広げよう「里親」の輪

里親制度の基本情報や疑問をQ&A形式でご紹介

教えて!先輩里親さん

里親登録をするにあたって、ご家族は応援してくれましたか? もし、積極的に賛成してくれないご家族がいたような場合には、良い方法があれば教えてください。

里親をするにあたって、家族の理解は必須です。1人でも納得のいかない家族がいたら、まだその時期ではないのかもしれませんね。慣れない家へいきなり入ってくるこどもにとって、歓迎されない状況は決していいことではありません。

私の知り合いでもそういうケースはありました。そんなときは無理をせず、こどもに関わる活動をし、そこでのエピソードを家族に話します。回数を重ねるうちに、自分も変わり家族も変わり、きっと受け入れてもらえるようになります。

委託されるこどもの年齢や性別など、条件は希望できるのでしょうか? また、希望できる場合、希望された条件などはありましたか?

希望を出すことはできますが、特に条件は出していません。

支給される里親手当や生活費や教育費で十分にやりくりできましたか? うまく家計をやりくりする方法があれば、教えてください。

支給される生活費等は助かりますが、いま我が家にいる男子は食べ盛りで私達の倍の量は食べます。特に豚肉が大好き! そういった場合にはやりくりが必要ですね。

委託されたこどものことで困ったことがあれば、どのような人に相談していましたか? 行政はどんな対応をしてくれましたか? また、どんなサービスを活用していましたか。

児童相談所の担当者、こどもを支援する団体の仲間、支援学校の先生。こどもを支援する団体の仲間には様々な資格やスキルを持った方がおられるし、支援にも来てくれるし、助かっています。社会的養護と障害の両方に通じたコーディネーターがいないのが悩みです。

一度始めてもずっと続けられるか心配です。短期間や期限を決めた里親でもいいのでしょうか。

知り合いの里親の方で期限を決めるというケースは存じません。ただ、短期間の里親として一時里親(季節・週末里親)等に登録する方法もあります。

里親登録したとしても、こどもが委託されるまでには時間がかかるという話も聞きます。それまでの間、どのように委託に向けた準備をしていましたか。

そういう方には何組も出会いました。そういう方にはこども達を支援する団体の活動に携わることを勧めています。私が活動している団体では年間3~4回の学習会もあり、社会的養護について、児童養育について学ぶ機会となります。また実際に施設に行ってこども達とふれあうこともできるので、児童養育の経験がない方の準備にもなるかと思います。

実子がいてもいいのでしょうか。また、実子がいる場合、実子および委託されたこどもの双方と接する際の工夫などについて、聞かれたことはありますでしょうか。

もちろん実子がいてもいいですし、こども同士の関係は、また独特ですね。私どもは年齢が高い里親なので、どちらかというと祖父母の立場かもしれません。おじいちゃん、おばあちゃんとの関わりを体験するのもいいかもしれないと思います。

里親としてこどもを委託されたら、どんな生活になるのでしょうか。

できなくなったこと:自分の活動、1人の時間、カフェタイム

できたこと:実子の時にはできなかったゆとりの子育て、こどもと一緒にモルック(木の棒を投げて競うゲーム)

委託前と変わらずできた、のではなく、委託後にこどもが来たからできたことですね。

仕事と両立できるか心配です。うまく仕事とやりくりする方法など、アドバイスいただけますでしょうか。

実子の養育でも仕事と両立されている方がほとんどだと思います。里親支援をはじめ官民の様々なサービスを利用すること、また里親が孤立するといけないので、親類・友人・近所の人等巻き込むことも大切ですね。

河本美津子さん

河本美津子さん

こうもと・みつこ/1957年、岡山県生まれ。一般社団法人ぐるーん代表理事。2012年に岡山で初めてぐるーんのサポーターに登録し、前代表の有尾美香子さんが亡くなったことから、2015年に代表を引き継いだ。成人した実子が3人いて、河本さん夫妻と実子夫妻で生活していたときに里親としてこどもを預かり、一時は5人で暮らしたことも。以前に里親として関わったこどもとは現在も交流が続いている。

