上:左から加藤靖教さん、早川麻耶さん、山本昌子さん<br/>下:左から中島善郎さん、林浩康さん、岩崎賢一
上:左から加藤靖教さん、早川麻耶さん、山本昌子さん
下:左から中島善郎さん、林浩康さん、岩崎賢一

当事者が語る里親の第一歩【シンポジウム第二部採録】

インターネット全盛の時代ですが、実は里親養育に取り組まれている方々の情報、里親家庭の日常生活について知りたいと思っても、なかなか検索に出てきません。その背景の一つには、さまざまな事情を抱える里子について、センシティブなこともあるため、ブログやSNSでなかなか発信できないという事情があります。10月23日に開催された「里親制度オンライン・シンポジウム」の第二部では、里親をされている早川麻耶さん・加藤靖教さんご夫妻、同じく中島善郎さん、「THREE FLAGS」のまこちゃんとして社会的養護の啓発活動をしている山本昌子さんに、実際の里親や里子の日常生活、当事者の胸の内、また不安や壁をどう乗り越えてきたのかということについて語ってもらいました。日本女子大学教授の林浩康さんにはアドバイスをお願いしました。ファシリテーターは朝日新聞社の岩崎賢一です。(敬称略)


子育てが一段落してから里親を始めるより実子と一緒に育てた方がいい

岩崎賢一(以下、岩崎):最初に早川さんにお聞きします。早川さんは30代で里親をされています。実子も保育園に通うお子さんが2人いて、3人目を里子として迎えられました。一般的には若い夫婦だと自分の時間がほしいという人も多いですし、共働きだと「ワンオペ育児」といった社会課題もあります。実子が幼い時期から里親を始めたのは、どのような理由からですか。

早川摩耶さん、加藤靖教さん

早川麻耶(以下、早川):私の場合は学生時代から家族のかたちの一つとして里親があるというのは知っていました。ただ、自分は子育てに向いていないんじゃないかな、と思っていました。それがパートナーとの間に実子が生まれ、子育てが始まってみると「案外自分にもできるじゃん」っていうことに気づきました。保育園もありますし、パートナーと一緒に家事をしたりしているので、思ったほど大変じゃなかったです。社会的養護が必要な子どもたちには家庭で育つ環境が大事だと思っていたので、うちもその家庭環境が提供できたらなあと考えました。
「実子が幼いのに」と思うかもしれませんが、自分たちのキャリアプランやライフプランを考えたとき、実子の子育てが一段落してから里親を始めるよりも、実子も里子も一緒に育っていったらいいなと思っています。3人とも年齢が近いので、おもちゃや洋服を共有できるし、それこそテレビ番組も同じものが見られます。実子のママ友がいて保育園との関係もできていたので、スムーズに里親がスタートできました。

岩崎:加藤さんは、早川さんから「里親を始めたい」と聞いたとき、どういう話し合いをされたのでしょうか。

加藤靖教(以下、加藤):特に抵抗はなかったです。最初にこの話を聞いたとき、私は養子縁組のことだと思いました。まずそのレベルから情報収集して里親制度の理解をしていきました。でも、他人の子どもでもかわいいと思えるので里子を迎え入れること自体には問題がないと話しました。

早川さん、加藤さん
早川さん、加藤さん

一時保護の中高生を里親が預かれば学校に通うことができる

岩崎:中島さんは児童相談所に一時保護された中高生を中心に迎え入れていますね。そのようなスタイルに至ったのは何か理由があるのでしょうか。

中島善郎さん

中島善郎さん(以下、中島):私が里親登録して、児童相談所に初めて相談したときも、「短期だけの里親は可能ですか」と確認した記憶があります。児童相談所の職員の方は、びっくりした様子で「できますよ」って答えてくれました。(短期里親という制度はないので)一時保護が必要な子どもが対象になります。(行政機関が運営する)「一時保護所」という施設もありますが、そこだと基本的に学校に通えなくなってしまいます。私たちのように里親登録している家庭が一時保護された中高生を預かれば、その間でも学校に通うことができます。社会的養護が必要な子どものために何かがしたい、でも共働きで1日中子どもの世話ができないという人には、おすすめかもしれません。

