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有名テック企業が次々進出のテキサス州 中絶禁止法で「次のシリコンバレー」に暗雲か

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米テキサス州オースティンで10月2日、テキサス州がほぼ全面的に中絶手術を禁止したことに抗議する人たち=ロイター

テキサス州はアメリカの将来である

Texas Is the Future of America

2021年105日付 ニューヨーク・タイムズ紙

テキサスといえば、カウボーイハットをかぶった白人男性が広大な土地を開拓しているというイメージがあるかもしれない。しかし、今の現実はそれとは程遠い。

第一に、テキサス州民のうち白人の非ヒスパニック系は40%未満しかいない。さらに、テキサス州の人口は急速に拡大しており、移住してくる人々のほとんどは白人ではない。2010年以降、400万人がテキサス州に移住したが、その95%以上がpeople of color(有色人種:黒人、アジア人、ヒスパニック系)であった。(そういえば、最近テキサスに引っ越してきた友人が1人いるが、彼も黒人だ)。

テキサス州の人口の約70%はダラス・フォートワース、ヒューストン、オースティン、サンアントニオのいずれかのmetropolitan area(都市圏)出身者で、ほとんどの人が都市部に住んでいる。過去10年間のテキサス州の人口増加のほとんどは都市部で起きている。都市圏の人口増加率が18%であるのに対し、農村部では1%にも満たない。

人口動態の変化だけの話ではない。経済や産業構造の変化も著しい。テキサス州は、もはやbig oil(大手石油会社)や牧畜だけではなく、全米で最も多様な経済の一つとなっている。テキサス州のクリエーティブクラス(専門家、技術者、科学者、教育者、文化人など)は、2010年から約30%増加しているという。

テキサス州はここ数年、ハイテク企業にとって税金が低いhaven(避難所)として、ベンチャー企業も、オラクルやヒューレット・パッカード・エンタープライズ、さらにはテスラなどの大手ハイテク企業も誘致してきた。また、グーグルやフェイスブック、アマゾン、マイクロソフト、アップルなどの大手企業も、倉庫やデータセンター、生産施設を新設などして、同州での存在感を高めている。最近では、多くの日本企業がテキサス州に本社を置いたり、支店を開設したりしている。これは、他のハイテク企業がテキサス州に進出したこと、あるいはトヨタ自動車が北米本社をテキサス州に移転したことが背景となっているのだろう。 

■おびえる保守派の政治家たち

しかし、保守派の議員たちは、テキサス州の人口動態、経済、都市の変化を考えて、将来の不安におびえているという。それどころか、成長エンジンの歯車に砂を投げ入れかねないほど恐れているというのだ。グレッグ・アボット知事と共和党は、トップダウンで後ろ向きの政策を採用している。それらは、多くのテキサス州の市民を排除し、新しいステークホルダーの多くの価値観にruns against the grain(反している)。知事らはgerrymandering(ある政党に有利な選挙区の線引き)やvoter suppression(投票抑制・弾圧)、絶え間ないculture wars(文化戦争)の組み合わせによって、それを補強しようとしていると指摘されている。

例えば、91日に施行された新しい州法には、21歳以上のテキサス州民なら原則として訓練や免許なしに拳銃を携帯できるようにすること、社会科の教師が授業で時事問題やsystemic racism(体系的な人種差別)について議論することを制限する法律などがある。そして最も物議を醸したのは、妊娠6週目以降の中絶を禁止することで、市民をbounty hunters(賞金稼ぎ)に仕立て上げ、医師や診療所、看護師、さらには中絶する女性を診療所に連れて行った人までも訴えられるようにする法律だった。

もう一つの最近の問題は、新型コロナウイルスの拡大に対するテキサス州の取り組みである。アボット知事は、拡大の抑制に役立つ可能性のある対策を推進するのではなく、mask mandates(マスクの義務化)、コロナワクチンの義務化、ワクチンパスポートの義務化を禁止した。

テキサス大学オースティン校のスティーブン・ペディゴ教授は、テキサス州が成長を続ける限り、政治家たちは自分たちのアプローチに何のデメリットもないと考えていると指摘する。「しかし、私をはじめとする多くのテキサス州民は、彼らがfatal miscalculation(致命的な誤算)を犯していると感じている。テキサスに引き寄せられてきた人々や企業の多くは、果てしない文化闘争を求める保守的な巡礼者ではない。彼らの多くは、G.O.P.(共和党)のdivisive(分裂的な)政策にappalled by(驚愕している)」。

ここで思い出すのが、テキサス州の新聞に掲載された、テキサスの矛盾したメッセージを強調した最近の風刺漫画である。この漫画は、高速道路の脇にある「ようこそテキサスへ」という看板を描いた。左側には、カウボーイハットをかぶった笑顔の男性とともに太陽の光、虹、チョウチョウが描かれ、「Come for the Business-Friendly Environment(ビジネスに適した環境を求めて来る)」というメッセージが書かれ、右側には威嚇するようなお化けが描かれて、「STAY FOR THE ENDLESS CULTURE WAR(永遠に続く文化戦争のためにとどまる)」と書かれている。 

