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金融界を支配していたのは「欲」ではなく「恐れ」

ロンドンの金融街で働く200人を取材 グローバル資本主義の真の姿をみた

オランダ人ジャーナリスト ヨリス・ライエンダイク氏に聞く


後藤:本の序章で「取材の後に抱いたイメージ」として、飛行機の乗客が、片翼のエンジンからばかでかい火が噴き出すのを偶然見つけ、客室乗務員やチーフパーサーが止めるのを振り切ってコックピットを開けると、そこにはだれもいなかったという光景を描いています。


ライエンダイク氏:そう、空っぽのコックピットだ。実際、いまも飛行機は危険な状態のまま飛び続けている。乗客の一部は不安を感じているのだけれど、大多数は客席で飲み物のサービスを受けている。「量的緩和」や「アベノミクス」といった美味しそうな飲み物をね。


後藤:それは金融業界だけの状況なのでしょうか。いまも続いている?


ライエンダイク氏:僕の本はこれまでに20カ国で翻訳され、講演のためにいろいろな国を訪れたけれど、行く先々で聞くのは、「自分が働く会社は銀行ではないが、経営陣は似たような考えをする」という声だ。市場ルールにすべてを委ねたり、株主利益の最大化を企業の目標としたりする考え方は、英米以外の国々や、金融以外の業界にも広がっていると感じた。



後藤:本を通して伝えたかったことは何ですか。


ライエンダイク氏こんなシステムは長くは続かない。ぼくはジャーナリストとして実態を伝えた。ここからは各国の政治家たちに、どうすれば持続可能な社会を実現できるのかを考えてほしい。ただ、追及すべきは「システム」で、そこで働く人々ではないということも忘れないでほしい。取材に応じてくれたバンカーたちは、それぞれの思いを持って、仕事を失うリスクを冒して話をしてくれた。彼らの話に耳を傾け、何が起きていたかを知ることが、業界の外にいるぼくらにできることだ。





Joris Luyendijk 1971年、オランダ・アムステルダム生まれ。アムステルダム大、カイロ大でアラビア語と政治学を学ぶ。オランダ紙の中東特派員として1998~2003年までエジプト、レバノン、パレスチナに駐在、現地で体験した国際メディアの構造的問題や独裁政権下の報道の難しさを著した『こうして世界は誤解する』(原題・People Like Us:Misrepresenting the Middle East)はオランダで25万部のベストセラーに。


『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』(原題・Swimming with Sharkes:My journey into the World of Bankers) 2011~13年、英ガーディアン紙オンライン版で金融街で働く人々の素顔に迫る「Banking Blog」を連載、1本の記事に数千件のコメントがつく人気コラムに。その経験をもとに著した本書もオランダで35万部以上のベストセラー。20カ国語に翻訳され、英イブニング・スタンダード紙のBest Book of 2015に選ばれた。


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