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長期化する紛争、人道支援はどうあるべきか

ドミニク・シュティルハルト赤十字国際委員会(ICRC)事業局長に聞く



シリア・アレッポ東部のマサケン・ハナノ地区で、建物が住める状態か確認に向かう赤十字国際委員会とシリア・アラブ赤新月社のスタッフたち=2016年11月(ICRC提供)

世界の紛争が長期化する傾向にある。非武装、中立を掲げて人道支援をしている赤十字国際委員会(ICRC)のドミニク・シュティルハルト事業局長に、人道支援を取り巻く現状について聞いた。(聞き手 国際報道部 中野寛)



中野:シリアやイラク、南スーダンなど、各地で紛争が長期化しています。人道支援の現場にどんな影響を及ぼしていますか。


シュティルハルト氏:ICRCが展開している最も規模の大きな10のミッションの現場では、平均して36年以上も紛争が続いています。紛争の長期化は、戦闘による負傷などの直接の被害だけでなく、間接的なインパクトを市民にもたらします。例えばイエメンでは、長期間にわたり医療施設が機能しなくなることで、糖尿病の患者が治療を受けられなくなりました。我々は何百㌧ものインシュリンを運び込みました。


中野:紛争の長期化は、新しい現象なのでしょうか。


シュティルハルト氏:それ自体は、新しいものではありません。ただ、近年の特色は、そうした紛争の戦闘の多くが、都市部で行われるという点です。世界各地で、人々の生活の都市化が進んだことが原因の一つでしょう。また、紛争の長期化は貧困国だけでなく、中所得国でも起きるようになりました。(1990年代の)バルカン半島、ウクライナ、シリアなどの紛争は、その例です。都市部では、水道や電気、通信などあらゆるインフラが集約され、教育やビジネス、医療など生活の基盤がそうしたインフラの上に成り立っています。都市部で紛争が発生し、長期化すると、インフラが破壊され、麻痺します。つまり、人々の生活基盤が長期間にわたり、根底から失われることになるのです。


中野:現在、世界中の問題になっている多くの避難民も、そうした紛争の結果の一つですか。


シュティルハルト氏:いかなる紛争も避難民を生み出しますが、「長期化」は間違いなく、その発生を後押しする一因です。特に今日では、携帯電話など通信技術の発達で、故郷に残る家族や、先に逃れた知人と、いつでも連絡を取ることができます。「故郷を離れて避難する」という選択肢を取りやすくなっているのかもしれません。私は2011年から計4回、シリアを訪ねましたが、最初は「シリアを出たくない」「できるだけ早く帰りたい」と言っていた国内避難民たちも、2015年には「(故郷の)全てが破壊されたし、戦闘が続いている。もう戻れない」と話していました。


中野:紛争の交戦主体も、多様化しています。


シュティルハルト氏:多くの紛争は、「政府vs反政府勢力」という単純な構図では語れません。ローカルな火種が地域的・国際的な対立の文脈に組み込まれたり、過激派に利用されたりして拡大する例も多く、交戦主体が増加します。紛争で生じた政治と力の空白を狙って、国境を越えて流入してくるイスラム過激派「サラフィー・ジハーディー(戦闘的サラフィー派)」主義者たちも、その一例です。さらに、紛争が続くと(戦争から利益を得るアクターである)武器商人や麻薬の密輸業者なども絡み合ってきます。アクターが多いほど、和平合意の形成も、その維持も難しくなります。



(次ページへ続く)

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