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[第201回]熱い社会に温かいことば@ソウル

戸田郁子 作家、翻訳家



イ・キジュのエッセー『ことばの温度』は、昨夏の刊行当初はあまり注目を集めなかったが、秋以降じわじわと順位を上げ、2月末から1位の座を守り続けている。

ソウル経済新聞の記者を経て、作家デビューした。版元は、著者自身が立ち上げた「1人出版社(社員4人以下の小規模出版社のこと)」だ。

イは「季節の変わり目には、母の鏡台にそっと、日傘や保湿クリームを置く」という、心優しい息子でもある。

活字中毒を自認する。バスや電車、コーヒーショップで、人々のおしゃべりにじっと耳を傾ける。ことばをすくいとり、日常を軽妙に切り取り、自分のことばで消化してゆく。

こんな作家がそばにいたら、だれもがうかつな物言いはできないだろう。「ことばや文章には、それぞれ温度がある」と、著者は言う。

昨秋以降、韓国ではトゲや毒のあることばが蔓延した。嘘ばかり並べ立てる政治家。テレビの画面に向かって、怒声をあげる人々。国民を怒らせた人々に、ぜひ読んでもらいたい部分があった。

「他人をだませば罰を受けるが、自分自身をだませば、もっと暗くて重い罰が待っている。後悔という厳罰が」

ふと、これまで自分の発したことばの温度は、何度くらいだったろうかと考える。燃え盛るほどのことばで、相手にやけどを負わせたことはなかったか。氷のように冷たいことばを、吐いたことはなかったか。

ことばは人を勇気づけることも、人を殺すこともある。何気ない一言が、相手の心に深く残ることもある。だから慎重にことばを選んで、善いことばだけを使いたい。


(次ページへ続く)

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