コロナウイルスの感染が世界中に広まっている今、人々の生活が大きく変化しています。
人から人へうつる病気なので、他人と接する機会を減らすのが一番有効な予防策とされています。
人と接する時は距離を置く、マスクやメガネでバリアを作るなどの対策が提案されています。
各国は街を完全にロックダウンして、外出を禁止しています。
禁止令を出さなかった国でも、外出自粛を要請するなど、ソーシャルディスタンスを徹底するように呼びかけています。
しかし人間は社会的動物と言われるように、群れて暮らすのが普通です。
孤独に耐えられる人と耐えられない人がいます。
さらに、人間は動き回る動物で、歩くことも、走ることも健康を維持するのに必要です。
行動が制限させられると、心身ともにダメージを受けます。
仕事に行けない、商売が出来ない方は経済的に苦しくなり、精神的な負担がさらに大きくなります。
どんな国でも、ウイルスとの戦いと国民の生活とのバランスで判断に苦しんでいます。
隔離生活に対応できるために、何が必要でしょうか。
対応できる人はどんな人たちですか。
暗い時に光を求められる人はどんな人なのでしょうか。
それは想像力がある人だと思います。
周りが真っ暗でも、見えない光が頭の中で想像できる人です。
真っ暗の夜空の向こうには、見えないが、数え切れないほど星たちが輝いていることを、頭と心の中で感じられる人は、希望を失うことはないです。
ですから、逆境に強い子供を育てるためのポイントは想像力です。
目の前の現実にめげない子にするためには、小さい時から豊かな想像力を育むことが大事です。
「この試合で打てなかったけど、一生懸命練習すれば、近いうちに打てる自分がいるよ」と想像させます。
その未来像に向かって、ステップを踏んでいけるように励ますのです。
光は自分の心の中にあることを子供に教えます。
その光には風にも雨にも消されることはないのです。
その光を見失わない限り、希望はあるのです。
さらに、希望を失わないためには、絶望は存在しないことを教えます。
人間は必ず次のステップを生み出せる。
今までの自分にこだわらない、違う可能性を見つけることができるのです。
例えば、癌になった人が「この体験を生かして、他の癌患者の支援を命のある限り続ける」と決意すると、死を待つのではなく、目標ができ、人のために自分は必要な人間であると思えることで、残りの人生を有意義に生きていけるのです。
■コロナの中、カリフォルニアでの息子たちの毎日
コロナウイルスの自粛対策は「動」を制する考え方です。
移動しない、人に会わない、家にいるように…。
これは若い方にとって、辛い制限です。
私の息子たちが住むカリフォルニアではすでに1ヶ月以上外出禁止令が出されています。
3人は同じ地域に住んでいますが、お互いに会うこともできません。
食糧、医薬品の買い出しと運動することだけが許されています。
最近は状況が少し良くなって、先週末、公園、ビーチなどの施設が開放になりました。
しかし、家の中に閉じ込められた息子たちのことが心配でした。
「大丈夫ですか。暇で退屈ではありませんか?」と息子たちに聞いたら、意外な返事が返って来ました。
長男は「ものすごく忙しいですよ。毎日が戦いです」と言います。
長男の会社はテレワークで仕事を続けています。顧客離れが一番の心配で、経営者の彼にとって、この時期は試練の連続だったそうです。
顧客のサービスをランクアップし、オンラインの無料授業を開き、何千人も参加してもらいました。「むしろこの時期だからこそ、サービスを向上して、お客様の不安を和らげる努力をしている」というのです。
それにより、解約しそうな顧客をひきとめることができたそうです。
資金繰りを心配していましたが、国がビジネスを支援する補助金を出すと聞いて、真っ先に申し込んで、その補助金が先月届きました。
「これで、乗り越えられる」と一安心したようです。
彼は「どんな結果になろうと、自分がベストを尽くしたことが一番大事なのです」と言います。「きっと、この時期が過ぎたら、もっと強い自分になっている」というのです。
より強い自分を想像しているからこそ、今の辛さに耐えられるのですね。
自分の子なのに、大したものだと尊敬しました。
しかも、仕事ばかりではなく、長男は新しい趣味を見つけたのです。
元々風景写真を撮るのが趣味ですが、
家から出られないので、窓からパティオを眺めるだけになりました。
彼のパティオには野菜やハーブがいっぱいあり、盆栽も育てています。