中島さん
中島さん

里親家庭が必要な子どもは乳幼児や虐待を受けた子どもだけではない

岩崎:スライドは厚生労働省のデータですが、中島さんが話されたように、里親家庭や乳児院、児童養護施設などで暮らす社会的養護が必要な「要保護児童」は、必ずしも乳幼児ばかりではなく、小学生や中学生、高校生も多くいて、幅広い年齢の子どもたちに向けた家庭養育の場が必要なことがわかります。
もう一つは、子どもたちの保護された理由です。虐待が37.9%で一番多いですが、スライドを見ていただくといろいろな理由があることがわかります。親の経済事情や病気も含め、ちょっとしたきっかけで、社会的養護が必要な当事者になる可能性があるということを、多くの人に理解してほしいし、だからこそ多くの人に社会的養護に関わってほしいと思います。
里親といっても早川さん・加藤さんご夫婦のようなケースや中島さんのケースのように、多様な関わり方があるということがわかりました。林さん、少し解説していただけませんか。

社会的養育の推進に向けて

林浩康(以下、林):他にも、都道府県独自の制度として「週末里親」というものがあります。名称はさまざまですが、児童養護施設などで暮らす子どもを週末に家庭で預かるという形もあれば、市町村が中心となって(実親のもとで暮らす子どもを一時的に預かる)ショートステイの受け皿として子どもを預かるということもあります。中島さんのように、一時保護の受け皿になっている里親もいます。
養育里親でも、里子と実親との交流があるケースもあれば、ないケースもあります。預かる期間もさまざまです。

林浩康さん

当事者の子どもたちにとって学校に通えないということは大きな問題

岩崎:まこちゃん、早川さん・加藤さんご夫婦、中島さんのお話の感想を聞かせて下さい。

まこちゃん:早川さんと加藤さんについては、本当にまず社会的養護に目を向けてくださったことに感謝でいっぱいです。私がよく出会う方々からは、ご夫婦の一方の方が里親をやりたいと願っていても、もう一方の方に理解していただけないというお話を聞くので、ご夫婦で理解しようとしてくださったことがまずありがたいと思います。
私もかつては養子縁組しか知りませんでした。やはりもっと広く養育里親という制度や存在を知られるようにするべきだと思いました。
中島さんが話された「一時保護所」に入ると学校に通えないという問題は、当事者の間でも大きな問題となっています。そこに着目して、そこを解決したいと取り組んでくださっているので、本当にありがとうございます。

山本昌子さん

岩崎:まこちゃんは小学生のころ、週末里親の一種である「フレンドホーム」という制度を使われていたそうですね。子どもの側からみて、不安はありませんでしたか。

まこちゃん:私は本当にありがたいことに、施設の職員の方から「家庭っていうものを知ってほしい」という目的などの説明を受けていたので、不安はありませんでした。
しかし、私が多くの里親家庭を経験した人たちとつながっている中で話に出ていたのは、児童相談所による措置解除後に「自分は、果たしてどうなってしまうんだろう」という不安があります。養育里親の家庭を出た後、1人で生きていかなければならないのか、里親家庭はつながり続けてくれるのか、という部分にとても不安を感じています。
コミュニケーションの部分では、障害のある方が「自分自身の障害のためにコミュニケーションがうまくとれなかったことが申し訳なかった」という気持ちがありつつも、「もう少し里親家庭の方々にも障害のある子どもたちについて理解してほしかった」というお話をしてくださいました。

山本さん
山本さん

生活感ある部屋で迎え入れ、初日はカレーライス

岩崎:中島さん、一時保護の子どもを預かる場合、児童相談所から連絡が来て、その日のうちに子どもを連れてくるというケースが多いと思います。養育里親のように事前のマッチングはなく家庭に迎え入れることになります。児童相談所の職員の方々や、迎え入れた中高生たちとのコミュニケーションで気を付けていることはありますか。

中島:児童相談所の方々は、学年、性別、学校の場所、一時保護の理由、おおよその期間を教えてくれます。子どもも突然のことなので不安がいっぱいです。ちょっとでも不安を和らげるため、部屋はモデルルームのような整った感じではなく、生活感を残す程度に掃除をし、その夜のご飯はいつもカレーライスにしています。
家に着いてからは、自己紹介のあと、一時保護のルール説明、我が家での決まり事、部屋の案内、そして我が家で飼っている2匹のネコとも会わせます。ほかにも努力はしていますが、一時保護で来ている子どもに尋ねたら、うちで一番安心したのはネコだって言っていました。