里親登録をするにあたって、ご家族は応援してくれましたか? もし、積極的に賛成してくれないご家族がいたような場合には、良い方法があれば教えてください。

知識がないことが原因ということもありますので、研修会やイベントにいっしょに参加したり、里親に関する絵本や本を紹介したりするのがいいと思います。私は、妻の家族も反対する人はいませんでしたが、私の親戚の集まりにお預かりしているこどもを連れていくのを嫌がった親戚がいたことがありました。そういうこともあるのだと勉強になりました。

委託されるこどもの年齢や性別など、条件は希望できるのでしょうか? また、希望できる場合、希望された条件などはありましたか?

条件は希望できます。でも、希望どおりになるかというと、そうでもないかもしれませんし、なかなか委託されないということになってしまうことも多いです。児童相談所との話し合い、そして何よりも児童相談所の担当者と話し合いができる関係が大事になります。実子やすでに委託されているこどもとのバランスは大事なので、きちんと家族の状況を伝えることが必要です。

支給される里親手当や生活費や教育費で十分にやりくりできましたか? うまく家計をやりくりする方法があれば、教えてください。

私は、もともとは児童養護施設の地域小規模児童養護施設の職員としての野口ホームからはじまり、私の退職後にファミリーホームになりました。ファミリーホームは、措置費(事業費・事務費)が支給されますので、十分だと思います。里親では、義務教育の間は問題ないのですが、高校生以上となると十分とは言えなくなってしまうと感じることも多いようです。里親手当をどのように捉えるのかによって感じ方は違うように思います。

委託されたこどものことで困ったことがあれば、どのような人に相談していましたか? 行政はどんな対応をしてくれましたか? また、どんなサービスを活用していましたか。

夫婦で話し合うことが多いと思います。そして、児童相談所の担当者にも相談しています。また、私の母や、以前に里親として関わったこどもがファミリーホームの補助員をしてくれています。その子は私達を心身ともに支えてくれます。私達のよい理解者です。どうしようもないことも起こりますので、その愚痴を言える場所が必要なのだと思います。里親仲間は、お互いのことがよく理解しあえるので、里親とのおしゃべり会などにも積極的に行くようにしています。

一度始めてもずっと続けられるか心配です。短期間や期限を決めた里親でもいいのでしょうか。

期限付きでもよいです。短期だけといったニーズもあります。こどもの年齢にもよりますが、こどもには状況を知る権利があります。児童相談所の担当者、委託されるこども、そして里親でしっかりと話し合うことが大事になります。

里親登録したとしても、こどもが委託されるまでには時間がかかるという話も聞きます。それまでの間、どのように委託に向けた準備をしていましたか。

いまは未委託里親の研修や、里親会のようなおしゃべり会などがありますので、そういった集まりに参加したり、児童養護施設やこども食堂のボランティアに行ったりしている人もいます。

実子がいてもいいのでしょうか。また、実子がいる場合、実子および委託されたこどもの双方と接する際の工夫などについて、聞かれたことはありますでしょうか。

実子がおられる方が半数くらいおられます。実子と里子とは違うことを受け止めながら、そのこどもそれぞれのニーズに合わせていくしかないのでしょうね。私は実子がいないのでこの問題はないのですが、実子によっては「寂しかった」という声をもありますので、一工夫はいるのでしょうね。

里親としてこどもを委託されたら、どんな生活になるのでしょうか。

自分たちの生活は、絶対に変化します。こどもを育てるということはどのようなことなのでしょうか? なぜこどもの養育をしたいのでしょうか? この根本問題に向き合ってもらわないといけないです。その変化を楽しめるといいですね。

仕事と両立できるか心配です。うまく仕事とやりくりする方法など、アドバイスいただけますでしょうか。

仕事との両立は大事ですが、まずはこどもとの絆をどのようにつくっていくのかが大事です。こどもの年齢などを考えながら、どのようにしたら仕事を継続していけるのかを、みんなに助けてもらいながら里親として養育ができたらいいですよね。無理をするといろいろなものがしんどくなりますので、無理のない範囲で。

