本成長させていくんです。だから、盆栽と言えると思います」。口調に揺るぎはない。だが、職人らしからぬ華やかさの漂う盆栽師は言う。「僕、一番最初に大きくこけるんですよ」


(次ページへ続く)

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