中島さん
中島さん

同じような悩みを持つ里親とつながれたことで救われた

岩崎:ネコといえば、早川さん・加藤さんのご家庭にもネコがいましたね。早川さん・加藤さんにお聞きしたいのですが、お二人にロングインタビューをした際、最初は壁にぶつかったことがあったというお話がありました。「続かないんじゃないか」とか、「疲れてしまった」とか。壁にぶつかったときに、どのように乗り越えたのでしょうか。

早川:私たちは里親を始める前、保育園に通う(他の家庭の)子どもたちを見ていて、「まあ、どの子も可愛いし、どの子がうちに来たとしても、うちに来ちゃえばみんなうちの子だよね」って思っていました。こういう感覚があって里親を始めましたが、実際に里子を迎え入れてみると、かわいいと思えない気持ちが出てきました。それが一番つらかったですね。

加藤:二人とも同じ感情だったので、「このままじゃだめだ」「里親を続けられない」と思って、児童相談所の里親担当職員の方に事情を話しました。児童相談所では、専門職の方々による支援チームを作ってくださったり、同じような悩みを持つ里親を集めての里親サロンを開いてくれたり、里父の方々との交流の場も設けてくれたりしました。

早川:児童相談所の方々には、相談した翌週ぐらいに支援チームを作っていただきました。私たちの家庭の生活の様子、育児の様子を丁寧に聞いてくれました。その中で言われたのが、「温かいご飯をつくっているし、毎日お風呂にも一緒に入っている。毎日、洗濯し、清潔な洋服も着せているし、もう十分、子育てをやっていますよ」って言ってもらえました。「すくすくお子さんは育っていますよ」って言ってもらえたことで、まあこんな私たちでも、上手に育児をやれているんだと安心できました。
里親サロンは、同じ思いを抱いている里親の方たちが集まってくれて、私たちのために開いてくれました。自分の本当の気持ちを話していいんだっていう安心感がありました。こういう気持ちになるのって自分だけで、自分はおかしいんじゃないか、って思っていたんですけれど、他の里親の方たちも同じような経験があるっていうことを聞き、一人じゃないんだと思って安心できました。

早川さん
早川さん

愛情は知識と技術と支援環境によって構成される

岩崎:児童相談所の対応はまちまちですが、早川さん・加藤さんのお話を聞くと、さまざまな形で里親家庭へのサポートが必要だということがわかりました。里親任せにしない、ということが里親制度を広めていくためには重要だと思います。
「かわいいと思えない」という言葉だけ聞くと、ちょっとショッキングですが、実は早川さん・加藤さんを取材した後、一連の取材の最後に俳優の桐谷美玲さんを取材した際も、同じような経験があったと聞きました。早川さん・加藤さんが最初に抱いた感情は特別なことや、里親と里子の関係だから起きたものではないと思います。そこの部分について、林さんから解説いただけますか。

林:どうしても愛情って「かわいく思わなければ」という心がけという考え方があるかと思います。でも、それは子どもの行動が理解できないとか、あるいは具体的にどうかかわればいいかという対応の技術的問題とか、夫婦の関係とか、ご近所との関係とか、あるいは児童相談所との関係とかが関係してくるのだと思います。つまり愛情というのは、知識と、技術と、支援環境によって構成されると思います。その三つがそろわなければ、やっぱり我が子に対する肯定的な思いは出なくなります。早川さんが話された「つらい」ということを素直にいえる力というのはすごいと思います。自己開示力。援助を求められる力が、継続するための大きな要因になっているのかなと思います。

林さん
林さん

里親が孤立している姿を見ている「自分たち自身もすごく苦しかった」

岩崎:まこちゃんは、数カ月に1回、「週末里親」の家庭に遊びに行っていたということですが、その家族との関係性について、どのように考えていましたか。毎日、一緒に暮らす養育里親とはまた違う面があるのかもしれません。

