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羽生結弦とハビエル、平昌五輪で記者のツイッターにあふれたものは……

スポーツ記者 稲垣康介 #16


朝日新聞欧州総局(ロンドン)駐在のスポーツ担当編集委員、稲垣康介が現場から届ける臨場感あふれるコラム。スポーツが映し出される欧州の社会の「いま」を切り取ります。


2万件超す「いいね」のツイート

聖火が消えて1カ月。スマホで自分のツイッターでのつぶやきをさかのぼると、平昌冬季五輪で広まった共感の輪がよみがえってくる。


2万2千を超す「いいね」を集めた私のツイートがある。フィギュアスケート男子で2連覇を飾った羽生結弦と銅メダルのハビエル・フェルナンデス(スペイン)が、銀メダルの宇野昌磨と一緒にねぎらいあう光景を、2人のコーチであるブライアン・オーサーさんが自身のスマホで撮影するカットだ。このツイートが閲覧された回数は、この原稿を執筆している時点で166万を超している。



このツイートを、数日後、女子選手の練習を見届けた後、オーサーコーチに見せたら、驚いていた。カナダ・トロントのクラブでしのぎを削ってきた2人の教え子について、感想を語ってくれた。


「結弦は金メダルが欲しかった。ハビエルはスペインのフィギュア界にとって初めてとなるメダルが欲しかったんだ。それがこういう結果につながった。もちろん、金、銀のフィニッシュだったら最高だったし、ほんの少しの差だったけれど。皆におめでとうと言いたい」


このツイートに多くの共感が届いたのはなぜか。競い合う中にも、ライバルを認め合い、高めあってきた絆が感じられる。それを温かくそばで、でも、押しつけがましくなく、適度な距離で見守る恩師がいる。そんな構図が浮かび上がったからかな、と思っている。

筆者がツイッターにあげた、小平と李の写真=稲垣康介撮影

もう一つ、447人の「いいね」を獲得したのがスピードスケート女子500メートルで金メダルの小平奈緒が、3連覇ならずに銀メダルに終わった李相花(韓国)を優しく抱き寄せた後、日の丸と太極旗をそれぞれ背負い、リンクを回るツイートだった。最大のライバルとの絆の深さを多くの人が目撃した瞬間だった。


しかし、いつまでも平昌の感動の余韻に浸っている場合でもない気がする。3月になっても日本のアスリートたちの活躍が次々に届いた。

欧州を舞台にしたものだけでもたくさんある。4種目の総合で争うスピードスケートの世界選手権では高木美帆が日本選手として初の総合優勝を果たし、ノルディックスキー・ジャンプの最終2戦で連勝した高梨沙羅は、ジャンプW杯の最多勝利記録を塗り替えた。複合で総合王者に輝いたのは、平昌で銀メダルだった渡部暁斗だ。


五輪出場ならなかった樋口新葉、涙のメダル

フィギュアスケートの世界選手権(イタリア・ミラノ)女子で銀メダルを獲得した樋口新葉(左)=AP

イタリア・ミラノが舞台だったフィギュアスケートの世界選手権も日本勢の活躍に沸いた。なかでも、樋口新葉の銀メダルは感慨深かった。「失敗してもあきらめない気持ちを出せた。奇跡的に取れたメダル」。ショートプログラム8位から巻き返して表彰台に上がった彼女には、別の感慨もあったはずだ。


平昌五輪出場を夢見ながら、昨年暮れの全日本選手権で4位に終わり、惜しくもかなわなかったからだ。そのときの彼女のツイートは、グッと来た。うつむきがちな気持ちの人が読んだら、勇気づけられる力強さに満ちていた。


「何があっても明日は必ずやってくるし、あきらめなかったらいつかいいことあるって信じてこの先どんなに辛いことがあっても今日のことがあったから頑張れるっておもえるようにこれから倍返しの始まりだ。大変だ、だけど四年もかけてじっくりじっくり煮込むからきっと美味しくなるね」

これをリツイートするとき、私はこんなコメントを付けた。「挫折に正面から向き合い、咀嚼し、前向きに気持ちをリセットできる人はしなやかで、強い」


有言実行を宣言した樋口新葉は17歳になった。4年間かけて、「じっくり煮込む」と宣言した2022年北京冬季五輪に向けたリスタート。再出発の最初の大舞台でつかんだ表彰台は、あのツイートを読んで励まされた人々への希望に光にもなったはずだ。


名前の「新葉」は「わかば」と読む。ミラノからの、春を告げる吉報だった。



いながき・こうすけ


朝日新聞欧州総局(ロンドン)駐在のスポーツ担当編集委員。欧州で暮らすのは2001年から4年間のロンドン、アテネ駐在以来。著書に『ダウン・ザ・ライン 錦織圭』(朝日新聞出版)。世界のあらゆる情報が瞬時にインターネットで入手できる時代だからこそ、取材現場の臨場感が伝わるコラムをお届けできたらと思っています。



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