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「暴露の世紀」に生きる私たち

だれもがスパイになれる時代、あなたの「正義」って?

土屋大洋・慶応義塾大学教授


私たちは「暴露の世紀」に生きている、という。オバマ米大統領は2016年12月中旬、ロシアのプーチン大統領が米大統領選中、民主党の中枢にサイバー攻撃を仕掛け、共和党のトランプ次期大統領に有利になるよう選挙の操作をしたとして、報復も辞さないといった。もし、事実だとしたら、サイバー空間を通して、対立する国の軍最高司令官である大統領選びをも左右することができる、という前代未聞の時代に入ったということなのか。「暴露の世紀」名付け親の慶応義塾大学・土屋大洋教授に話を聞いた。(構成・GLOBE編集部 梶原みずほ)



――著書のタイトルにもなっている「暴露の世紀」(KADOKAWA)とはどんな時代のことをいうのでしょうか。


インターネット越しにスパイ活動ができるようになったことがいまの時代の特徴です。古来、スパイ活動は行われてきましたが、その担い手は拡大し、政府のスパイ機関だけでなく、誰でも他人の秘密を盗んだり、拡散させたりするというスパイ行為ができるようになっています。


背景には技術の革新があります。コピー機の登場は情報の伝達と拡散を速めましたが、デジタル技術の普及はいっそう加速させています。大量の情報を正確にコピーし、地球の裏側までわずかな時間で届けられるようになりました。


世界的なニュースにならない、小さな暴露はツイッターやフェイスブック、LINE、ブログといったソーシャルメディアを使って毎日行われています。


「暴露の世紀」とは、各種のデジタル化されたデータの暴露が容易になり、ポジティブな目的の場合もネガティブな目的の場合も、それが拡大していく時代になったという意味です。


――アメリカの大統領選はまさに「暴露の世紀」を象徴する出来事でした。民主党候補のヒラリー・クリントン氏が国務長官時代に私用メールを公務に使ったために機密情報が漏洩(ろうえい)したのではないかということ、ロシア政府とみられるグループがクリントン氏の陣営幹部のメール情報を盗みだし、内部告発サイト「ウィキリークス」を通して暴露したこと、これらの二つの問題は選挙結果を左右したとみられています。暴露が、正しことか、間違った行いか、立場によって見方は分かれ、客観的に暴露の行為の是非を判断するのは難しいですね。


それは「正義」が個別化、多様化しているからです。争いがあるとき、当事者それぞれに言い分があり、それぞれに「正義」があるのが普通ですよね。冷戦時代の「資本主義」対「共産主義」といった大きなくくりの正義は単純明快で、判断も容易にできたんです。それが個別の小さな正義や多様な正義が主張されるようになってきているので、わからなくなってきているのです。


ウィキリークスが暴露してきた各種のデータには、個人や企業の不正を示すものも数多くあります。米国政府の公電のような大きなものもありますが、必ずしも巨悪につながるわけではないものも大量に暴露されています。暴露する人にとっての個別的かつ多様な正義に照らして情報が暴露されるようになっているのです。

KADOKAWA提供

(次ページへ続く)

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