桐谷美玲さんと一緒に考える 家族とは、子育てとは

「全部一人で」「完璧に」と考えて子育てしていたときは苦しいこともあった――。1歳のお子さんを育てている俳優の桐谷美玲さんと一緒に、家族や子育てについて考えてみました。さまざまな事情で親と暮らすことができない子どもは全国に約4万5000人います。10月は「里親月間」。少しでも家庭という環境の中で子どもたちが成長できる機会をつくっていくために、私たちができることは何か――。


家族って自分が安心できる場所、自分の居場所があると思えるところ

――桐谷さんは、「家族」とはどのような存在だと思いますか。

子どものころは、同じ屋根の下で暮らしている人が家族だと思っていました。その後、さまざまな家族のかたちの人たちに出会い、大学の授業でも家族について考える機会がありました。あっ、家族って一つ屋根の下に暮らしている家族だけが家族じゃないんだ、と大人になってから気づかされました。
ニュースキャスターをしていたときには、例えば、特別養子縁組をされている家族やLGBTQの家族でそれぞれの子どもも一緒に生活している様子を取材させてもらう機会がありました。
私自身も子どもを産む経験を経て、家族って自分が安心できる場所、自分の居場所があると思えるところ、安心できる存在が家族っていうんだと考えるようになりました。

――その人が「安心できる場所」があるって大切なことですね。

私自身が家庭を持ったときに何が一番変わったかというと、絶対的な味方が身近にいることです。一人暮らしをしているときは不安を感じることもありましたけど、いまは何があっても近くで見ていてくれる人がいることが安心感につながっています。これが家族なんだとすごく感じています。

「(多様な家族のかたちがあるんだという理解も)昔に比べて進んできたなと思います。それって、教育の現場でも多様性を教え始めたことも影響しているんだと思います」(桐谷美玲さん)
「(多様な家族のかたちがあるんだという理解も)昔に比べて進んできたなと思います。それって、教育の現場でも多様性を教え始めたことも影響しているんだと思います」(桐谷さん)

両親が絶対的な味方になってくれていたので、すごく心強かった

――子どもにとっても安心感は大事ですよね。

いま、保育園に通っていますが、家に帰ってきてものすごく甘えてきます。保育園ではがんばっていて気を張っている状態なんだろうなと感じます。だから、家庭では子どもが親にすべてを委ねられるぐらいの安心感を与えられたらいいなと思っています。

――子どもが等しく安心できる場所がある社会になってほしいですね。

こういうことは私が母親になってからより考えるようになりました。私が子どものころ、母親は専業主婦でした。「ただいま」と言ったら「お帰り」と返してくれました。ご飯を家族一緒に食べるような環境で育ってきました。母親とはいまでも何でも話せる関係です。子どもにとって、自分を受け入れてくれる大人がいるって大切だと思います。

――何でも話せる親子の関係性が、いまの桐谷さんに影響を与えている部分はありますか。

困りごとはすべて母親に相談していましたし、両親が絶対的な味方になってくれていたので、すごく心強かったです。仕事の面でも、育児の面でも、困ったときは助けてくれる存在です。

「家族3人で暮らしてみると、たくさん食べて、笑顔で、のびのびしている姿を見られるのが一番いいんじゃないかなと思うようになりました」(桐谷美玲さん)
「家族3人で暮らしてみると、たくさん食べて、笑顔で、のびのびしている姿を見られるのが一番いいんじゃないかなと思うようになりました」(桐谷さん)

最初は全部一人で完璧にやらないといけないと思っていた

――最近は「ワンオペ育児」という言葉があるように、夫婦のどちらかに育児の負担が寄ってしまっている状況が社会で課題になっています。桐谷さんは周囲に頼れるチームのような存在の家族がいるので心強いですね。

でも、やっぱり一人でがんばらないと、と思っちゃうときもあります。子育てを始めて最初のころは、絶対全部一人でやらないといけないと思って、しかも完璧にやらないといけないと思っていました。そうすると、どんどん自分が苦しくなってしまいました。うまくいかないことがあると、自分がだめなんだと考え込んでしまうこともありました。
そういうときに、夫や実家の両親、夫の両親が「全力でサポートするから」「すぐ来るから遠慮しないで言って」と声をかけてくれました。
誰にも相談できないと、どんどん自分の世界に入り込んでしまいます。どうしたらいいのかわからないけど、やらなきゃいけないと焦ったり、子どものために一生懸命やっているのに子どもが泣きやまないけどどうしたらいいかわからないといったりしたことが本当にあるんです。いまは一人でがんばり過ぎなくていいんだと思えるようになりました。

――子育てで孤立してしまったり、プレッシャーに感じてしまったりする人は少なくないと思います。その結果、子どもを虐待してしまう親もいます。全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数が増え続けていますし、一時保護される子どもも増えています。桐谷さんの世代では、友人や知人との間で、子育てで孤立しないためにどのような工夫をしていますか。

たまたま私の友だちが同時期に出産し、ちょっとずつ月齢が違うので、「いま、こういう状態なんだけどどう思う?」というやり取りを頻繁にやっています。第2子や第3子を子育て中の友だちもいるので、いろいろ聞いています。
またSNSとかインターネットでよく調べますね。同じように悩んでいる人たちが結構いますし、そういうことを育児マンガにしている人もいます。こうしたらうまくいったよと紹介してくれている人もいます。そういうことをまとめたサイトもあります。それをよく見ていますね。

「まだ1歳なので何をやりたいということはないんですけど、いまは好きなことができるように、色々な選択肢を与えることができるように環境を整えてあげたいなと考えています」(桐谷美玲さん)
「まだ1歳なので何をやりたいということはないんですけど、いまは好きなことができるように、色々な選択肢を与えることができるように環境を整えてあげたいなと考えています」(桐谷さん)