野口啓示さん

野口啓示さん

のぐち・けいじ/1971年、大阪市生まれ。NPO法人「Giving Tree」理事長。福山市立大学教育学部教授。
妻の婦美子さんとともに2003年に神戸市の社会福祉法人「神戸少年の町」の分園として「野口ホーム」の運営を始め、2016年にファミリーホームに移行。分園時代から現在までに、19人のこどもを養育してきている。2017年に、里親やこどもたちを支援するNPO法人「Giving Tree」を設立した。

里親登録をするにあたって、ご家族は応援してくれましたか? もし、積極的に賛成してくれないご家族がいたような場合には、良い方法があれば教えてください。

私たちが里親になるにあたってそれぞれの父親にはなかなか理解を示してもらえませんでした。私たちのためを思ってくれてのことかもしれませんが、里親とは何なのか、どのような制度なのかがわからなかったのも理由だと思います。ただ、私たちの場合は実家が遠方のため、基本的には親族に頼ることなく夫婦での子育てになります。なので相談と言うよりは報告、あくまでも夫婦の判断で登録しました。
説明をしようにもなかなか歩み寄ることができずにいましたが、私たちが里親として活動していく中で、親も里親制度について調べてくれて、応援してくれるようになりました。

委託されるこどもの年齢や性別など、条件は希望できるのでしょうか? また、希望できる場合、希望された条件などはありましたか?

里親登録の際に年齢や性別の希望はできますが、私たちは子育てが初めてのため、具体的なイメージもこだわりもなく、4歳くらいまでのこどもであれば性別は問いませんでした。そのおかげか登録してすぐに紹介がありました。

支給される里親手当や生活費や教育費で十分にやりくりできましたか? うまく家計をやりくりする方法があれば、教えてください。

極端な贅沢などしなければ大丈夫だと思います。時々、他家庭に委託されたお子さんのお下がりを頂いたりすると嬉しく思います。

委託されたこどものことで困ったことがあれば、どのような人に相談していましたか? 行政はどんな対応をしてくれましたか? また、どんなサービスを活用していましたか。

デリケートな内容のことは基本的には児童相談所に相談しています。必要があれば医療機関の紹介や、各関係機関などと連携してくれます。その他、日々の子育てに関する愚痴や悩みは先輩里親さんなどに相談することが多いです。

一度始めてもずっと続けられるか心配です。短期間や期限を決めた里親でもいいのでしょうか。

長期委託の他に短期間の委託や、児童養護施設のお子さんを夏休みなどの長期休みや週末にお預かりするフレンドホーム制度(東京都の制度の名称)などもあります。また、一時保護や、他の里親家庭のこどもを一時的に預かるレスパイト・ケア専門で里親をされている方もいます。必ず長期委託ではなくても、それぞれのご家庭に合ったスタイルの里親で良いと思います。

里親登録したとしても、こどもが委託されるまでには時間がかかるという話も聞きます。それまでの間、どのように委託に向けた準備をしていましたか。

私たちの場合は登録してすぐに紹介があったのですが、里親登録するにあたって里親に関する本を何冊も読んだり、できるだけ体験発表会に参加したりして里親さんの生の声を聞くようにしました。それにより、具体的にこどもとの生活イメージがわいてモチベーションの維持にもつながりました。様々な情報や経験談を聞くことができるので、地域の里親さんとつながりを持つことも必要だと思いました。

実子がいてもいいのでしょうか。また、実子がいる場合、実子および委託されたこどもの双方と接する際の工夫などについて、聞かれたことはありますでしょうか。

里親研修の際、実子のいる方が多いことに驚きました。
私たちに実子はおりませんが、周りの里親さんは実子、委託されたお子さんの双方に家族として分け隔てなく接しているように思います。

