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先読み日本経済

[第19回] 鳩山首相はAPEC新時代を主導せよ

ピーター・ドライスデール Peter Drysdale オーストラリア国立大名誉教授

 

ボゴール目標は、94年にインドネシアで開かれたAPEC首脳会議で採択された。「オーストラリアや日本など先進国は10年までに、中国やASEANなど途上国は20年までに自由化を達成する」とし、これまで、APECの目玉になってきた。

日本にとって貿易自由化の最大の障害は、農産物市場の保護である。鳩山政権は、日本の農産物貿易で残る障壁を取り除くため、全く違ったアプローチを必要としている。
またAPECは、地域協力の焦点を、関税など国境における障壁の除去から、構造改革と機構面での平準化へとシフトする必要がある。具体例としては中国が全面的に参加する形で、外国からの投資受け入れに関する問題を議論することだ。

 

その際、APECの活動をG20プロセスに連結していくことが重要だ。G20構成国の中のAPECメンバー9カ国(米、日、ロシア、カナダ、メキシコ、中国、韓国、インドネシア、オーストラリア)の指導力が期待される。さらに、インドがAPECに加盟した暁には、議論の輪に入れるべきだろう。
APECの政治的な成果も、経済的成果と同等か、それ以上に大きい。例えば、天安門事件後の中国と米国の緊張、96年に中台海峡で起きた危機、日本と中国の間では95年の貿易摩擦や05年に小泉政権下で起きた問題、東ティモールをめぐるオーストラリアとインドネシアの問題が起きた際に、対話を促し、緊張を緩和した。
また、APECは、テロ対策や気候変動、エネルギー安全保障など様々な問題を議論する非公式の対話の機会をつくってきた。横浜会議が開かれる10年は新規加盟のモラトリアム(一時凍結)見直しの時期にあたる。加盟を望む国の中でも、インドは世界貿易の一大プレーヤーだ。

「アジア太平洋共同体」とは

国際政治の最前線では今、オーストラリアのラッド首相が「アジア太平洋共同体」の構築を提唱している。これはアジア太平洋の主要国間で政治と安全保障についての対話をより高いレベルに引き上げることを狙っている。
ラッド政権は07年の発足以来、アジアで起きている大きなパワーシフトを戦略的にとらえ、活用しようとしている。中国、インドの台頭という、アジア地域の構造変化への対応が迫られているためだ。
「アジア太平洋共同体」構想が、広く受け入れられ、その基本的な狙いである政治・安全保障の目的を達成するためには、APECや他の東アジアの機構に関係づけられることが必要になる。
この観点から、日本は、横浜でのAPEC首脳会議の際に小さな非公式会合を主催して欲しい。参加は主要な10カ国程度にして、意味のある対話ができるようにする。インドを招待して、同国が主要メンバーである東アジアサミットとつながり、また同国のAPEC加盟への地ならしをするべきだ。
APECが10年に成し得るのは、インドを加盟させ、「アジア経済の主要国が顔をそろえている」という形を整えること。そして、「アジア太平洋共同体構想」をたたき台に、政治と安全保障についての最初の非公式対話をスタートさせることだ。
これらの実現は、鳩山首相にとって外交上の成果になるだけでなく、日本をアジア地域外交の中心に置くことになるだろう。

(訳 GLOBE記者 竹内幸史)

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