左上から時計回りで、川本由美子さん、山本真知子さん、林浩康さん、岩崎賢一
左上から時計回りで、川本由美子さん、山本真知子さん、林浩康さん、岩崎賢一

里親を支える輪を広げよう【シンポジウム第三部採録】

10月23日に開催された「里親制度オンライン・シンポジウム」の第三部では、どうしたら里親に取り組みやすい環境づくりが進んでいくのかについて考えました。神奈川県厚木児童相談所で里親担当児童福祉司をされている川本由美子さん、札幌の麦の子会でファミリーホームを運営されている杉山真由美さん(札幌から中継)、里親の実子である大妻女子大学准教授の山本真知子さんの3人を迎え、日本女子大学教授の林浩康さんとともに掘り下げました。ファシリテーターは朝日新聞社の岩崎賢一です。(敬称略)


児童相談所の里親担当児童福祉司の仕事ってなに?

岩崎賢一(以下、岩崎):川本さんにお聞きします。児童相談所も、最近どんどん変わってきていて、業務内容も変化していると思います。しかし、一般の人たちが児童相談所について聞くのは、大きい事件とか事故とかが起きたときのニュースです。児童相談所に行ったことがない人が多いと思いますし、誤解されている部分もあると思います。いま、川本さんは、里親担当の児童福祉司をされていますが、お仕事の内容をご説明いただけますか。

川本由美子さん

川本由美子(以下、川本):児童相談所というと、どうしても虐待対応をするところと思われる方が多いと思います。私は里親担当をしていますが、主な業務の一つ目は、里親さんとお子さんとのマッチング、関係機関とのネットワークづくり、里親に関する情報提供、児童相談所職員の里親制度への理解促進など、里親全般に関するコーディネートです。二つ目は、広報啓発活動です。三つ目は、里親登録を希望される方がいたときに面接したり、登録までのお手伝いをしたりしています。四つ目は、特別養子縁組のあっせん団体からの同居児童の届け出があったときに調査をするという業務もしています。五つ目は、里親に関する事務作業です。

岩崎:川本さんは、何人くらいの里親の方たちを担当されていますか。

川本:現在41組です。

岩崎:数だけ聞くと非常に多いなという感じです。ケースによって関わり方は変わってくるのですか。

川本:長期委託を受けていただいている養育里親の方、特別養子縁組をしている方、登録里親になっているけど未委託の方、登録のために研修中の方、その方の状況によって関わり方は変わってきます。

川本さん
川本さん

1カ月経ったころ、疲労や「こんなはずじゃなかった」という感情がわき出る人も

岩崎:続けてお聞きしますが、第二部でご出演いただいたご夫婦は、最初に委託を受けて「壁にぶつかった」ときに、児童相談所の方に相談したら専門職の方々によるチームをつくってくれて受け止めてもらったり、同じような悩みを抱えている里親の方々との集まりを開いてもらったりしたことが、いまにつながっていると話されていました。「自分たちだけじゃないんだ」って気づくことで、プレッシャーというか、抱え込んでしまうことから解放されたみたいな話がありました。
ベテランの里親の方たちならさまざまな経験値があると思います。しかし、みなさん、最初に子どもを迎えるときは不安がつきまとうと思います。そういう方たちに、どのようなサポートやアドバイスを里親担当の児童福祉司の方たちはするのですか。

川本:1カ月過ぎたけど、その間の出来事を思い返そうとしても何も浮かんでこないという方が多いです。そのころは、ものすごい疲労感だったり、あとは里親になろうと思って研修を受けたけれど「こんなはずじゃなかった」「私が求めていたのはこんなことじゃなかった」っていうような思いが出てきたりする人がいます。その方たちには「いまのままで大丈夫」というようなことを伝えていきたいなと思っています。どんなことでも、話していただくのは大事なので、「一人じゃないんだよ」っていうメッセージをいろいろな形で伝えるようにしています。あとは、(一時的な休息をする)レスパイト・ケアなどの制度を活用していただいて、休むのが大事かなと思います。