里親としてこどもを委託されたら、どんな生活になるのでしょうか。

委託された後は、それまでの大人中心の生活から一気にこども中心の生活に変わりました。
生活サイクル、出掛ける場所、外食のお店、休日の過ごし方など、これまでの大人だけの生活と同じようにはいかないことも増えました。それに加えて、夫婦の関係も変化しました。こどものことに関する報告や相談、愚痴なども積極的に話しますし、家事や育児も何でも協力し合うようになりました。以前よりコミュニケーションは格段に増えたと思います。
その中であえて「変わらないこと」を作るようにしています。例えば今までと変わらない頻度で美容院に行く、必ず大人だけで出掛ける日を作るなど些細なことですが、自分をケアするという意味でも大事にしています。

仕事と両立できるか心配です。うまく仕事とやりくりする方法など、アドバイスいただけますでしょうか。

私(里母)は里親になるにあたり仕事を辞めましたが、周りには仕事と両立されている里親さんもいらっしゃいます。初めはじっくりこどもと向き合い、お互いに生活に慣れてきたところで仕事を再開したり、委託後すぐは仕事量をセーブするなどの工夫をされたりしていました。また、夫婦以外のご家族の協力や学童保育、レスパイト・ケアなどの社会資源を利用されている方も多くいらっしゃいます。

菅原康弘さん・千春さん夫妻

菅原康弘さん・千春さん夫妻

すがわら・やすひろ/1986年、山形県生まれ。24歳で千春さんと結婚し、2018年に東京都で養育里親に登録した。里親制度の認知度を高める活動に意欲を燃やしている。 すがわら・ちはる/1979年、秋田県生まれ。これまで学童保育の仕事や障害者福祉に携わってきた。里親になったのは39歳のときで、現在は主婦として家事・育児に専念。子育てに決まった正解はないのでは、と自分らしい子育てを模索中。

里親登録をするにあたって、ご家族は応援してくれましたか? もし、積極的に賛成してくれないご家族がいたような場合には、良い方法があれば教えてください。

里親をしていたとき、実家は遠方のため積極的な応援はなかったですが、児童福祉に対する私と夫の思いは理解してくれていたと思います。委託されるこどもと会うまではなかなか賛成してくれなかった里親側の両親が、委託されたこどもと会ってから里親以上にその子を可愛がったという話を聞いたこともあります。

委託されるこどもの年齢や性別など、条件は希望できるのでしょうか? また、希望できる場合、希望された条件などはありましたか?

私の場合は条件の希望などはしなかったですが、こどもの年齢や性別については里親の希望をもとに、児童相談所は慎重に検討してくれますし、里親との相談も十分におこなってくれます。

支給される里親手当や生活費や教育費で十分にやりくりできましたか? うまく家計をやりくりする方法があれば、教えてください。

十分かどうかは、やはり人それぞれになるかと思います。我が家の場合は複数養育でしたが、こどもが気を遣ってくれることも多くて、たとえば部活で使うシューズをこどもたちが順番に使ったりすることもありました。

委託されたこどものことで困ったことがあれば、どのような人に相談していましたか? 行政はどんな対応をしてくれましたか? また、どんなサービスを活用していましたか。

学校関係や進路、家族関係などは、児童相談所の担当ワーカーさんに相談することが多かったです。日常のことは友人やまわりにいる里親同士で話していました。委託されたこどもでも実子でも同じようなことで悩むことは多いですし、里親ならではの悩みもあります。ただ、どの悩みも、母親として自分の在り方を考える機会になったと思います。悩みがあると、時には仕事を理由に自室にこもって見つめ直すこともありましたが、気持ちに余裕があるといつの間にか解決することもあります。

一度始めてもずっと続けられるか心配です。短期間や期限を決めた里親でもいいのでしょうか。

いろいろな里親の姿があっても良いと思います。自分たちに向くやり方で、それにふさわしいこどもが、上手くマッチングできればお互いに幸せだと思います。里親としてこどもと「ともに暮らす」ことも大事ですが、本質は「ともに生きる」ことだと思います。たとえ短期間でも、その後いつでも、どんな自分でも受け入れてくれる大人がいることが、こどもの心の支えになるのではないでしょうか。里親になることへの不安があるのは当然です。ただ、短期間でも、継続が難しくても、こどもの幸せを願う気持ちはありますよね。委託児童は社会的養護のこどもたちです。自分だけで委託されたこどものことを背負いすぎずに、社会の子なら社会に助けてもらって一緒に育てましょう。ただ、その中心になるのは里親ということを忘れないでください。