まこちゃん:(お答えする前に)早川さんや他の方たちの話を聞いて、一言だけいいですか。例えば、私たち当事者も里親になってくれた家庭のルール説明や、ネコの話が出ましたがアレルギーや苦手な子どももいるので、そういう話は行く前に話をうかがえればいいですね。もう一つは、モデルルームではなく普通の家っぽくっていうのは、本当に当事者の間でも出ます。モデルルームのような部屋だと、違う世界にいるような感じがして身構えてしまうことに気配りしてくださっているということは、本当にありがたいなと思いました。
早川さん・加藤さんの話の中で、児童相談所が里親家庭の支援チームをつくってくれたこと、すごく感動しました。私の知っている当事者の子どもたちは、里親同士のコミュニティがなくて、どうすればいいかわからないってすごく困って悩んでいるのを感じていて、「自分たち自身もすごく苦しかった」という意見をたくさん聞きます。本当に「大丈夫だよ、ちゃんとできているよ」って1人でもお声がけしてくれる人がいるっていうのは本当に大事だと思います。当事者の間でも出る話題なので、話をさせてもらいました。

岩崎:児童相談所によって、ケースによって対応はさまざまでしょうけど、早川さん・加藤さんがお住まいの地域にある児童相談所は、手厚い体制ができて、前向きな支援がされていたということですね。第三部には、その児童相談所の里親担当職員の方がご出演します。ではまこちゃん、先ほどの質問についてお願いします。

まこちゃん:私の場合は、友だちの家に遊びに行くような感覚でした。施設で暮らしているとルールが多いですが、私は比較的人に馴染みやすい性格だったこともあって、週末里親さんのお宅に行ったときには、お祭りに行って「あれがしたい」「これがしたい」って結構ずうずうしくいっていました。でもわがままを「いいよ」って受け止めてくれたことが、すごくうれしかった記憶があります。

岩崎:その後も関係は続いていますか。

まこちゃん:私は二つの家庭にうかがったことがあります。一つの家庭とは、たまにご飯に行く関係があります。同じ施設で育った子の中には、養子縁組してもいいと言われるぐらいの深い関係で、お父さん、お母さんみたいな感じだったと聞いたこともあります。

ディスカッションの様子
ディスカッションの様子

無理をしないようにがんばることが長続きのコツ

岩崎:いろいろな関係、方法、ステップがあるってことですね。中島さんもインタビューでは、里親になって最初に子どもを迎え入れた際、がんばりすぎちゃったみたいなお話がありました。最初はお弁当も全部手作りで完璧にされていたそうですね。その時のエピソードをちょっとご紹介いただけますか。

中島:私は里親になる前から子どもに関係する仕事を20年近くしていたので、がんばりすぎないことの大切さは理解していたつもりでした。妻は子どもと深く関わりあうのが里親になってからが初めてでした。妻は毎朝早く起きて子どものために朝ご飯やお弁当を手作りで作ったり、空いている時間があれば子どものためにすべてアクティビティで埋め尽くそうとしていたりしていました。その子どもが帰るころには妻はもうへとへとになっていて、「これじゃあ、里親としてあまり長続きできないかも……」って思ってしまったんです。それから二人で話し合って、あまり無理をしないようにがんばるっていう感じでいます。それからは、朝ごはんを手作りするときもありますが、あらかじめ買ったパンとかおにぎりを出すときもあるし、お弁当に冷凍食品を使ったりするときもあります。こういうスタイルに変わってから、妻のストレスも減って、里親としての寿命もちょっと長くなったと思います。

岩崎:早川さんも、お弁当作り、冷凍食品とか使われますか?

早川:冷凍食品はかろうじて使ってないんですけれども、好き嫌いもありますし、全然キャラ弁とかにはしていません。彩りも茶色いものばっかりみたいな感じになっています。

岩崎
岩崎

ママ友がいった 「実子がいても里親ってやってもいいんだね」

岩崎:無理をしない程度に向き合うことが大切だって話ですね。続けて早川さん・加藤さんにお聞きしたいのですが、保育園のお友だちの親子やご近所の子どもをご自宅に招いているそうですね。一方で、早川さん・加藤さんにインタビューしたとき、里親家庭の日常に関する情報が少なくて、里親になるきっかけがなかなかないという話がありました。私たちも取材していく中で、やっぱり自ら里親の姿を身近な人々に知らせていくことが大切と感じました。早川さん・加藤さん、見ている人たちにも非常に参考になると思いますので、少し説明してくれませんか。

