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俳優ダイアン・レインに聞く アメリカ映画界と女性

女性起用の流れ復活? リーダーシップを示し始めた女性監督

インタビューに答えるダイアン・レイン=東京・丸の内の「星のや東京」、山本和生撮影


年齢を重ねた女性の起用が少ない米国の映画界。その現状に挑むかのように、中年期の女性の心の機微を80代の女性監督が描いた米映画『ボンジュール、アン』が7日、日本で公開される。来日した主役のダイアン・レインに、米映画界と女性の今について聞いた。



―― 監督と主役が女性の米映画は珍しいですね。

自分の役者人生を通してずっと、女性をめぐる業界の苦闘を見てきました。(ハリウッド黄金期と言われる)1930~50年代の方が、女性を主役にした女性の物語がもっとたくさんあったんですよ。当時は女性の役者がもっと機会を得られていました。女性の物語が作品の根幹を成していたし、彼女たちが画面に映る時間も今以上に多かったんです。作品もしばらくして口コミで評判を集め、長く上映されていました。


ところが最近は、業界全体が以前とは違ったものとなってしまっています。米国では公開最初の週末の興行成績が決定的な重みを持つようになり、それによって作品が厳しく判断されるようになってしまいました。

『ボンジュール、アン』より © the photographer Eric Caro

――『ボンジュール、アン』は、家事や雑事は妻任せの映画プロデューサーの夫と南仏カンヌで急遽、別行動をとることになった妻アンが、夫の仕事仲間とパリへ車で向かうことになり、寄り道を重ねるうち人生の喜びを発見していく物語。監督エレノアが自身の体験をもとに脚本を書きました。

今作への出演は私にとっても美しい体験でした。泣いたり叫んだりする必要のない映画に出られるのは、アメリカではなかなかないんですよ。


この映画は結婚の終わりについての物語でも、婚外恋愛の話でもありません。最後はクエスチョンマークとともに終わります。自分ならどうする?と自問させるように、観客を巻き込みます。そうした手法が私は好きです。


私が常に最も敬意を表するのは、脚本家です。彼らの台本になければ、私たちは舞台に上がれない。彼らが書かなければ、出てこられないんです。それでいて資金的にもゴーサインが出るような物語を、私たちはもっと必要としています。

『ボンジュール、アン』より © the photographer Eric Caro

―― 複雑な作品がじっくり評価されづらくなっているということですね。

今はどこにでも画面があって、列車の中で映画を見ることだってできます。スマートフォンに気をとられながらね。ケーブルテレビで作品が放送されるようになるのを待つ人たちは、劇場に足を運ばなくなっています。


それに映画は視覚的なメディアです。観客は若い登場人物を見慣れています。ヒット作品を見れば、たいていは若い人たちが出ているものになっていますよね。


もちろん、映画はあくまで利益を追求するショービジネスであって、愛好家のための展示会ではありません。資本主義の世界であって、詩的な世界ではない。観客が何にお金を投じたいか見極めるのが大事だということで、業界は成り立っています。


だから、女性についての物語が少ない、もっと増やしたいと感じるのであれば、ともかくそうした映画を劇場に見に来てもらう、それが一番なのです。


――今作は巨匠フランシス・コッポラ監督(78)の妻でアーティストのエレノア・コッポラ(81)が初めて長編フィクションを監督しました。でも、女性監督も増えてはいません。

ハリウッド黄金期においても女性監督は少なかったです。アイダ・ルピノにリナ・ウェルトミュラーぐらいでしょうか。

『ボンジュール、アン』を撮影するエレノア・コッポラ監督(右)© the photographer Eric Caro

私自身は女性監督の映画に出たことも何度かあります。かつては、彼女たちはあくまで全体の監督役で、指示は各部門に任せて自分ではリーダーシップを発揮しなかったり、あるいはボスとして男性的にふるまったりしていました。男性社会となっている業界に、無理に合わせて過剰適応しているのだろうな、と感じました。


ところが今の女性監督は、男性的にふるまう必要はないと感じ、自身でリーダーシップを発揮するようになってきました。だから以前のような状況は減り、現場ももっとリラックスした雰囲気になっていますね。


今作ではいろんな分野から優秀な女性たちが集まり、製作チームの部門長になったりしていました。エレノアはその人たちをうまく指揮していました。彼女のことは、夫フランシスが監督して私が出演した『アウトサイダー』(83年)の頃から知っていますが、人生のこの段階で新たな仕事へ乗り出すなんて、と非常に驚き、とても元気づけられました。


―― 米社会全体としては女性リーダーが増えています。

業界も変わってきてはいます。以前よりは、私と同世代の女性の役者も配役対象のリストに入り、伝統的な男性の役柄を女性が演じるようにもなってきました。


今作の米国での反応を見て感じたのが、女性の視点の作品をもっと見たいという欲求が観客にも高まっているということです。だから楽観的にはなっています。今のところはね。

インタビューに答えるダイアン・レイン=東京・丸の内の「星のや東京」、山本和生撮影

――自身が映画を監督することは考えませんか。

そうですねぇ、他の誰かに誤った形で語られたくない、と私が強く思えるような物語に出あえば、やってみたいと思います。


――年を重ねるのを恐れる人たちは男女とも多いです。いい年の重ね方とは、何でしょうか。

人生のそれぞれの段階を楽しんで、と言いたいですね。今いる段階からは逃れられないのだから、将来を心配したりせず、今あるものを楽しんでほしいと思います。だって、年をとるのをコントロールなんてできないのですから。



(聞き手・GLOBE編集部 藤えりか)


Diane Lane (ダイアン・レイン)


1965年、米ニューヨーク生まれ。『リトル・ロマンス』(79年)で映画デビュー、80年代に『ランブルフィッシュ』(83年)などフランシス・コッポラ監督の作品に相次ぎ出演してスターとなり、日本のテレビCMや日本映画『落陽』(92年)にも出演。『運命の女』(2002年)でアカデミー主演女優賞にノミネート。

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