岩崎:里親制度や里親のことを理解していても、里親になって最初のケースでうまくいかず、児童相談所に連絡して別の里親の方や児童養護施設にお願いすることになると、子どもだけでなく、里親のご夫婦もその後、非常に落ち込むという話を聞きました。そこから立ち直るのが非常に大変だと。里親を自らやろうと思って始めた人たちが、うまくいかなかったときのサポートがとても大切だし、サポートがうまくできれば、次につながると思います。川本さんのお話を聞きながら、川本さんのような方が増えてくれればと思いました。

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

子どもが感情をコントロールできなくなったときに駆け付けてくれるチームがサポート

岩崎:杉山さんは5人から6人のお子さんをご自宅に受け入れて養育するファミリーホームを運営されています。ファミリーホームを知らない人は多いと思います。いまどのような年齢層のお子さんと暮らしていて、どのようなケースが多いのか、説明いただけますか。

杉山真由美さん

杉山真由美(以下、杉山):私が運営するファミリーホームは、社会福祉法人麦の子会が経営している、法人型のファミリーホームです。現在、高校3年生の子どもが1人、中学1年生の子どもが3人、小学2年生の子どもが1人、4歳の子どもが1人います。4歳から高校3年生まで幅広い年齢層の子どもをお預かりしています。全員、男の子です。

岩崎:杉山さんの実子の方と同性の方を受け入れているということですか。

杉山:そういうわけでもありません。男の子も、女の子もいるところもあります。麦の子会では、法人型のファミリーホームが4カ所あります。我が家は男の子だけですが、男の子と女の子がいるファミリーホームもあります。

岩崎:このシンポジウムで札幌から中継してまで杉山さんにご出演していただきたいと思ったのは、杉山さんご夫婦が里親やファミリーホームをされてきた中で、里子との関係で困難なことがあったときに、第三者のサポート、第三者の介入があって「助けられた」「それがあるから継続することができた」とインタビューで話されていたからです。話せる範囲内で紹介いただければと思います。

杉山:以前暮らしていた男の子の話ですが、感情をコントロールすることができなくなることがありました。本人も、私たちのところに来て、人間関係をどのようにしたらいいのか不安がすごくあったと思います。ただ、感情のコントロールができなくなると、私たち夫婦だけでは対応が難しくなって、麦の子会の職員に相談しました。感情をコントロールすることができなくなってくると、サポートしてくれる専門職の職員が駆けつけてくれて落ち着くまで寄り添ってくれます。専門的な知識を持った職員が駆け付けてくれるので、非常に安心感があります。いろいろなことがありましたが、その都度、その子の支援チームで支援会議を開き、現場にいる私たちが具体的にどのようにしたらいいか、どんな言葉をかけたらいいのかということを考えてくれて、みんなでその子を支えてきました。
感情をコントロールできなくなると大変なので、家の外に出てサポートチームの職員に電話をするということを毎日練習しました。電話で相談することによって、感情のコントロールが徐々にできるようになっていきました。私たち夫婦は、その子がイライラしてくると、「外に行って電話したらいいんじゃない?」って声をかけ、その子も外に出てサポートチームの職員と話をして落ち着くようになったので、私たち夫婦も安心して暮らせるようになりました。
サポートチームではそのほかにも、日常生活の中で困難だなと思うような場面、例えば朝起こしたり、試験勉強だったり、そうした課題に一緒に取り組んでもらうなど、日常生活の中での難しい場面でもサポートしてもらっていました。いろいろな大人がそれぞれ関わることによって、本人も「みんなが自分を応援してくれている」という風に感じて、それが心の安定につながったと思います。そのほかにも、デイサービスに通う同年代の子どもたちとつながりをつくるサポートもしてもらいました。
私もサポートチームの人たちには本音で話をし、「みんなで子どもを支えていこう」という感じで一緒に取り組んでこられたので、何とかいままでやってこられたのかなと思います。彼はいま、麦の子会の施設で職員をしています。やっぱり人は変われるし、そのためにはたくさんの大人の知恵と力と愛と笑顔が必要だということですね。麦の子会のミッションですが、やっぱり里親だけではなく、里親も助けを求めて、みんなで子育てをするっていう環境づくりが大切だと思っています。