■妊娠中絶を厳しく制限する新法律への反発

テキサス州の新しい人工妊娠中絶法は、緊急事態以外のいかなる理由であっても、心拍が検出された後の人工妊娠中絶を禁止している。この法律は、多くの女性が妊娠にまだ気づかない6週間という時点以降の中絶をeffectively(事実上)禁止している。近親相姦やレイプによる妊娠も例外ではない。また、この法律は中絶を行った人や中絶を手助けした人(病院まで運んだ人を含めて)を訴えることを奨励しており、最低1万ドルのbounty(報奨金)が支払われる。

ライドシェア企業のウーバーとリフトは、この新法に対して直ちに強い言動で対応し、自社のドライバーを保護するとともに、この公共政策に異議を唱えた。有名なウェブホスティング会社であるゴーダディーは、新法を支持するために作られた中絶追跡サイトのサービスを拒否した。

テキサス州にとってさらにworrisome(悩ましい)のは、highly sought-after(誘致しようとしている地域が多い)ハイテク企業も強い反応を示したことだ。クエスチョンプロ社は、州外での妊娠中絶治療にかかる費用を会社が負担すると従業員に伝えた。セールスフォース社は、テキサス州外への移転を希望する従業員は支援すると従業員に伝えたそうだ。出会い系アプリを運営するマッチグループとバンブルは、この法律の影響を受ける人々のために基金を設立すると発表した。また、アトラッシアン社、イェルプ社、ゼンデスク社など50社が、「中絶を含む包括的なreproductive care(産科医療)へのアクセスを制限することは、従業員や顧客の健康、自立、経済的安定を脅かす」との声明に署名した。 

他の企業も、テキサス州でのテック業界の労働者の維持や、新規労働者、特に女性や若年層、の採用が困難になることに対して懸念の声をあげている。オースティンを拠点とするスタートアップ・アクセラレーター「キャピトル・ファクトリー」の創設者であるジョシュ・ベアは、「このようなことはやめなければならない。ビジネスにとっても、私たちが伝えようとしているイメージにとってもterrible(ひどく良くない)ことになる。これでは、テキサス州に移り住みたいと思う人が増えるはずがない」と叫んだ。

専門家は、新法が労働者の移動に大規模な変化をもたらすかどうかを判断するのは時期尚早だとしながらも、右派的な政策によって、左派寄りのテック業界の労働者が同州への移住を検討するのがpause(一服する)可能性があると指摘する。最近同州に移住したテック業界の労働者の中には、中絶法のせいで他の場所への移住を検討している人もいるそうだ。

一方、アメリカの他の地域では、テキサス州が自ら招いた苦境にチャンスを見いだしている。シカゴの官民一体の経済開発機関であるワールドビジネス・シカゴは、9月初旬のダラス・モーニング・ニュース紙に全面広告を掲載し、テキサス州で最近施行された法律に違和感を覚える企業にシカゴへの移転を呼びかけた。この広告では、シカゴの利点をアピールした後、テキサス州の新たな弱点と思われる部分にhones in on(焦点を合わせて)、「シカゴでは、すべての人の投票権、reproductive rights(生殖の権利)の保護、COVID-19と戦うための科学を信じている」とアピールした。それを魅力的に感じる企業がどれほど出るかを注視したい。


テキサス州はアメリカの将来である

Texas Is the Future of America

2021年10月5日付 ニューヨーク・タイムズ紙


666の新しいテキサス州法が9月1日に施行されます。あなたに影響をあたえ得る法律をいくつか紹介します。

666 new Texas laws go into effect Sept. 1. Here are some that might affect you.

2021年8月31日付 テキサス・トリビューン紙


シカゴ市がダラス・モーニング・ニュースに広告を掲載し、テキサス州の中絶法と投票法の制定後、企業を誘致する

Chicago takes out Dallas Morning News ad to bait businesses after new Texas abortion, voting laws

2021年9月10日付 ダラス・モーニング・ニュース紙


テキサス州の妊娠中絶法は、ある種の賞金稼ぎを生み出す。その仕組みを紹介する。

The Texas Abortion Law Creates a Kind of Bounty Hunter. Here’s How It Works.

2021年9月10日付 ニューヨーク・タイムズ紙


テキサス州は米国のテック産業の中心地になることを目指していたが、州の人工妊娠中絶法により、労働者は同州への移転を考え直している

Texas wanted to be the tech haven of the U.S. Its new abortion bill and other measures are causing workers to rethink their moves.

2021年9月13日付 ワシントン・ポスト紙


テキサス州の人工妊娠中絶法、一部の企業から反発を受ける

Texas Abortion Law Faces Pushback From Some Companies

2021年9月21日付 ウォール・ストリート・ジャーナル紙


テキサス州のスタートアップ企業は、大企業の支援を受けずに、独自の中絶禁止の戦いをしている

Texas startups mount abortion ban fight on their own, without backing from big tech

2021年9月21日付 ダラス・モーニング・ニュース紙


政治的変化を起こすことを恐れないビジネスセクター

Business sector not afraid to create political change

2021年9月30日付 リノ・ガゼット・ジャーナル紙


企業に優しい?

Business Friendly?

2021年10月5日付 リフォーム・オースティン・ニュース