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世界報道写真展から

世界報道写真展から——/家族でキューバにどっぷり

[第5回]トマス・ムニタ



Tomás Munita/The New York Times


報道写真家は取材で訪れた土地で、良い被写体を探すことで頭がいっぱいになるものだ。だが、世界的に活躍するチリ人写真家のトマス・ムニタ(42)が、歴史的な変化の時を迎えたキューバで考えていたのは、被写体のことだけではなかった。


2015年、アメリカと54年ぶりに国交を回復したキューバ。ムニタはその年の暮れ、同国を訪れた。何を撮るべきか、特にアイデアもなかった彼は考えた。「妻と子どもも連れて、2カ月間どっぷりとこの国に浸ってみよう」と。


街を歩きながらいつも探していたのは、4歳から8歳の3人の子どもが喜びそうなものだ。「限られた予算に、たっぷりの時間。小さなボスたちを退屈させると、たいへんだからね」。キューバには何度も仕事で来たが、家族と一緒にいると、日常の風景がいつも新鮮に感じられた。


地元の人たちは子ども好きだ。釣りが好きな息子のおかげで、たくさんの漁師と知り合った。家族と一緒にいることで、普段の仕事とは異なる人々と出会い、リラックスした気持ちで街をながめていた。


首都ハバナの廃れた旧市街で出くわした昔ながらの床屋では、男たちの雑談に加わり、飾らないキューバの日常を自然なかたちで切り取った。


ただ、国交回復による観光ブームで、街は急速に変化しているという。普通の住宅が宿泊施設や高級レストランになり、高等教育を受けたエンジニアがタクシー運転手になっていく。変わる街と昔ながらの日常。「同居する二つの世界の不均衡はとても印象的だった」


変わるキューバ


1959年にフィデル・カストロが革命政権を樹立した後、米国はキューバと国交を断絶し、経済制裁で同国を孤立させてきた。2015年7月、当時のオバマ米大統領は、キューバとの国交を回復。翌年3月には現職米大統領として88年ぶりに首都ハバナを訪れ、その11月にカストロは死去した。


長年の経済制裁は、1950年代前後のモデルの米国車が現役で走るなど、独特な街の雰囲気もつくった。国交回復と経済制裁の解除で、米国などから観光客が増加し、レストランや宿泊施設などが次々と開業しているという。ただ、トランプ現大統領は今年6月、商取引の規制などを強化する方針を発表した。


(GLOBE記者 浅倉拓也)

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