杉山さん
杉山さん

実子に注目し、言葉をかけてあげることが必要

岩崎:山本さんにお聞きしたいのは、ご両親が里親やファミリーホームをされている家庭の実子の本音です。山本さんにインタビューした際、子どものころ、里親をされる人たちは聖人君子のようなイメージで「ご両親って素晴らしいですね」と声をかけられると、そのあとにネガティブなことを何も言い出せなくなってしまう、というお話をされていました。実子の方のお話を聞く機会はあまりないので、少し実子の気持ちをお話いただければと思います。

山本真知子さん

山本真知子(以下、山本):両親は私が小学1年生のときに里親を始めました。ファミリーホームになったのはそれが制度化されてからなので、私が大学院に通い始めたときです。里親であってもファミリーホームであっても、里親は素晴らしい人で、ファミリーホームは珍しい人みたいに捉えられることが非常に多いです。両親のことを「うちは里親をしている」というと、「ご両親は素晴らしい人ですね」とか、「とても私たちにはできないことです」といわれることがとても多かったです。そういわれると、里親っていうのは「珍しい人が成せるもの」で、それを選ぶ人っていうのはとても珍しいものというように思われがちです。実子として一緒に生活しているので、例えばちょっとした愚痴のようなものも周りの人にしようとすると、「いやいや、真知子ちゃんのお父さんとお母さんは素晴らしいことをしているんだから」というようにいわれてしまい、私は何もいえなくなってしまいました。(愚痴のようなものを言うということはネガティブなイメージなので)、同じ家で生活している子どもたちや両親のことをあまり悪くいえないという気持ちがすごくあったので、「親が素晴らしいことをしている」ということをいってくると、「そうですね」と返すようにしていました。実子の本音でいうと、(親は誰もが)100%正解な子育てをしている、完璧な子育てをしているわけではないので、両親が里親をしていることは周りに褒められることなのかなと思っていました。

岩崎:実子といっても、小学生のときの感情と、中学生や高校生のときの感情、大学生になってからの感情は変わりますか。

山本:はい。

岩崎:思春期のころはストレスがたまりますよね。実子としてそのストレスがたまったときに、どのように発散していましたか。

山本:里親家庭で育っていることからのストレスなのか、思春期特有のストレスなのかということを、実子自身が判断するのはすごく難しいことだと思います。「あ、これは思春期特有のものなんだろう」「これは多分実子特有のものだったのかな」という風に思い返せたのは、私は研究を始めてからです。周りの大人がもう少し実子に対して注目し、言葉をかけてあげるとか、気にかけてあげるということが必要だと思います。

岩崎:山本さんはインタビューの中で「里親家庭の実子への支援とかサポートを充実してほしい」という話をされていましたね。

山本:第二部でもお話が出ていましたが、里親同士で集まる「里親サロン」というものがあります。川本さんのような里親担当の児童福祉司の方が定期的に里親に面会に来てくださることもあります。先程、川本さんがおっしゃっていましたけど「何でも話してほしい」というスタンスでいてくださると、とても心強いです。委託されている子どもたちに対しても、担当されている児童福祉司の方々がいます。しかし、私たち実子にはそのような担当者はいません。里親サロンのような形で実子同士が集まって話をする機会もありません。「こういうとき、どうしたらいいんだろう」ということを、里親の方々はサロンで話を聞く機会がありますが、実子にはそういった機会がほとんどありません。私はまったくありませんでした。実子同士が集まる場をつくってあげるとか、専門職の方々が実子の話を聞いていったりすることがとても必要だと思います。

岩崎:川本さん、山本さんのお話を聞いていていかがですか。

川本:私が勤務する児童相談所の管内にも、実子がいる里親の方々がいます。いまの話しも、本当にその通りだなって思いました。私たちも実子に注目するっていうことをあまりしていなくて、もちろん何らかの形で見てはいますが、実子の人たちに向けてのサポートはなかったなあと思いました。これから考えていければと思いました。

