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アメリカ社会、分断深まる 「多様な視点」メディアに責務

米ジョージ・ワシントン大学教授フランク・セズノさんに聞く




トランプ米大統領の「炎と怒り」が止まらない。中でも矛先は、大統領選中から、メディアに鋭く向けられている。米国の亀裂が深まるなか、政治とメディアの対立はいつごろから始まり、今後どうなるのか。米CNN記者の経験が長い専門家に聞いた。



——米メディアは、政治と同様に保守とリベラルに分極化しています。いつから始まったのでしょうか。


自分たちの声が反映されていないという保守派の人々の怒りは、1960年代の公民権運動の頃からありましたが、90年代に保守系ケーブルテレビ局「FOXニュース」が登場したことで、真に形づくられました。FOXを創設したのは、ニクソン元大統領のために働いたこともあるロジャー・エイルズ氏です。今、FOXは「公正さ」を装うことすらせず、トランプ政権の代弁者になっています。さらに、オンラインメディアやソーシャルメディアによって、分断は増幅されてきました。


——メディアと世論、どちらの分裂が先に始まったといえるのでしょうか。


世論だと思います。ニクソン氏が大統領に当選した68年は激動の年でした。ベトナム反戦運動や、公民権運動が大きなうねりとなっていましたが、リベラルな文化になじめず、自分の意見を聞いてもらっていないという「サイレント・マジョリティー」をニクソン氏はターゲットにしたのです。しかし、当時、夜のニュースは3大ネットワークしかなく、多くの都市で主要紙は一つだけで、メディアは単層的でした。その後、技術の発達によるコスト低下でFOXなどが新規参入し、ドラッジリポートやブライトバートといった新しいオンラインメディアがニッチな層に響くようになったのです。


さらに社会の亀裂は、多くの人を巻き込むことで広がり、特定の問題を繰り返し取り上げることで拡大されました。ニュースの伝達メカニズムの多様化によって、すべてが大きな問題に増幅されたと思います。


——日本には、「政治的な公平」を求める放送法4条がありますが、米国ではケーブルテレビなどの多チャンネル時代となり、87年に連邦通信委員会(FCC)がテレビやラジオに対する「公正原則」を廃止しました。どのような影響がありましたか?


技術の爆発的な進歩によって、廃止は不可避だったかもしれませんが、一人のジャーナリスト、市民としていえば、廃止はとても有害で、ネガティブな効果があったと感じています。ソーシャルメディアなどに公正原則を適用するのは難しいでしょうが、希少な公共の電波を使うメディアについては、多様な視点を示す責任を持つといった原則の復活を検討すべきではないでしょうか。


——トランプ氏はメディアへの攻撃を続けています。共和党支持者の間で、メディアを信頼する人はいまや14%にすぎません。


とても憂慮しています。トランプ氏は、自分が気に入らない特定の記事や記者だけでなく、報道機関そのものを攻撃しています。報道機関は権力と摩擦を起こしがちですが、民主主義を支える制度の一つです。しかし、多くの米国人は報道機関の本当の役割について深い理解をしているとはいえないし、報道機関も自らの役割を上手に説明できていません。トランプ氏の攻撃が、人々に影響を与えているのは恐ろしいことです。


——この状況は修復できないものでしょうか。


徐々に修正することは可能だと思いますが、長期的には懸念しています。トランプ氏は、政敵を「悪党ヒラリー(・クリントン)」などと呼びました。学校のいじめっ子が使うような言葉が政府のトップから出たことは、米国のデモクラシーの品位を落としました。こうした「(相手を)悪者扱いする戦略」が政治文化に組み込まれ、市民の会話にも入ってきています。永続的な影響があるかもしれないと恐れています。


(聞き手・編集委員 山脇岳志)


フランク・セズノ

1955年生まれ。ラジオ局、通信社記者などを経て、CNNに入社。ホワイトハウス担当やワシントン支局長などを務めた。ジョージ・ワシントン大学教授で、同大学メディア広報学部長。


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