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キリンの首はなぜ長い 高いところのエサを取るため……だけではない理由が見つかった

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An artistic construction by Wang Yu and Guo Xaiocong of intermale competitions of girraffoids, including Discokeryx xiezhi, foreground, and the present-day modern giraffe. A bizarre prehistoric giraffe relative with helmet-like headgear and bulky neck vertebrae reveals that head-butting, in addition to foraging, may have driven early neck evolution. (Wang Yu and Guo Xaiocong via The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY GIRAFFE NECKS BY JACK TAMISIEA FOR JUNE 2, 2022. ALL OTHER USE PROHIBITED.
前方はディスコケリクス・シエジー、後方はキリン(想像図)=Wang Yu and Guo Xaiocong via The New York Times/©2022 The New York Times

チャールズ・ダーウィンの時代から、キリンの長い首は進化の例として教科書にとりあげられてきた。その進化論によれば、キリンの祖先はエサを求め競争するにつれて首が長くなり、高いところの葉に届くようになって、背丈の低い動物より優位に立った。

ところが、先史時代の奇怪なキリンの仲間は、採餌に加え、格闘が首の初期進化を後押しした可能性がある事実を浮かび上がらせた。6月2日出版の学術誌「Science(サイエンス)」に掲載された研究論文によると、古生物学者のチームは、キリンの祖先「Discokeryx xiezhi(ディスコケリクス・シエジー)」にはヘルメットのようなヘッドギアと分厚い頚椎(けいつい)骨があったと記述した。ディスコケリクスは、頭蓋骨への衝撃を吸収したり、衝撃を与えたりすることで、求愛やライバルの撃退を果たすことができるよう適応したという。

「これは、キリンの進化が首を伸ばすことだけで起こったのではないことを示している」。アメリカ自然史博物館の古生物学者ジン・メンは言う。今回の新しい研究論文の共同執筆者だ。「ディスコケリクスは、まったく異なる方向に進んだ」

メンと同僚は、中国北西部ジュンガル盆地で地表に露出した岩にあった化石を発見した。約1700万年前、この地域には草原や森が広がっており、シャベル状の牙を持つゾウや短角のサイ、がっしりした体格のベアドッグなど大型哺乳類が生息する土地だった。

メンは1996年に、骨などがあるこの地層を調べていたとき、頭蓋骨の塊に出くわした。それが哺乳動物の頭蓋骨であることはわかったが、その骨の上部はアイロンをかけたように平べったかった。その他にこの動物の骨はなく、メンと同僚はその頭蓋骨を「奇怪な獣」と呼んだ。

近年、ジュンガル盆地では歯やアゴの破片など、多くの化石化した骨が出土し始めており、この獣の特定に役立っている。メンによると、歯や内耳の構造は今日のキリンを彷彿(ほうふつ)させる。ディスコケリクスは、キリンを生み出した有蹄哺乳動物の祖先集団である最初期のキリン科動物の一つだったとメンらは判定した。ディスコケリクスはオカピに似ていたと思われる。オカピは、今日のキリンが生息する森にいる親類だ。

ディスコケリクスの首は長かったが、今日のキリンのようなものではなく、動物の解剖学的な特徴が現代のカウンターパート(対応する動物)とどう関連しているかはまだ特定できていない。それでも、ディスコケリクスはその奇怪な頭蓋骨によって区別がつく。中国科学院の古生物学者で今回の研究論文の共同執筆者シーチー・ワンによると、頭部の受け皿のような骨はおそらくケラチンで覆われていた。ケラチンが増えるにつれ、古い層が押し出され、厚いドームを形成する。これがディスコケリクスの頭頂を、フィット感が悪い自転車用ヘルメットをかぶったような見かけにしていたのだ。

A reconstruction provided by Wang et al., Science, showing the skull and vertebrae of a Discokeryx xiezhi. A bizarre prehistoric giraffe relative with helmet-like headgear and bulky neck vertebrae reveals that head-butting, in addition to foraging, may have driven early neck evolution. (Wang et al., Science via The New York Times) -- NO SALES; FOR EDITORIAL USE ONLY WITH NYT STORY GIRAFFE NECKS BY JACK TAMISIEA FOR JUNE 2, 2022. ALL OTHER USE PROHIBITED.
キリンの祖先とみられる「ディスコケリクス・シエジー」の頭蓋骨と頚椎骨の復元図。学術誌「サイエンス」に掲載された=Wang et al., Science via The New York Times/©2022 The New York Times

この骨でできた帽子は動物の首に密集した椎骨に固定されていた。頭を突き合わせる時には、椎骨は頭のドームに垂直に立った支柱に固定され、文字通り破城槌(訳注=はじょうつい。古代に城攻めに用いた槌)を形成する。

頭突きは古くから広く行われてきた紛争解決の一手段だ。「Pachycephalosaurus(パキケファロサウルス)」のような恐竜は頑丈な頭蓋骨を持っていたし、オオツノヒツジ、カメレオン、さらにはクジラでさえ頭で突き合うことがよくある。

しかし、研究者たちはディスコケリクスが比類なき頭突き戦闘能力の持ち主だったことを示唆した。研究者のチームは、ディスコケリクスの頭蓋骨と首を3次元でスキャンして再構築してみた。そして、ジャコウウシやアルガリ・オオツノヒツジ、ヒマラヤ・ブルーシープといった現代の頭突き使いと比べてみた。コンピューターモデルを使い、ディスコケリクスの頭蓋骨は現代の頭突き使いの動物の頭蓋骨より、しっかりと衝撃を吸収し、脳のクッション性が高かったとの推論を導いた。この機能がなければ、死滅していた可能性がある。研究チームは、ディスコケリクス同士の頭突きは、時速25マイル(約40キロ)のスピードで突き合うジャコウウシの2倍の衝撃があったものと推定している。

研究者たちによると、一連の連動する首の関節は、生存しているか死滅したかを問わず、他の脊椎動物にはまだ発見されていない。したがって、これまでのところ、ディスコケリクスが最適化された頭突き装置の持ち主ということになる。「ディスコケリクスは、頭突きを戦闘ツールに使う究極の見本だ」とメンは言っている。

新しい化石の生物力学は興味深いが、頭を突き合わせること自体は特に驚くべきことではない、とニコス・ソロウニアスは指摘する。キリンの進化を研究しているニューヨーク工科大学の古生物学者だが、今回の研究には関与していない。現代のキリンを含む今日の事実上すべての有蹄哺乳動物は格闘に頭部を使う。しかし、彼らの激しい格闘スタイルは、ディスコケリクスの戦い方とは異なる。キリンは正面からではなく、「頭と首を横向きに打ちつけ」、骨のような角状の「ossicone(オシコーン)」で互いに打ち合うとソロウニアスは言う。

ディスコケリクスのような初期のキリンの仲間の一部は、採餌より格闘に適した体つきをしていたようだが、それでも彼らには特殊な食習慣があった。ディスコケリクスは樹木のてっぺんには届かなかったが、その歯の化学分析で、キリンの祖先である彼らは、独特の生態学的地位を占めていたことが明らかになった。

ワンは、先祖代々からのキリンの好戦性が最終的に高い場所の採餌につながったと考えている。

「オスは首を使って激しい格闘を繰り返して首がどんどん長くなり、ついにはすごく高いところの葉っぱに届くようになったのだ」。そう彼は言っている。(抄訳)

(Jack Tamisiea)©2022 The New York Times

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