山本さん
山本さん

専門的なケアを提供する体制をどうつくっていくのか課題

岩崎:里親やファミリーホームの方々を取材してきて感じた、もう一つの側面についてみなさんと一緒に考えていきたいと思います。ファミリーホーム、里親、児童養護施設などで生活しているお子さんたちは、厚生労働省の統計を見ると、虐待のトラウマを持っているお子さんとか、何らかの障害のあるお子さんが多いことに気づきます。そうすると、里親に関心があっても「一歩踏み出すのはむずかしいのかな」「私は専門的知識がないから難しいのかな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ダイバーシティ、インクルーシブな社会が求められている時代ですが、広い輪で支えていくということが大切になるのかなと思います。今日は、里親を無理なく続けていくために支援の輪を広げていくということも大切なテーマだと思っています。林さんにお聞きしたいのは、どのようにお考えですか。

林:養育というのは、本来的には一般家庭も含めて地域の力というのが必要です。なおかつ社会的養護が必要なお子さんというのは、大きな喪失感や被害体験が積み重なっているわけですから、さらに特別な支援も必要であり、里親の方々は公的養育者として関係機関と連携していくという責務があります。それに対して行政がどのような支援体制を築いていけるかというところが大きな課題と思います。現状はどうしても訪問支援に終始してしまっています。レスパイトというものがあっても、日数制限なく利用できる自治体とそうでない自治体があります。また被害体験を抱えているお子さんに対しては専門的なトラウマ治療が必要なこともあります。児童相談所がそれを即座に提供できるかというと、体制上無理がある場合もあります。専門的なケアを提供する体制は、今後、児童養護施設や民間クリニック等とも連携して整備する必要があります。施設の強み、里親の強みという双方を生かしつつ連携していく体制をどうつくっていくかということだと思います。

岩崎:(里親をサポートする)フォスタリング機関の支援内容の充実も必要ですね。

林:そうですね。訪問者は増えるけれど、具体的な支援がまだまだだっていう声もあります。フォスタリング機関による具体的な養育の支援の充実が必要だと思います。

川本:レスパイトは里親の方々が休むだけじゃなくて、子どもの状況の共有という意味もあります。ある里親の方はこう思っているけど、他の里親の方はこういう感じなんだということを感じることができ、そういう部分を他の里親を通じて共有できるところがあります。また、子どもを多角的に見ることができるメリットもあります。ぜひ使っていただきたいと思います。

林さん
林さん

障害児の親が集まった自助グループでの経験がいまの里親生活に生きている

岩崎:杉山さんも実子が障害を抱えていて、子育てでいろいろ悩まれたことがあったとお聞きしました。「子育てが得意ではなかった」というお話もされていましたが、そういう杉山さんが、里親になり、いまはファミリーホームを運営しています。当時の経験がいま生かされているということはありますか。

杉山:私はほんとうに子育てが苦手で、子どもとどんな風に過ごしたらいいのか、よくわからなかったころがありました。自分の子どもに発達の遅れがあって、障害があるということがわかりまして、麦の子会のプログラムに参加するようになりました。この子とどのように話したらいいのか、子どもにとって大事なことをいろいろ学んできました。子育てで困難なことにぶつかると、やっぱり「もう無理だわ」とか、「もう受け入れられない」みたいに、子どもに対してネガティブな感情を持ってしまうことがありましたが、その感情を否定しないで受け止めてもらう経験をしました。麦の子会では母親への心理支援としてグループカウンセリングがあります。同じ悩みを持つ親同士で、自分の正直な気持ちをオープンにしていくことを通して深い部分で自分を理解したうえで、それを子育てに生かしていくことを学びました。
現在は、休日になると里親仲間と一緒に公園に行き、遊んでいます。グループで遊ぶと子どもたちも楽しいんですけれど、里親が交代で子どもたちの見守りができるので、リフレッシュにもなります。私もおしゃべりするのが大好きなのですが、悩みを相談し合ったり、ネガティブな気持ちに共感してもらったりすると、「次はこんな風にやってみよう」みたいな感じで、みんな気持ちが晴れて明るくなっていきます。そんな週末を過ごしています。