里親登録したとしても、こどもが委託されるまでには時間がかかるという話も聞きます。それまでの間、どのように委託に向けた準備をしていましたか。

私の場合は委託までの時間は短かったことが多かったです。いろいろなこどもがいますから、そのこどもの特性にあったことを勉強する時間があれば、こどもを迎えるまでにより適切な環境を整えることもできるかと思います。

実子がいてもいいのでしょうか。また、実子がいる場合、実子および委託されたこどもの双方と接する際の工夫などについて、聞かれたことはありますでしょうか。

他の里親の話ですが、大学生の実子がいる方が里親になるケースも聞きました。実子とは十分に話し合い、理解もしてくれていたようです。委託されたこどもの子育てに悩んだときに里親を支えてくれたのは、実子だったそうです。

里親としてこどもを委託されたら、どんな生活になるのでしょうか。

ご夫婦で生活されている場合は、これまでの生活が一変することは必至です。それは実子でも変わらないかもしれませんし、こどもの年齢や委託までの環境にもよります。こどもに振り回される毎日。ただそれでも、こどもの寝顔を見ていると、そこにこどもがいることに幸せを感じました。夫婦ふたりでもよく話すようになります。こどもから「今日はこんなことがあった」などと言われるだけでも、夫婦の話題は以前に比べるとずっと多くなります。助け合わないと子育てはできないので、夫婦の絆は深まる気がします。

仕事と両立できるか心配です。うまく仕事とやりくりする方法など、アドバイスいただけますでしょうか。

私は里親をしているときに働いていませんでしたが、週1~2回の習い事やボランティアをしていました。家から離れて家事ではないことをして、家族でない誰かと話して、楽しい時間を持つことは私にとっては大切な時間でした。今は働いている方も多いかと思いますが、仕事であれ趣味であれ、自分が自分である時間や空間を持つことにより心も体もリセットされ、あらためてこどもと向き合えることにつながるかと思います。使える社会資源は積極的に活用し、頼れる人は頼り、子育てと仕事を笑顔で両立されますよう願っています。

石原京子さん

石原京子さん

いしはら・きょうこ/1947年、鹿児島県生まれ。首都圏の障害児施設や児童養護施設の職員を経て結婚ののち、1977年に神奈川県で里親登録。1980年に富山市へ移住し、12人を育てる。60歳を契機に里親を引退し、2010年から4年間は富山県里親支援機関で相談業務にあたる。木彫作家としても活動し、日展や日本新工芸展に出品。

里親登録をするにあたって、ご家族は応援してくれましたか? もし、積極的に賛成してくれないご家族がいたような場合には、良い方法があれば教えてください。

里親登録について反対はされませんでした。長期でこどもを受け入れるようになったのも、私の場合は季節里親を経た後でしたので、家族にとっては里親制度についてより理解する時間ができたのかもしれません。
もし積極的に賛成してくれないご家族がいた場合は、里親の必要性を家族にお話しすることも一つの方法かと思います。私は委託されるこどもの気持ちを家族にも考えてもらいました。委託されるこどもたちが親代わりの他人の家(里親家庭)で暮らすことになれば、不安になるのは当然だと思います。こどもとしては、せめて波長の合う家庭に縁があればよいのではと思います。そのときに、一人ひとりの子にフィットした里親を選ぶためには、さまざまなタイプの里親が必要になります。「こどもの役に立ちたい」という思いは、多くの方がもつ思いだと思います。

委託されるこどもの年齢や性別など、条件は希望できるのでしょうか? また、希望できる場合、希望された条件などはありましたか?

