ふわふわの食感と優しい甘みで日本でも人気のスイーツとなった台湾カステラ。その味の魅力と歴史を知りたいと、台湾北部の老舗を訪ねたところ、脱サラして家業を継いだ兄弟の努力と、日本との接点を知ることになりました。
この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「地球を食べる」で2021年6月24日に配信された記事を再構成してお届けしています。本編記事はこちらから
台湾カステラのポイント
- ふわふわ・ぷるぷるの食感で人気となり、日本に専門店も。本場の台湾では「懐かしい味のケーキ」といった意味で、手頃な価格で庶民に愛されるスイーツ
- 台湾北部の老舗は、脱サラした兄弟の職人が経営している。材料に水やバターを使っていないが、工夫を重ねて「飲み物と一緒でなくても食べられる」というきめ細かさとなめらかさを実現した
- 従来の生地は粗く舌触りが悪かったため、2人は、日本統治時代に伝わった日本風のカステラを参考に改良を重ねた。口コミでおいしさが伝わり、台湾全土で1日1千~2千個を売る人気店になった
もっと知りたい
1, 本場の台湾カステラ
台湾では「古早味蛋糕」と呼ばれ、「懐かしい味のケーキ」といった意味を持つ。各地のケーキ屋や夜市の屋台などで売られており、価格も数十台湾ドルで財布にも優しい庶民のスイーツ。近年はタピオカミルクティーなどとともに、日本でもぷるぷるの食感が人気を呼び、専門店も続々とオープンしている
2, 老舗の味の秘密
台湾北部の老舗「新美珍」は、日本でブームとなる前に独自の味を生み出した人気店。まぜもののないオリジナルのほか、チョコや抹茶味などもあり、直径18センチ・高さ8センチのホール型を、台湾全土で1日1千~2千個販売している。脱サラした兄弟が家業を継ぎ、舌触りがいま一つだった従来の台湾カステラの改良に着手。日本の統治時代に伝わったカステラを参考に製法や材料を吟味。水やバターを使っていないのに、のみ込む際にものどにひっかからないきめの細かい、なめらかな台湾カステラを生み出した
3, 日本の老舗にも影響
長崎カステラの地元・長崎県の老舗菓子店「菓秀苑 森長」が、台湾カステラの味と食感に魅了され、自社での商品化に着手。台湾の知人からレシピを教えてもらって研究し、オーブンでミスを使って蒸し焼きにすることで、本場の「ぷるぷる感」を出したという
記者の食レポ
新美珍でオーブンから焼きたてが出てくると、辺りに香ばしく、かすかに甘いにおいが漂いました。口に含むと、とろけながら、ほのかな甘みが広がりました。新美珍のこの味が、次の世代にも引き継がれていくことを願います。