岩崎:他にもありますか。

杉山:月に1回は里親仲間と自助グループの集まりをしています。麦の子会には20種類ぐらいの自助グループがあります。私も里親自助グループのほか、あと二つ参加しています。そこで悩みを聞いてもらったり、自分が経験したことを話したりすることで、気持ちに整理がついていきます。近所に暮らすおじさんやおばさんとかと一緒に子どもを育てていくっていう感じです。私でも6人の子どもを育てていけるのは、やっぱり周りにいる人たちに助けてもらえる環境の中にいるからだと思っています。

岩崎:「毎週末、子どもたちをどこかに連れてかなくちゃいけないんじゃないか」と悩むことがあったそうですが、それをどうやって解決したか教えていただけますか。

杉山:グループで動くということでしょうか。「来週はこんなことをやってみようか」とか、みんなで相談して、みんなでやると、負担が軽くなります。一人ではできないことでも、何人かが集まって手伝ってもらえばできることもあります。いつもと違う大人が子どもに声をかけることで、子どもに好影響を与えることもあります。

杉山さん
杉山さん

「何か手伝えることがあれば」というスタンスの子育て中の方の問い合わせが増加

岩崎:川本さんが、勤務されている児童相談所では、最近、里親になりたいという問い合わせが増えているそうですね。どのような人たちが里親になりたいと問い合わせをしてきているのか、教えていただけますか。

川本:これまでは、不妊治療を続けてきた方だったり、ご自身が子育てを終えて社会貢献というか、もう少し活躍したいという方が多かったりしました。最近は「何か手伝えることがあれば」というスタンスで、ご自身も子育て中という方からの問い合わせが多いのが特徴です。
さまざまな年齢、さまざまな背景を持つお子さんがいるので、里親の選択肢が増えることはとてもありがたいことだと思っています。もちろん、実子との関係で中途養育に伴う困難さが多いということはお伝えするようにしています。
第二部でも話がでていましたが、里親をされている人たちが日常生活の中で自分が里親をしていることについて語ることが、里親の輪を広げていくことにつながっているのだと思います。

岩崎:いまはインターネットの時代です。里親をしていることをどこまで語っていいのか。昭和時代の里親と令和時代の里親では、少し感覚が違うのかもしれません。一方で、虐待など子どもの背景も踏まえて、守ってあげないといけないこともあります。すごく難しい時代でもあると思います。この点については、どのように考えていけばいいですか。

川本:里親の方たちには、お子さんの情報を不特定多数の人だけでなく、親族でも伝えないで下さいと話しています。ただし、里親活動をしていることは伝えてもいいと話しています。その方が暮らしやすいと考えるからです。令和時代の里親の方たちは、委託を受ける前から里親をされていることをご近所の人たちに話されていると聞いています。

川本さん
川本さん

実子が感じた里子の行動の背景が伝えられない苦しさ

岩崎:山本さんにお聞きしますが、ご両親はどうされていたのでしょうか。

山本:両親は地域や学校に里親をしていることを伝えていました。先ほど川本さんがご説明されたように、お子さんのことは不特定多数の人たちや近所の人たちに話さないようにというのが基本だと思います。しかし、私のような里親の実子には何も説明がない状態で一緒に暮らす生活が始まります。近所の人が実子について聞いてくることがあります。
委託される子どもたちにはそれぞれの背景があって、他の子どもたちと一緒に遊ぶことが苦手な子どももいます。そういう子どもを我が家が預かっていたときの出来事ですが、公園で遊んでいる実子の私に対して、「あの子とはもう遊ばせたくない」といってきた里子と同級生の親がいました。そのようなとき、私たち実子は、どこまで話していいのか、背景があるからそういう行動になってしまうことを説明できない苦しさがありました。
両親は子どもたちの個人情報なので伝えられないと話していますが、聞いてくる方がいるときにどう答えたらいいのか、実子も児童相談所の方々と一緒に考えることが必要だと思います。

岩崎:林さん、アドバイスをお願いします。

林:なぜ伝えなければならないか、ということですね。子どもの安全、安心を守るためには、重要な人たちにはきちっと伝えないといけないことがあります。そのきちっと説明しなくてはいけないことは個人情報ではなく、里親さんはどういったお子さんたちを養育しているのか、里親さんとはどういった人なのか、里親制度の啓発を含めて重要な人たちには伝えないといけないと、子どもの安全、安心な環境はつくれないと思います。

