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「あのにぎわい、もう一度」ソウルの韓流ロケ地にもコロナの影

At the Scene 現場を旅する
コロナ禍前は韓流ファンでにぎわっていた梨泰院駅周辺

韓国のテレビドラマや映画が世界中の人たちをひきつけている。ソウルの街を歩けば、いくつもの人気作のロケ地に出合える。

テレビドラマ「梨泰院クラス」は、父親を死に追いやった財閥一族に主人公のセロイがリベンジする痛快な物語だ。地下鉄6号線の緑莎坪駅(①)を降りてすぐの陸橋は彼が物思いにふけるシーンでよく使われた。

2月に訪れると、北側にあるソウルの名所、南山と「Nソウルタワー」を背景に記念撮影をする観光客がたくさんいた。インドネシアから来た留学生の女性は「ドラマは私たちの国でも大人気。写真をSNSにあげて友達に教えたい」と話した。近くでは主人公たちが経営していた居酒屋を模した「タンバム」(②)が開いていた。

緑莎坪駅近くの陸橋の北側にはソウルの名所、南山と「Nソウルタワー」が見える

ただ、勢いを増す韓流も新型コロナの影響は避けられない。10分ほど歩いた梨泰院駅(③)周辺には国際色豊かな飲食店やバーが立ち並ぶ一方、空き店舗も目立つ。焼き鳥屋のスタッフ、イ・サンユンさん(40)によると観光客は最盛期の2割ほどに減ったという。

「このまちの魅力はいろんな国の人や文化が交じり合うところ。ドラマの中のようなにぎわう光景をもう一度見たい」

今年の米アカデミー賞で韓国人家族を描いた米映画「ミナリ」が作品賞を含む6部門にノミネートされ、助演女優賞を受賞したが、昨年、「パラサイト 半地下の家族」が4部門を制覇したのも記憶に新しい。朝鮮王朝時代の王宮「景福宮」から北西へ約1キロのところにあるチャハムン トンネル(④)の階段は、主人公たち一家が雨の中で下っていく場面で使われた。作品の中で階段は「格差」を象徴する重要な役割を果たした。

「パラサイト 半地下の家族」のロケ地となったチャハムントンネルの階段(奥)。映画上映後は撮影スポットになっている

そしてもう一つ、映画で何度も描かれたのが「半地下」だ。ソウル駅から西に600メートルほど歩けば、至る所に道路と同じ高さに窓枠がついた半地下住宅が並ぶ。

ソウルの各所にある半地下の住居。道路と同じ位置に窓があり、雨水が流れ込むこともある

北朝鮮と休戦状態の韓国では、かつて防空施設として地下室の建設が進められた。その後の経済成長による住宅不足を解消するため誕生したのが半地下だ。ほこりや雨水が室内に入りやすく、低所得者層が暮らしている場合が多い。

この集落にある「テジスーパー」(⑤)は映画で浪人生の主人公らが焼酎を酌み交わした場所だ。夫と2人で切り盛りしているキム・ギョンスンさん(75)によると、アカデミー賞受賞の直後は世界中から記者や観光客が押しかけたという。

「パラサイト 半地下の家族」のロケ地となった「テジスーパー」。右奥に見える階段も撮影で使われた

「ダークツーリズム? 確かに裕福な場所ではないけど、実際に見に来てもらえた時の方が、にぎやかでよかったよ」

韓流のまちをリアルでも楽しめる日が早く戻ることを願った。

■BTSのモチーフ人形も

ドラマや映画と並び世界中で注目されているK―POP。流行の発信地で歌手の所属事務所も数多くある江南のギャラリア百貨店近くにはその名も「Kスターロード」(⑥)という通りがある。少女時代やKARA、BTSといったアイドルグループをモチーフにした人形が置かれ、撮影スポットになっている。

■ミュージカルも人気

歌と演技にはまったファンの中でじわじわと人気が広がっているのがミュージカルだ。芸術街である大学路には100超の劇場があると言われている。映画「パラサイト」の家政婦役、イ・ジョンウンさんやドラマ「愛の不時着」の北朝鮮兵士役、ヤン・ギョンウォンさんも舞台出身。オンラインで見られる作品もある。

■欧米風の韓食 辛さ控えめ

外国人に人気のチゲ(右)とユッケ(左)

梨泰院に外国人観光客でにぎわう一風変わった韓国料理店「コンギ」がある。韓流の取材でお世話になった東亜日報のイム・ヒユン記者が教えてくれた。

まず口にしたのが「tokki」と書かれた焼酎。韓国語で「ウサギ」を意味する。店員に聞くと伝統的な焼酎にほれ込んだ米国人がニューヨークで作ったものだという。度数は20度以上と一般的な焼酎よりやや高めだが、すっきりとして飲みやすい。

この店ではユッケはチーズと酢のきいた特製ソースでいただく。しっかりとしたかみ応えで、甘さのある牛肉と相性抜群。チゲは外国人を意識してか、辛さは控えめだがこくがあって、グラスもすすむ。

米アカデミー賞を受賞した作品のタイトルと同じ名前の「ミナリ」(セリ)はチヂミにしていただいた。香ばしさと、しゃきしゃき感がたまらない。韓流が海外で人気なのはエンタメだけではないと実感した。(清水大輔)