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先読み世界経済

[第97回]日本企業、加速する海外M&A

各国の独禁規制に警戒を

ケン・シーゲル Kenneth A. Siegel



安易な会議メモはリスク

日本企業が価格カルテルや腐敗防止法に絡む訴訟に巻き込まれ、法律事務所に声がかかる事例も増えている。


これには日本の業界慣行も悪影響を及ぼしている。特に驚くのは、業界団体のちょっとした会合で日本企業はていねいに会議メモを残していることだ。法律の専門家の目を通していないから、米当局などに求められて提出すると、カルテルの証拠とみなされかねないのだ。 訴訟対応に慣れている米企業の場合、誤解をまねく恐れのある不明確な会議メモを安易に残さない。記録する必要があれば弁護士を会議に加える。同業他社が絡む場合は電子メールすらできる限り送らない。


海外展開する際には、汚職に巻き込まれないような心がけも大事だ。たとえば、ロシアは経済成長著しい新興国のひとつに数えられるが、専門機関が評価した腐敗防止策のランキングは180カ国中138位と、ナイジェリアに並ぶ低水準だ。企業は進出先の1カ国ででも汚職に巻き込まれると、世界で評判を落としてしまう。


こうした課題を抱えているとはいえ、日本企業の海外進出意欲は陰る気配がない。最近の円安で海外企業の買収は割高になっているが、アベノミクスによる増益分は、人員余剰感のある国内社員への給与アップに回すより、海外に投資した方がメリットになるという見方もある。


同時に、円安で米投資会社などの東京のオフィスビルへの投資意欲が急回復している。我々の事務所でも不動産投資を支援する部門の業務は、今年に入って大きく伸びている。


それでも、日本企業に対して敵対的買収を仕掛けるような相談はない。米投資ファンドがサッポロホールディングスの買収を断念するなど、これまで失敗例が多いのが一因だ。特に最近は、電機大手が自ら不採算事業の売却を進めるなど、もともと買収できる案件がある。 国際的な法律事務所の役割はますます高まっている。我々も今後4、5年の間に、東京オフィスの弁護士の数を現在より6割多い200人に増やす計画だ。


(構成 GLOBE副編集長 渡辺知二)



ケン・シーゲル

1958年生まれ。シカゴ大ロースクールで法学博士号取得。87年に米法律事務所モリソン・フォースターに入り、94年パートナー。97年から日本のトップの現職。


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