希望を出すことはできます。私の場合は実子より年下で、年齢が離れていることを希望に出しました。短期や一時保護の場合をふくめ委託期間の希望も出した記憶がありますが、実親さんの状況は変化することも多いので、予定通りにいかないことも多々あります。里親制度は実親子にとって少しでもプラスになることが理想ですので、実親さんの事情や思いをくみ取り、里親は心に余裕を持たせることも大切かと思います。

支給される里親手当や生活費や教育費で十分にやりくりできましたか? うまく家計をやりくりする方法があれば、教えてください。

基本的な生活は充分にやりくりができます。ただ、こどもが使用するスマートフォンの端末代金や月額費用、修理費などは結構負担に感じましたので、格安SIMにしたりWi-Fiを使ったりして工夫していました。

委託されたこどものことで困ったことがあれば、どのような人に相談していましたか? 行政はどんな対応をしてくれましたか? また、どんなサービスを活用していましたか。

私の場合は、療育機関やかかりつけ医が多かったです。普段からこどもの育ちを共有していたので、安心して気軽に相談できました。
保育園や学童は、子育ての心強いパートナーでした。また、ほかの里親さんと接点をもつことも、学びや困ったことがあったときの解決方法のヒントになるかと思います。私がいままで出会ってきた里親の皆さんはそれぞれが里親についての考えや思い、魂(たましい)を持って活動していらっしゃいますので刺激にもなります。

一度始めてもずっと続けられるか心配です。短期間や期限を決めた里親でもいいのでしょうか。

もちろんいいと思います。私は養育里親になる前は、お正月や長期休みの数日から一週間ほどの期間で委託されたこどもと一緒に過ごす季節里親をしていました。こどもによって委託期間はさまざまですし、何より大事なのは里親家庭がなるべく無理をしないことだと思います。自分のできる範囲でいいと思います。

里親登録したとしても、こどもが委託されるまでには時間がかかるという話も聞きます。それまでの間、どのように委託に向けた準備をしていましたか。

養育が始まるとしばらくは余裕がなくなることが多いので、こどもが来る前だからこそできることをしておくといいかと思います。里親会の活動やサロンに参加して信頼できる仲間を作っておけば、こどもが来てからの助けになると思います。

実子がいてもいいのでしょうか。また、実子がいる場合、実子および委託されたこどもの双方と接する際の工夫などについて、聞かれたことはありますでしょうか。

大丈夫です。ただ、振り返ってみると実子にも負担を多くかけていたと感じていますので、年齢に関係なく実子に対しては大切に思う気持ちをより表現することも大切です。実子が穏やかな気持ちでいてくれたら、委託されたこどもと実子の双方と接する際に工夫をすることもあまり必要ないと思います。
委託されたこどもに対しては、どんなときでも私たち里親が心から寄り添い、支えることが大切です。そうすることで、委託されたこどもだけでなく、その先にいる実親さんも救われているということもあるのではないかと思います。この実親さんを支えているということも里親制度の良いところですね。

里親としてこどもを委託されたら、どんな生活になるのでしょうか。

委託と同時にダッシュしたまま過ぎたような数年間でした。どの家庭でも一緒ですが、こどものいる生活は忙しいですよね。加えて、不安定になりやすかったり思いもよらないところに手がかかったりするので心も身体も大忙しですが、こどもの成長をそばで見られるのはうれしいですよね。

仕事と両立できるか心配です。うまく仕事とやりくりする方法など、アドバイスいただけますでしょうか。

里親になって初めて参加した里親会のサロンで、私も同じ質問をしました。ひとりの先輩里親が「あらゆる子育て支援を使ったわよ」と話されていて、とても気持ちが楽になったことを覚えています。仕事の時間は大切な自分の時間ともいえますし、母親だけが両立する時代は終わっていますから、ご夫婦で分担すれば負担は半分に減りますね。

石井啓子さん

石井啓子さん

いしい・けいこ/1970年生まれ。「川崎市あゆみの会」会長、「一般社団法人 かわさき社会的養育家庭をささえる会」代表理事、「NPO法人 里親子支援のアン基金プロジェクト」代表理事。実子たちの子育てに余裕ができたときに、「何か役に立つことがあれば」と季節里親に登録したことが里親になったきっかけ。長期のほか、短期や一時保護、幼児も受け入れ、現在も里親として子育て中。

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