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少子化を克服したフランスから学べる?

男の「産休」、無痛分娩、保育学校・・・

ライター・高崎順子さん


少子化に歯止めがかからない日本。一方で、フランスは過去10年間、合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯に産む子供の平均数)が2・0前後で推移しており、先進国では珍しく、少子化を克服した国として知られている。恋に自由で奔放で、いつまでたっても「男」であり、「女」でありたいフランス人・・・そんな、日本とはだいぶ違う国から学ぶべき少子化対策はあるのだろうか。こうした疑問に、16年間フランスに暮らし、出産・子育ての経験があるライターの高崎順子さんは「『アムール(愛)の国』だから少子化を克服したわけではありません。親たちの負担を軽減するあらゆる工夫が進められたからです」という。「フランスはどう少子化を克服したか」(新潮新書)を出版し、東京に一時帰国した高崎さんに話を聞いた。(聞き手・梶原みずほ)




高崎順子さん


――まず、フランスが取り組んだ具体的な少子化対策で、価値観や文化の違う日本でも見習うこと、導入が可能なものはあるのでしょうか。


フランスに暮らし、出産と子育てをしながら、なぜフランスの少子化対策が出生率の回復につながったか、調べれば調べるほど日本にとってヒントがあると思いました。


たとえば、一番可能性が高いのは、パートナー女性の出産後、2週間取得できる男性の「産休」です。これなら日本でも可能ではないでしょうか。フランスでは2002年に施行され、2012年には新生児の父親の取得率が約7割に達しており、産休をとって当然という感じになっています。産休をとらないのは自営業の方か、所得が高いためわざわざ産休をとって手当をもらうよりも有給を利用するほうがメリットが大きいという場合に限られています。


――なぜ男性が2週間産休をとることが少子化対策になるのでしょうか。


男性は出産直後、家庭生活が激変する一番大変なときに、赤ん坊がコントロールできない存在であるということを目の当たりにします。赤ん坊との生活では満足に眠れないし、食事もできないし、トイレに行く時間もないということを体験する一方、赤ん坊は自分がいないと呼吸をする以外は何にもできない、壊れそうな存在だということ初めて学び、責任感が芽生えてくるのです。この「男を父親にする」作業にフランスは意識的に取り組んでいるのです。


私のフランス人の夫はパリの大手食品グループ企業に正社員として働いていますが、私に特に相談もなく、当たり前のこととして出産予定日から14日間取得する計画を決めて会社に伝えていました。


実はフランスも最長2年の育児休暇の取得率は日本と同じくらい低く、男性の取得率は2%くらいにとどまっています。フランスはその原因が期間の「長さ」にあるのではないかと気づき、「産休2週間」という、より使いやすい制度の導入に踏み切ったのです。いまでは一カ月間にのばすべきだという声もあります。


――フランスでは無痛分娩が一般的だそうですね。日本では「おなかを痛めて産む」ということを重視する傾向があると思いますが、少子化克服の理由に無痛分娩がどう関係しているのでしょうか。


無痛分娩は任意選択制の「権利」で、8割以上のお産で無痛分娩が選ばれています。麻酔で出産時の痛みを和らげることにより、出産直後からの子育ての体力と精神的余裕を温存できるという大きなメリットがあります。アメリカも無痛分娩が多い国ですが、アメリカの場合は計画的に無痛分娩の日時を決めています。一方、フランスの無痛分娩は計画をするのではなく、ちゃんと陣痛を待ち、本当に痛くなってから硬膜外麻酔の注射を打つので、ちゃんと陣痛の経験もしているわけです。


私自身、結果的に2人の子どもを無痛分娩で出産しましたが、本当に無痛でよかったと思っています。出産後、すぐにラクになり、出産したその夜から赤ちゃんの世話ができるからです。赤ちゃんの生まれる瞬間に集中できたし、とても冷静に迎えられました。生まれた瞬間の自分自身も、夫の顔も、鮮明に覚えています。それは無痛分娩により、体力と精神力を温存できたから。フランスでは国の主導で麻酔医を増やしており、放射線医、眼科医などと並んで医学生に人気で、収入もほかの専門よりも高くて安定しています。


(次ページへ続く)
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