TOPへ
RSS

先読み日本経済

[第17回] 米医療保険改革の行方
まずは増税せず制度実現を

ロバート・ブレンドン Robert Blendon ハーバード大教授

人気の高かった米オバマ政権が苦境に立たされている、と聞くと米国外の人は驚くかもしれない。
原因は最優先課題に掲げた医療保険改革。議会での法案づくりが難航しているからだ。
議会休会中のこの夏、全米各地の集会で改革反対派が激しく議員らに詰め寄る映像を記憶している読者もいるだろう。

ロバート・ブレンドン氏

もっとも、その存在と影響力は誇張され気味だ。あまり表立って語られないが、反対派の背後には宗教団体がいる。政府のコントロールが強まれば、妊娠中絶や家族計画が容認されたり、終末期の医療が制限されたりと、宗教原理と根本的に相いれない事態が起きるとの懸念が、彼らを熱狂的な反対へと走らせている。
本質的な問題はやはり、改革に必要な財源調達の難しさであり、現状に不安はあっても増税には反対する多くの納税者の存在だ。
米国は主要先進国中で唯一、国民全体をカバーする公的医療保障がない。国民の半分以上は雇用主が提供する民間保険に入っている。高齢者向けや低所得者対象の公的保険や扶助はあるが、枠組みから漏れた無保険者は人口の15%(4600万人)に及ぶ。
一方で医療費の膨張には歯止めがかからず、国内総生産(GDP)の16%(日本は8%)に達している。
この結果、民間保険料が高騰し、企業経営や家計を圧迫。さらに無保険者を増やす悪循環に陥っている。低所得者向けに医療費を補助する州や連邦政府の財政負担も大きい。
オバマ大統領と民主党議員らは、新たな公的保険を創設し、民間保険と競わせることや、保険加入の原則義務づけを柱とする改革案を提示した。だが、賛成派と反対派の対立は激しく、当初目指していた8月初旬の関連法案成立を見送った。
米国の医療保険改革は、93~94年にかけてクリントン政権も試みたが失敗している。なぜ、これほど難しいのか。

(次頁へ続く)

ロバート・ブレンドン氏の略歴

1942年生まれ。
シカゴ大学で経営学修士(MBA)、ジョンズ・ホプキンス大で博士号を取得。専門は医療政策と政治。 大学と新聞などが連携して、公共政策に関する世論の動向を探る調査プロジェクトを率いている。ハーバード大では公衆衛生大学院とケネディ行政大学院の双方で教鞭をとる。

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長 新創刊のあいさつ

このページの先頭へ