
アジアは経済連携をさらに強めて、成長の果実を分け合うべきだ。中国は日韓や東南アジアを軸にした自由貿易協定(FTA)が最も有効だと考える。だが、米国の存在は排除できるものではない。米中でいずれ、この地域の経済統合に向けた本格的な通商交渉をする日が来る。
先進国の経済が停滞し、成長力に満ちたアジアが注目を集めている。米国は環太平洋経済連携協定(TPP)を使って成長を取り込もうとしている。TPPは工業品や農産物の関税について100%撤廃が原則だ。自由貿易の度合いが強すぎ、中国はすぐには入れない。そして、中国、韓国と3カ国で自由貿易協定(FTA)に向けて協議している日本が、そのTPPに入ろうとしていることに、我々は注目せざるを得ない。
中国のFTA戦略は、10年ほど前、世界貿易機関(WTO)に加盟する交渉を終え、多国間の貿易システムへの参加が決まったころから本格的に始まった。
最初の交渉相手に選んだのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)だった。彼らは中国のWTO加盟で、外資系企業からの投資が中国に集中したり、輸出市場で中国との競争に負けたりするのではないか、と心配していた。地域に起こり始めた中国経済に対する脅威論を和らげるためにも、FTAを結ぶ必要があった。
中国はまず、農産品の関税を下げ、ASEANからの輸入を増やすことで、成長をともに分け合おうとする姿勢を示したのだ。
中国の交渉の基本的な姿勢は、結ぶべき相手であれば、お互いに妥協しあい、できる範囲で結ぶことを優先する。発展途上にある国は中国に限らず、関税にせよ、サービス分野の開放にせよ、成長の段階に応じて約束できる水準が変化していく。先進国とは違う。内容は数年ごとに見直していけば良い。早く結んで利益を実感しながら、先に進むほうが有効だ。
相手を選ぶ場合の三つの大原則は、近い国、結びやすい国、重要な国である。
約10年がすぎ、中国は香港、マカオのほか、ASEAN、チリ、ペルー、シンガポールなど7カ国・地域とFTAを結んだ。オーストラリア、ノルウェーなどとは交渉中で、インドや韓国とは交渉に向けて研究を重ねている。中日韓のFTAもこの段階にある。今年5月に中国で開かれる3カ国の首脳会談で、正式な交渉入りを合意する方向で協議している。
中国は数年前から、日本と韓国に対し、FTAの締結を呼びかけてきた。日本と違って韓国は、積極的に反応してきた。韓国は中国へ進出した自国企業に対する部品輸出などで、大きな貿易黒字を稼いでいる。日本が結ぶより先に中国とFTAを結び、日本企業に差をつける考えもある。韓国は大統領選挙を控えて政治的に微妙な時期だし、日本と同様に農業問題を抱える。それでも韓国は、欧州連合や米国との交渉を終え、次は中国と正式に交渉を始める方向だ。
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