早川:我が家は里子を迎え入れる前から、保育園のママ友が来ていたり、家の前でBBQをしていたりしました。子ども優先ですが、自分たちも楽しみたいので、みんなに家に来てもらってBBQをして、親自身も楽しみながら子育てできればと考えています。
それは里子が来ても同じです。コロナ禍前だったので、すぐBBQをやりました。集まってくれた友だちは、子どもが1人増えたという感じで、自分の子どもとか自分の子どもじゃないとかということは関係なく接してくれました。それこそ子どもを叱ることもあります。できるだけ家庭はオープンにしておけたらなと思っています。

岩崎:ママ友、友だちの反応はどうでしたか。

早川:「実子がいるのに里親をやるっていうのは、目から鱗(うろこ)だった」という風に言われることがありました。でも、その分、「実子がいても里親ってやってもいいんだね」みたいな感じで、結構、興味を持って「いろいろ教えて」って聞いてくるお母さん方は何人かいらっしゃいました。

ディスカッションの様子
ディスカッションの様子

「なんか隠さなきゃいけないことをしているんだ」と思わせてはいけない

岩崎:中島さんは、町内会の清掃活動など地域の活動に、子どもと一緒に参加するそうですね。地域とか、ご近所とか、お友だちに子どもを紹介されているそうですね。

中島:中島家は積極的に里親をしていることを、家族、友だち、知り合い、町内会に伝えています。町内会の餅つきに行くと、軽く説明するだけで「あ、中島さんの子なんだね」みたいな感じで接してもらえるようになりました。
でも、1年間に5~6人の子どもが暮らし、ロン毛の私と外を出歩いていたら、うわさになることもあると思います。でも、うわさをする人や養育家庭をあまり理解してない人のことを心配して秘密にしていたら、逆にうちにくる子どもたちが「あ、なんか隠さなきゃいけないことをしているんだ」っていう形で絶対に伝わってしまうんですよね。さらにその子が、なんか「自分が来たから隠さなきゃいけないことを里親にさせているんだ」「がまんしていたら里親に迷惑はかけなかったかも」っていう発想につながってしまうかもしれません。もちろん中島家の希望としては、世の中から虐待がなくなることですが、その次には、一人でつらい思いをしている子どもが頼れる大人に相談していいんだと思ってくれたらと考えています。
一時保護という制度を使わなきゃいけない子どもが、本当につらい中でも理解してくれる大人がいるんだ、一人でがまんしなくていいんだ、と思えるようになってほしいと思っています。そのためにはまず一時保護という制度があること、保護された子どもを迎え入れている里親家庭があることを多くの人たちに伝えるところから始まるのかなと思っています。

岩崎:中島さんも、早川さん・加藤さんも、里親家庭をしつつも、社会生活を大切にしていて、子どもたちを社会生活と切り離した中で養育するのではないというところが、印象的でした。まこちゃんは感想ありますか。

まこちゃん:児童養護施設でも里親家庭でも共通する問題だと思いますが、やっぱり地域の理解という部分だと思います。私たちがよく言うのは、普通に「え、お母さん誰なの」って聞かれたときに、欧米ではよく「この人がお母さんだよ。でも、私はこの人のお腹からは生まれていないんだけど、でもこの人が自分のママなの」って子どもが堂々と話すということを聞いたときに、日本でもこういう風に「あーそういう家庭もあるよね、そっかー」って会話ができる日が来てほしいと願っています。

中島さん
中島さん
質問1

岩崎:今回は視聴して頂いた方々から多くの質問が寄せられております。一つ目の質問です。埼玉県にお住いの50代男性からです。「子どもに恵まれず、子育ての経験がありません。里親が務まるか不安です。また、妻は仕事を辞めようかと考えています。仕事をしながら里親をするのはやはり大変でしょうか」。こちら加藤さん、お願いします。

保育園もあるし、家事や育児は男性も女性もやるものと考えましょう

加藤:私もその不安はよく理解できます。「仕事を辞めるか」ということに関しては、保育園に預けることもできるので、お二人で働いていても大丈夫です。子育てって結構難しいとは思いますけど、私自身は子どもの成長をサポートしていると考えるようにしています。

岩崎:加藤さんと早川さんは、二人の中で家事や育児について、「これは誰がやる」みたいな分担は一切していないそうですね。少しご説明していただけますか。

加藤:二人ともすべての家事ができるので、役割分担は元々していませんでした。たとえば、自分が好きな家事をやったり、できることをやったりするようにしています。そうすると、なんとなく分担ができてくることもあります。私自身が考えているのは、家事というのは女性がやるものではなくて、男性も女性も両方がやるものだと考えています。

