RSS

世界報道写真展から

世界報道写真展から――その瞬間、私は/ドレスを風になびかせて

[第1回]ジョナサン・バックマン

ジョナサン・バックマン
Jonathan Bachman
米国/ロイター


そこをどかないと逮捕されるぞ——。誰かの声がしてジョナサン・バックマンが振り返ると、そこに彼女がいた。黒人男性が警察官に射殺される事件が起きたバトンルージュで、警察に抗議するデモと機動隊のにらみ合いを取材し始めて、2日目のことだった。


彼女は、デモの参加者が歩道に立ち退かされて誰もいなくなった大通りに、ひとり立っていた。静かに、ドレスの裾を風になびかせながら。対する警察官2人は全身を重装備で固めている。そして、彼女は静かに連行されていった。シャッターを押し続けて、31コマ。数秒間のできごとだった。


「すっかり有名人だな!」。翌朝、父親からの電話で、この1枚が世界を駆け巡っているのを知った。メディアは「忘れられない1枚」と絶賛した。


自身もこの写真に満足しているが、それは、この1枚が事実を伝えていると思うからだ。憎しみの連鎖が広がる中で、別の都市では警察官5人が射殺される事件も起きていた。だが、あの時は暴力行為はなかった。「平和的なデモだった。そのことを、正しく伝える写真を撮らなければ、と思った」


芸術的な写真が好きだというバックマンは「誰かが引きずられたり、倒されたりする写真でなくてよかった」と話す。 あの女性、イエシア・エバンスとはデモから5カ月後の昨年12月、報道写真のイベントに招かれて、初めて会った。看護師で男の子の母。「勇敢で誇り高く、力強い。写真の女性そのものでした。


(GLOBE記者 浅倉拓也)


ブラック・ライブズ・マター

昨年7月、米ルイジアナ州バトンルージュで黒人男性(当時37)が白人警察官2人に地面に押さえつけられた状態で射殺された。その様子を目撃した人たちが撮影した映像が引き金になり、抗議する人たちが警察署の前に集まった。大統領だったオバマ氏は直後に演説し、「黒人が警察官に撃たれる確率は白人の2倍以上」といったデータを挙げて懸念を示した。


黒人への暴力に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命も大切だ)」運動は全米各地に広がったが、類似の事件は後を絶たない。今年5月には、テキサス州で15歳の黒人少年が白人警察官の銃撃で死亡。同月、米司法省はバトンルージュの警察官2人を「証拠不十分」として罪に問わない決定を発表した。



(次ページへ続く)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Back number | バックナンバー

[第3回]世界報道写真展 その瞬間、私は 父よ、心は泣いていた

[第3回]世界報道写真展 その瞬間、私は
父よ、心は泣いていた

[第2回]世界報道写真展 その瞬間、私は その場にいたのは偶然だった

[第2回]世界報道写真展 その瞬間、私は
その場にいたのは偶然だった

[第1回]世界報道写真展 その瞬間、私は ドレスを風になびかせて

[第1回]世界報道写真展 その瞬間、私は
ドレスを風になびかせて

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示