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同じ年齢が同じ内容を一斉に 実は歴史が浅い、学校のこの光景

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産業革命が進むと、工場で効率よく働かせるために「読み書き・計算」のできる労働者階級の子を迅速・大量に育てる必要が出てきた。そこで英国で考え出されたのが、マニュアル化された教授法を優秀な生徒に教え込み、その生徒(モニター)が教師に代わって他の生徒を教える手法。それが発展し、あらかじめ年齢別に決めた内容を一斉に教える「学級」ができた。明治5(1872)年の太政官布告で「学制」(教育制度)を導入した日本でも、次第に広がっていく。

ギャラリー方式の授業(ハミルトン『学校教育の理論に向けて』より)。柳の著書「〈学級〉の歴史学」によれば19世紀、モニター方式にかわる形で導入され、「一斉授業」の最初の試みになったという

「『学級』とは、無理な旅行を強制され、赤の他人と顔をつき合わせる生活を数年間継続するという、大人にも耐えられない生活を子どもに求めている」。昨年亡くなった教育社会学者の柳治男は、不登校やいじめなど学校で起きている問題を「学級制というパッケージから生まれた病理」と分析して、教育界に衝撃を与えた。

■安上がりに効率よく……学校はパック旅行?

柳の著書『〈学級〉の歴史学 』によると、19世紀の英国で「学級」の形ができていったのと同時期に、酒におぼれがちな労働者を効率的に健全な娯楽に導くための「パック旅行」が出現した。旅行から冒険性や偶発性をなくして、安上がりで気軽に参加できるようにしたパック旅行と同じく、学校も読み書き・計算だけを低コストで効率的に教えるための集団だったのが、特に日本では「運動会」「道徳教育」と肥大化して「子どもの生活のすべて」を抱え込むようになり、機能不全に陥ったというのだ。

1980年に著書『第三の波』でインターネット社会を予言したアルビン・トフラーも、学校を「遅れず、命令を聞き、反復作業に耐える」ための「第二の波(産業革命)の中心的機構」と言い切り、「厳密な年齢別学年制は崩れ、生涯学習が重視される」などと予言していた。………

「同じ年に生まれた人たちだけからなる集団って、学校以外にありますか?」。教育哲学者で熊本大准教授の苫野一徳(39)は「学年学級制の再構築」をひとつのカギに、教育を変えようとしている。「学校にあまりなじめなかった」という苫野は「みんなで同じことを、同じペースで一斉に勉強させるベルトコンベヤーのようなシステムは、多様な子が混ざれば機能しなくなる。その恐れが、人と違うことを嫌い、異質なものを排除する力学を生んでいる」と言う。

苫野は仲間らとともに長野県軽井沢町に、3歳から15歳が混じり合って学ぶ「軽井沢風越学園」を2020年に開く準備をしている。「幼児も小学生も中学生も、高齢者も外国人も学ぶ、ごちゃまぜなラーニングセンターのような形が、未来の学校の姿になるでしょう」(市川美亜子)