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子どもが家庭で育つ社会へ、 本気で動き出すときだ

国際里親機関「コアアセット・グループ」会長に聞く

ジム・コックバーン会長×GLOBE副編集長・後藤絵里 対談


後藤:日本の里親制度は自治体(児童相談所)が運営していますが、イギリスではコアアセット・グループのような民間機関が事業の主体となっているのでしょうか。

コックバーン氏:1994年に私たちが事業を始めるまで、英国でも里親事業は自治体が一手に担っていました。行政側は当初、民間がこの分野に進出することに懐疑的でした。このため、私たちは発達に障害があるなど、養育に困難をともない、専門的なスキルが必要な子どもたちを主に引き受け、実績を積んできたのです。


後藤:民間機関が担うことのメリットは?


コックバーン氏:包括的な支援を提供できることです。里親たちは、子どもの心理療法や教育への支援、子どもたちが気軽に参加できるレクリエーションの機会、そして、より多くの報酬を必要としていました。私たちが事業を始めた当時、里親たちは登録のための研修は受けていましたが、継続して質の高いケアを続けるための支援はまったく足りていませんでした。


また、里親たちには休息も必要でした。ときおりひと息つける場所、仕組みがあれば、彼らのストレスも軽減でき、安定した態度で子どもたちにあたれます。実際、里親たちは、子どもと同様かそれ以上に、話を聞いてくれる相手を必要としていました。


里親担当のソーシャルワーカーと会うのは、子どもを委託される時が最初で最後というケースもありました。里親は養育に困難を感じたときに相談する相手もいません。結局委託は「不調」となり、子どもは里親と施設を行ったりきたりしたり、複数の家庭をたらい回しになったりしてしまうのです。


後藤:行政による里親事業には何が足りなかったのですか。


コックバーン氏:予算不足もあるでしょうが、第一に、種類の違う仕事を担いすぎているのです。英国の場合、行政は子どもを保護し、養育方針を決める審判に立ち会い、実家庭や地域と連携し、里親家庭とも向き合う。里親の育成や支援は、それだけでも専門的な技能を必要とするのに、十分な予算も人もありません。いま、英国では約200の自治体と、約300の事業者が競合して里親事業を受託していますが、個人的には、行政はどの事業者に委託するかを決める業者の選定(措置決定)に専念すべきだと思います。いっぽうで、民間事業者の数が増えすぎて、委託の方針が場当たり的になっています。


後藤:里親ではなく、里親機関が多すぎる?


コックバーン氏:事業者が数多くいることは里親事業の質の向上には役立ちます。子どもにとっての選択の幅も広がりますから。デメリットは、競争が激しくなると、事業者が里親手当の金額の多寡を競うようになり、一部の里親がお金で動くようになっていることです。入札が「価格」に左右され、委託の基準に市場原理が入り込んできてしまいます。こうした状況でもっとも被害をこうむるのは子どもたちです。だからこそ、行政は業者選定を1人ひとりの子どもベースで行わず、入り口の事業者の選定を厳正にして、入札に参加できる業者の数を絞り込んでおくべきです。選定の対象となる事業者には、どんなサービスが求められるかを明確に伝えておく必要があります。


後藤:行政と民間事業者との協力はありますか?


コックバーン氏:まれですね。彼らは私たちを競合相手とみていますから。ただ、諸外国では行政と連携するケースもあります。オーストラリアやニュージーランドでは、傘下のグループが政府と連携しています。日本でもNPO法人「キーアセット」が、大阪府の委託を受け、里親の募集や里子とのマッチング、委託後の支援など一連の事業を行うことになりました。日本財団が出資し、官民連携で里親制度を推進するモデル事業です。


後藤:今後、里親制度の推進をめざす日本に必要なことはなんでしょうか。


コックバーン氏:外国の制度の視察に貴重な時間を費やすのは、そろそろやめにしたほうがいい。英国政府も、児童養護の施策を学ぶためにアメリカによく視察にいきますが、外の制度を採り入れてうまくいったためしがありません。日本はすでに、世界中の制度に関する知見があります。それらをもとに、日本にあった里親制度を構築すればよいのです。

ただ、日本では里親がさほどやりがいがある仕事だと見なされておらず、里親の社会的地位は決して高くはありません。里親たちの仕事に光を当て、輝ける事例を積極的に紹介するなど、何よりもまず、人々の意識を変えなければならないでしょう。


いまも3000人の赤ちゃんが施設で育っているということ自体、日本にとって不名誉なことなのです。幼い子どもが、育ての親もなく、家庭を知らずに大人になっている現状を、日本の人たちはおかしいと感じるべきなのです。



*1)ジム・コックバーン Jim Cockburn

1950年、ロンドン生まれ。ソーシャルワーカーで、ソーシャルワークの修士号を持ち、ソーシャルケアの現場で30年以上の経験を持つ。


*2)コアアセット・グループ Core Assets Group

1994年、イングランドでジム・コッバーンとジャン・リーズが設立した民間里親機関Foster Care Associates(FCA)を母体とする、英国最大の民間里親事業者。里親のリクルートから子どもの委託後の支援まで包括的な里親事業を展開する。傘下のKey Assets International は米国、カナダ、フィンランド、オーストラリア、インドネシアなど各国で里親事業を手がける。職員は約3000人、受託している子どもの数は3000人以上で、事業規模はグループ全体で約620億円。


*3)日本の里親制度

2015年3月末現在、里親登録している家庭は9949世帯、実際に子どもを委託されている家庭は3644世帯。里親に委託されている子どもは4731人で、1家庭が5~6人を世話する「ファミリーホーム」で暮らす1172人を合わせても、保護を必要とする子ども全体の16.5%にとどまっている。



『産まなくても、育てられます』(講談社/後藤絵里著)

子どもがほしい、をかなえるもう一つの方法、知っていますか。出産だけが選択肢ではありません。つらくて長い不妊治療を経て迷い、悩みながら、特別養子縁組で子どもを迎える選択をした8組の夫婦の体験談と、養子縁組の法制度や流れなど実践的な情報をまとめています。

GLOBEでは2011年11月に「養子という選択」を特集しました。





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