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

里親家庭で暮らすことによって子どもの表情に笑顔が増えること知ってほしい

岩崎:山本さんにお聞きしたいのですが、研究者でもあり、里親の実子でもあり、さまざまな視点で里親制度をみてきたと思います。里親になる人を増やすためにはどうしたらいいと思いますか。

山本:第二部でまこちゃんが話していましたが、海外では里親と伝えると「里親ね」と簡単に受け止めてくれる人が多いです。日本では、「すばらしい人がやること」と認知されている面があります。すべての人が里親になれるわけではありませんが、多くの方に今日のようなイベントを通じて知ってもらうことが大切だと思います。子どもたちは里親家庭で暮らすことによって笑顔が増え、私の両親が育てた里子も最初に来たときの写真と比べると表情が全然違います。そういうすばらしい点を少しでも多くの人に知ってもらうことが非常に必要だと思います。
虐待事件があると、インターネットの書き込みなどで「うちにくればいいのに」といった意見がみられることがあります。そういうふうに考える方がいるときに、「里親にはこういう支援があるので里親になってみませんか」といえるような支援が充実していく社会になっていけばいいと思います。

質問1

岩崎:第三部も視聴者からの質問があります。林さんにまとめて答えてもらいます。大阪府にお住まいの40代の女性からの質問です。「まずは『週末里親』をしてみたいと思い、窓口に相談しました。私には2歳と4歳の実子が2人いるため、『まだ甘えたい年齢の実子がいるから現状難しいのでは』との返答でした。何か現時点で、里親支援でできることはないでしょうか」。いかがでしょうか。

市区町村の子育て支援に問い合わせてみては

林:週末里親は都道府県独自の制度です。各施設で対応している場合と、児童相談所が対応している場合、民間の里親支援機関が対応している場合などがあります。施設で対応している場合は、別な施設なら対応してくれるところがあるかもしれません。もう一つは、里親になれなくても、各市区町村が独自やっている子育ての受け皿になっていくという方法もあります。例えば、ファミリーサポート事業の援助会員に登録してみるとか、ショートステイの受け皿ができないか、問い合わせてみたらいいと思います。

質問2

岩崎:次の質問です。埼玉県にお住まいの50代の女性からの質問です。「特別養子縁組した子どもが一人います。 養育里親として、子どもを迎え入れる準備があることを児童相談所に何年も前からお話していますが、年に1回意思確認のための家庭訪問があるだけです。どのような気持ちで、どのような準備をして、児童相談所からのお話を待てばいいのでしょうか。 子どもたちの幸せのために、家庭に子どもを迎え入れなくてもできることはありますか」。いかがでしょうか。

里親支援機関に問い合わせてみては

林:未委託の状況の登録里親さんかと思います。各都道府県でも、未委託の里親さんが多い中で、未委託の里親の方々も参加できるサロンを開いたり、未委託里親さん向けの研修をしたり、一時保護の子どもをお願いしたり、多様な取り組みが行われています。管轄している児童相談所やもよりの里親支援機関に問い合わせられたらと思います。

質問3

岩崎:次の質問です。山口県にお住まいの50代の女性からの質問です。「社会的養護が必要な子どもたちには、発達障害や知的障害など何らかの障害のあるある子どももいると聞きます。里親として子どもを迎え入れた際、活用できる支援制度はどのようなものがありますか」。いかがでしょうか。

障害児の支援サービスは市区町村が中心に提供

林:障害児の支援サービスは市区町村が中心に提供されていると思います。発達支援センターとか、保育園を専門職が支援する仕組みとか、放課後デイサービスなどもあります。環境要因からくる発達障害の症状もあります。トラウマに焦点を当てた治療が必要な場合は、児童精神科医や心理職による専門的なケアを受けることが必要なお子さんもいると思います。

岩崎:ありがとうございました。


本事業は里親制度広報啓発事業として実施しています(実施主体:朝日新聞社・厚生労働省補助事業)
SHARE

知りたい

もっと知りたい

理解を深めたい