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世界報道写真展から

世界報道写真展から——/男子禁制の美容院で

[第4回]ホセイン・ファテミ





男子禁制の美容院でブロンドの髪を飾る女性の華やいだ表情。メイク中の女性の鮮やかな口元。客で賑わう美容院の日常を切り取った1枚は、そう簡単に撮れたわけではなかった。 


「美容院の写真を撮らせてください」。男性カメラマンのホセイン・ファテミ(37)が、テヘランにある美容院の女性オーナーと知り合ったのは偶然だった。「報道されるイランの女性は、黒ずくめの姿ばかり。でも、ベールの下には色鮮やかな姿がある。市民の本当の姿を、外国に知ってもらいたい」。美容院の中に入り、写真を撮りたいと頼み込んだ。


厳格なイスラム教国のイランでは、女性は、家族以外の男性の前では髪や肌をあらわにすることはできない。当然、美容院は女性専用で、男性の立ち入りは禁じられている。


最初は驚かれたが、何カ月もかけ、店の外でオーナーと話し合いを続けた。常連客を説得してもらい、初めて店に入ったのが、撮影日のことだった。この写真のほか、繁華街やプールサイドなどで撮影した作品を『イランの旅』にまとめ、2013年に出版。世界的な注目を集めた。


その年のことだ。米西海岸を旅行していた時に、親しい人から「帰国したら、逮捕されるかもしれない」と聞かされた。そのまま祖国に帰れなくなり、今はシカゴを拠点に活動している。 「国際的に注目されるほど、政府はイランの社会を隠そうとする。本来は豊かな文化を持ち、多様な考えを受け入れる国だったのに」。いつか祖国に帰り、自由に写真を撮りたい。それが願いだ。


イランの女性たちの装い


1979年のイスラム革命以降、イラン国内のすべての女性は国籍や信仰を問わず、公の場で髪の毛と身体のラインを覆う衣服の着用を義務づけられている。丈長のコートとスカーフを着用する人もいるが、頭から足先までを覆う「チャドル」が模範的とされ、それを着なければ入れない宗教施設もある。 欧米の視点では、ベールは女性の抑圧の象徴とみられがちだが、イランでは、貧富の差が目立つ女性の服装を隠す目的もあったという。イスラム政権への恭順さをはかる物差しとしても使われている。街中では、民兵組織などが服装に目を光らせ、最近は、髪をあらわにした写真をSNSに掲載したモデルらの逮捕も相次いでいる。


(GLOBE記者 高橋友佳理)

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