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世界への「近道」は韓国にある。海超えてデビューする日本の若者たち

World Now
T1419=所属事務所提供

■K-POPにはまり、「韓国で成功したい」

カラフルな髪を振り乱し、激しく跳ね上がり、多彩な音域を響かせる。1月にオンラインデビューを果たした男性アイドルグループ「T1419」。アイラインを引いた目元からは、スマホの画面越しでもギラギラとしたものを感じた。

「アンニョンハセヨー」。ソウル・江南にあるスタジオを訪ねると、おそろいのスニーカーにパーカを着た9人が整列して迎えてくれた。

T1419のメンバー=2021年1月26日、ソウル、清水大輔撮影

韓国人の5人と日本人の4人が初めて出会ったのは2年前。9人は14歳から19歳だった。デビュー曲「ASURABALBALTA」(アスラバルバルタ)のミュージックビデオは日韓同時に両言語で配信。所属事務所によると、LINEでの生中継には、日本からだけで25万人のアクセスがあったという。

日本出身で最年少のキオは、韓国行きを決めた理由について、こう語る。「中学1年の時、(13人組の男性アイドル)SEVENTEEN先輩の姿にあこがれ、K-POPアーティストになる夢をみた。ファンを元気にできる、そして世界で活躍できる人になりたいと思った」。中学生で世界を目指す? しかも韓国から? その問いに「う~ん。K-POPにはまっていたので。韓国で成功したいと思っていた」。J-POPや洋楽も聞いていた。しかし、ユーチューブで繰り返し流れるK-POPの「一つにそろったダンスに衝撃を受けた」(カイリ)。

10年ほど前、日本は第2次韓流ブームにわいていた。紅白歌合戦には少女時代などが出演していた。1人で外国に行くことに不安もあったが、第1次ブームからはまっていた親が最後は理解を示してくれた。

■最初から目標は世界での活躍

芸能事務所などが集まるソウル・江南。ここはエンタメだけでなく「美」の聖地でもある。交差点の角には美容整形や歯科が集まったビルも立つ=2021年2月6日午後、清水大輔撮影

東京、大阪でのオーディションには5000人ほどの応募者がいた。勝ち抜いた4人はあいさつの言葉程度しか韓国語を知らないまま練習生になった。オンラインで教育を受けるなどした後、韓国人の5人と共に歌やダンス、外国語の特訓に明け暮れた。休みの日には12時間練習したこともあった。「デビュー前からグローバルグループを目指してきた」(事務所代表のイ・ヒョンジン)ため、日韓や英語のほか中国語、スペイン語の鍛錬が今も続く。

日本ではアイドルの成長をファンが見守る側面もあるが、韓国では「完成」した形でのデビューをめざし、歌やダンスを長期間、徹底的に鍛える。T1419はデビューまでの特訓が2年で済んだが、7年近くかかる場合もある。ステージに上がれず終わるケースもある。人気のオーディション番組には数万人が応募するが、「やらせ」疑惑などが報じられることも珍しくない。「きれいごとだけでは語れない世界」(芸能関係者)だ。

T1419=所属事務所提供

韓国の練習生は月に1度、特訓の成果を「月末評価」の場で問われるのが一般的だ。9人とも「緊張した」という。しかし、それが終わればほんのつかの間、ダイエットを忘れられる。韓国人のオンが「みんなでチキンを食べに行ったよね」と言ったとき、「そう、そう」と思い出し笑いがおきた。彼らが一瞬だけ見せた、あどけなさの残る笑みから、逆に厳しい現実が透けて見えた。

デビュー曲のタイトルには、望んだ通りになる呪文のような意味がある。リーダーの韓国人のノアは力を込める。「韓国から世界中のファンに会いに行く。それが僕たちの夢だ」