SNSやブログでもっと発信できるようになるといい

――里親や乳児院、児童養護施設で養育されている子どもたちが、全国で4万5000人います。一方で私たちは、児童相談所や乳児院、児童養護施設に接する機会があまりにも少ないのが実情です。そのため社会的養護についても具体的なイメージがわかない人が多いのだと思います。子どもの命が失われたような事件や事故のニュース、ドラマですり込まれたイメージがどうしても強くなってしまうのだと思います。より多くの人に実情を知ってもらうためにはどうしたらいいと思いますか。

私も(社会的養護について)詳しく知っているわけではありません。世の中には、(乳児院や児童養護施設、親と暮らすことができない子どもたちのことを)なんとなく話の中で触れてはいけないという空気があるのかなという気がします。もっとオープンに話せる空気に社会が変わったらいいと思います。私が子育てでSNSを見て情報を探しているように、SNSやブログでもっと里親に関係する人たちが発信できるようになるといいと思います。みんな知らないだけで、知ったら興味を持つ人たちは少なくないと思います。

――里親をやっている人たちの日常にもっと触れる機会が多くなると、より多くの人たちが里親に触れるタッチポイントが増えますね。

まず、「里親ってなに?」「児童養護施設ってどういうところ?」というところから知ってもらわないといけないと思います。気軽に話せるような空気になっていけば里親制度も広がっていくと思います。

「里親という言葉は聞いたことがあっても、何となくのイメージにとどまっている人が多いと思います」
「里親という言葉は聞いたことがあっても、何となくのイメージにとどまっている人が多いと思います」

学校で学ぶ機会を作ることが一つの方法

――距離感があって自分事化できない人が多いのかなと思います。その距離感を縮めるため、こんなことをしてはどうかと思うことはありますか。

学校で学ぶ機会を作ることが一つの方法だと思います。子どもたちが家に帰った後、親に「今日、こんなことを勉強したんだ」「こんな人に話を聞いたんだ」という機会が生まれます。小学生のときから、社会的養護に関して学ぶ機会を作っていき、家族で話題になるようにしていけば、その子どもたちが大人になったときに「あっ、里親って制度あったよな。やってみようか」といったことを自然に思いつくことにつながるのだと思います。

――桐谷さんはニュースキャスターもされていました。ニュースに関わる現場にいると、入ってくる情報も多くなりますよね。多くの情報が入ってくると、より深く考えられるようになるということですか。

ニュースの現場に関わって、それまではほとんど社会のことをわかっていなかったんだ、と思いましたね。知れば知るほど、もっと社会と関わらないといけないな、と考えるようになりました。

――知ることから始めないといけなくて、知ってもらった後に里親になることを考えてもらうというようなステップを踏んでいくことがポイントですね。

いまはすごく距離感があると思います。(里親や乳児院、児童養護施設などで暮らす)4万5000人の子どもたちがいることも知らない人の方が多いと思います。私もそうですが、その数字を聞くと、「えっ、そんなにいるんだ」と驚きますよね。距離感を縮めていくことが(里親になる人たちを増やすための)第一歩だと思います。

「もしかしたら、本当に極限状態になっちゃう親たちもいるのかなと思いました」(桐谷美玲さん)
「もしかしたら、本当に極限状態になっちゃう親たちもいるのかなと思いました」(桐谷さん)

子育てって本当に正解がないんですよね

――桐谷さんのような方が、少しでも発信してくれることによって多くの人を振り向かせることができると思います。子育て自体も一人で抱え込まなくていいんだよ、お互い助け合いながら、おせっかいをしながら、子育てをしようよ、と伝えていってもらうことが、社会の空気を変えることにつながると思います。

子育てって本当に正解がないんですよね。私も子どもが生まれてから2カ月ぐらい、かわいいと思えない瞬間があったんですよね。そんな自分をだめだなと思ったんです。いっぱい泣いて、みんなに助けてもらって救われた気持ちになりました。子育てを一人で抱え込まないでと伝えていきたいですね。

「みんな知らないだけで、知ったら興味を持つ人たちは少なくないと思います」(桐谷美玲さん)
「みんな知らないだけで、知ったら興味を持つ人たちは少なくないと思います」(桐谷さん)

勇気をちょっと振り絞って助けを求めることだけでも気持ちが少し楽になる

――最後に、子育てで悩んでいる人たち、里親について少し関心を持っている人たちへメッセージをいただければと思います。

子育てで悩まない人はいないと思います。親でも行政機関でもいいので、周りに頼ることでみんなが幸せになれるのなら頼っていいのだと思います。子育てがうまくいかずに「あー」となってしまうことがあります。自分の夫に話すことでも勇気がいることだと思いますが、勇気をちょっと振り絞って周囲の人たちに助けを求めることだけでも気持ちが少し楽になります。
里親に関心を持っているけど躊躇(ちゅうちょ)している人がいれば、一歩前に進むことが社会で子どもたちを育てていくことにつながると考えてほしいですね。


きりたに・みれい/1989年、千葉県生まれ。近年は映画『リベンジgirl』やCXドラマ『好きな人がいること』、『人は見た目が100パーセント』などに出演。モデルとしても多数の雑誌にて活躍中。2018年に結婚。2020年7月、第1子を出産した。

きりたに・みれい/1989年、千葉県生まれ。近年は映画『リベンジgirl』やCXドラマ『好きな人がいること』、『人は見た目が100パーセント』などに出演。モデルとしても多数の雑誌にて活躍中。2018年に結婚。2020年7月、第1子を出産した。

本事業は里親制度広報啓発事業として実施しています(実施主体:朝日新聞社・厚生労働省補助事業)
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