自動的に水やりをする仕組みがあって、鳥たちがよく、その水を飲みに訪れます。
普段は見ているだけですが、外出禁止になって、彼は鳥の写真を撮るようになりました。
「ハミングバードがよく来るのです」と、写真におさめるのはすごく難しい小さな鳥の写真を送ってくれました。
その軽やかな鳥の動き、光あふれる写真を見て、本当に感動しました。
逆境に立ち向かいながらも楽しむ長男の意思をその写真で感じました。
次男は音のエンジニア。研究するのが仕事です。
自宅待機になると聞いて、彼は自分の家で研究をし続ける決心をして、
会社の研究室から機材を家に運びました。
そこで、彼は毎日テレワークをしながら、研究を続けています。
「遅れた同僚は何もできない状態です。本当にラッキーでした」と彼は言います。
それも先を読む想像力があったからこその行動ですね。
幸い、彼の就職先の会社は好調で、仕事を失う危険はないそうです。
元々ひとりでいるのが好きな彼は家にいることは全く苦ではないと言います。
「むしろ周りの友達に自由な時間が増えて、頻繁に電話してくるので、人間関係の密度が高くなったと思います」というのです。
音楽が大好きな彼はバンドをやっています。
バンドの練習はできなくなりました。
でも、普段は仕事が忙しくてできなかった創作活動がやれるようになったそうです。
「時間があるので、集中して曲が作れます。外出禁止の後に、みんなで新しい曲を演奏するのが楽しみです」
彼はそれなりにこの時期を有意義に使っているようです。
三男は大学院を卒業して、希望する会社に就職したが、いまは仕事を始めることができません。
彼の仕事はAI関係ですが、会社の商品の知識をより理解するために、大学の無料講座を受けています。
「授業はあまり役立たないのです。つまりこの分野の研究はまだ足りないんですね。これから自分がするしかないので、楽しみです」と話します。
一日中家にいるので、ルームメイトと一緒に料理をたくさん作っています。
パン、パイ、ピザといろいろなものに挑戦しています。
美味しそうな写真を送ってくれます。
さらに彼がいま一生懸命勉強しているのは、投資の方法です。
息子たちが大学を卒業するにあたって、彼らが生まれてからお年玉などで貯金してきたお金を渡すのが我が家の決まりです。
お兄ちゃんたちも貰いました。
大金ではないですが、お兄ちゃんたちは自分なりに投資をして、金額がかなり増えているそうです。
三男が「僕も見習いたい」と挑戦し始めているのです。
投資をすることは社会の動きや、世界の仕組みを理解することに繋がります。
大人になる一つのステップを踏み出すことになりました。
「仕事が始まったら、投資の勉強をする暇がないので、この時間があって、ラッキーでした」と言います。
「よく落ち込まないね」と息子たちをほめたら、
「『変えられるものはより良くして変えて行く、変えられないものは受け止めて対応する』とママがよく言っていたじゃないですか?」と逆に、私が彼らに教えた言葉を返してきました。
■未来に光を見る力
コロナウイルスの危機が始まって以来、息子たちは毎日のように連絡をくれるようになりました。
電話で1時間以上話すこともあります。
64歳の私のことが心配のようです。
同年代の方が多く感染しているので、息子たちは会えない親の事が気になるようです。
「ママ本当に気をつけてね」といつも言います。
ありがたい事です。
息子たちはより素直に親に対する気持ちを行動で示そうとしています。
「今を大事にしないといけない」とウイルスの危機が私たちに教えているように思います。
自分の命、大切な人の命…当たり前と思う毎日、いつでも行ける場所…。当たり前のものは全てありがたいものであることを強く感じるようになりました。
「本当に感謝ですよね」と私たちはよく話しています。
「コロナウイルスの感染は少し減ったけど、油断は禁物よ」と息子たちに言っています。
「この夏、ママの誕生日にアメリカに行けたら行くからね、一緒にお祝いしましょうね。その時はこの時期に覚えた料理、とった写真、書いた曲をママに披露してね」と会える時の様子をみんなで想像しています。
コロナの心配がなくなったとき、ただ普段に戻るのではなく、よりよい明日になるよう準備をしたいと思います。
暗い時こそ、明るい未来を想像しましょう。
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