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日本では人を「理系」、「文系」にわけることがよくある。
感覚的な議論として、主に理系の人たちの間で「理系は文系より冷遇されている」という見方がある。文系から見れば「理系は人づきあいが苦手。実験室にこもっても、結果が出せなければ、待遇が低くても仕方がない」という見方があるだろう。

現実はどうだろうか。先日発足した鳩山内閣は、理系が多い。鳩山由紀夫首相を始め、閣僚では菅直人、平野博文の両氏も理工系学部を卒業している。ただ、これは日本の政治家ではまれな例だ。
人材活用を議論する自民党の委員会に「日本の企業では、先進欧州諸国と比べて、理系出身の社長の比率が低い」(講談社刊『理系白書』)とするデータが示されたことがあった。
英国、ドイツ、フランスでは半数以上が理工学系の出身なのに対して、日本は約3割にとどまるという。生涯賃金でも、文系が理系を大きく上回ったという調査もある。
企業に限らず、中央官庁でも、上級公務員試験の合格者の55%が技官(理系)なのに、局長では13%、トップの次官では3%しか理系の人材がいないという。
なぜ、理系の人材が、組織や社会の大きな方針を決めたり、運営を担ったりする幹部層に少ないのか。
1871年の工部省の報告書には「事務官僚に比べて技術官僚の地位を低くすべきだ」という記述がある。明治政府以来の伝統に、今も縛られているのも理由の一つだろう。
また、現在の高等教育でも、経営は文系、物作りは理系といった分担を前提に、理系の人材を狭い役割に押し込めていないだろうか。
欧米の大学院では、Management of Technology(MOT=技術経営)というコースがある。スタンフォード大とマサチューセッツ工科大のビジネススクールが始めたのが最初とされる。
自社の技術が社会にどれだけ意味があるのか。それを知る人間が広い視野で戦略的に企業経営をする必要性が広く認識されている。
私は理系人間を企業や官庁でもっと優遇しろ、と言っているのではない。むしろ、理系人間の多くが、企業などの組織マネジメントやリーダーシップに対して関心が低く、発言も少なかったことを危惧(き・ぐ)している。
(次頁へ続く)
1954年生まれ。
京都大学理学部(宇宙物理学専攻)卒業。東京大学工学博士(電子情報工学)。日本IBMなどを経て、85年にアスキー入社、93年に取締役。米ベル通信研究所の訪問研究員を経て、96年にインターネット総合研究所を設立。2005年にナノオプトニクス・エナジーを設立。著書に『科学技術と企業家の精神――新しい産業革命のために』(岩波書店)など。