質問2

岩崎:次の質問です。静岡県の50代の女性からの質問です。「養育里親として、実親のことを里子にどのように伝えていますか。また、養育里親の場合、将来別れを体験することになりますが、そのことをどのように考えていますか」。早川さん、よろしくお願いします。

実親さんの環境が整えば送り出してあげたいと思っています

早川:実親に関しては、我が家は里親活動をするうえで実子に対しても里子が来るときに子どもにわかるような言葉で説明しました。里子が来てからも、家族の中では自然に実親さんの話題が出ます。質問があれば私たちがわかる範囲で答えています。
別れについては、養育里親だからといって必ずしも別れがあるという考え方はしていません。18歳まで養育里親の家庭で生活して、その後、社会的養護の枠組みから外れたとしても、まこちゃんのようにつながり続ける場合もあるのかなと思います。ただし、実親の家族に戻っていくときの別れはあると思いますが、私たちとしては子どもにとって実親さんの環境が整えば送り出してあげたいと思って里親をしています。

質問3

岩崎:三つ目の質問です。新潟県に住む40代の女性からの質問です。「里親をしていて困ったこと、悩んだことはありませんか」。これは中島さん、お願いします。

「短期でやっているからがまんすればいいじゃん」では誰も得をしないと思います

中島:1回だけ、一時保護の期間中に子どもに完全に拒絶されたことがあります。本当に何もしゃべらなくなって、感情も表せてくれなくなりました。無視状態になっちゃって。それで児童相談所に相談して、関係を取り戻すように努力しましたが、改善の余地が見られなかったので児童相談所にお願いして、子どもは別のところに移っていきました。
「短期でやっているからがまんすればいいじゃん」って思う人もいるかもしれませんが、逆に短い期間の間に解決できなかったら本当に誰も得しない、お互いただつらいだけの時間になってしまうと思います。そういう時間を経験した後、もしその子がまた虐待とかを受けた際、児童相談所に頼ることが難しくなってしまうと思うんです。
うちにくる子の全員が楽しいって思っているわけではないと思いますが、中島家ではなるべくうちにいたい子を優先しています。

岩崎:まこちゃん、いま、中島さんのお話を聞いて、逆の立場から考えると、どういうところにお互い注意したらいいと思いますか。

まこちゃん:とても難しい問題だと思います。ちょっとおこがましいかもしれないんですけれども、大人から見たら問題行動をするっていうのには、本当に多くのSOSや声が隠れているんですね。やっぱり一番傷つくのは、言い方が悪いかもしれないですが、自分が悪いという自覚があっても、「たらい回しにされた」「やっぱり捨てられた」って捉えてしまう部分があります。無視されても、やっぱり「あなたの居場所はここだよ」とか、「あなたは悪くないよ」とか、その子自身を肯定する声かけをしてほしいですね。
実は私も児童養護施設で3カ月間、恥ずかしながらある職員の方をシカトした過去があります。いまは笑って話せる関係なのですが……。「あ。何かこの子あるんだな」と捉えてもらえて、なるべくたらい回しにならないようにしてもらえたらうれしいかな、と思います。

岩崎:林さん、中島さん、まこちゃんの話を受けて、ちょっとアドバイスをもらえますか。

林さん:正直に感情を表出して、どういうことをしてほしいとか、言語化することは難しいと思います。ケースバイケースかなとは思いますね。それでも、「ここにいてもいいんだよ」というメッセージは必要かと思います。

質問4

岩崎:まこちゃんにも質問が来ています。徳島県の30代の女性からの質問です。「当事者から見て、どのような支援があれば良いと思いますか」。よろしくお願いします。

里親がつらいときは「つらい」といえる環境づくりが必要です

まこちゃん:里親家庭で自分ひとりが育っているんじゃないかと思うと、すごく孤独感につながってしまったり、里親が孤立してしまったりしているのを子どもがすごく感じていて、つらくなることがあります。先程と同じ回答にはなってしまいますが、やっぱり里親自身がつらいときはつらいといえるような環境づくりが必要だと思います。

岩崎:ありがとうございました。


本事業は里親制度広報啓発事業として実施しています(実施主体:朝日新聞社・厚生労働省補助事業)
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