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今年初め、パナソニックの大坪文雄社長と話し、同じ問題意識で意気投合した。パナソニックは、新興国の中間所得層向けに機能を絞り込んだ白物家電の開発・販売に力を入れるのだという。
ソニーも、中国の消費者ニーズをとらえようと、上海にデザインセンターを設けている。
大手ファスナーメーカーの場合は、新興国向けの第2ブランドをつくった。普通に使うには問題がない範囲の強度にし、その代わり価格を抑えたという。
経済産業省が昨年末から今年初めに実施した企業アンケートでも、アジアへの視線に変化が見られた。例えば中国の長江デルタ経済圏への進出において、「安い人件費」を求める声は、進出当初の52%から40%に減った。その一方、「現地販売を目的とする市場開拓」との答えは39%から57%にまで増えたのだ。

日本の高い技術は使うが、企画・設計は中間層の住む国で行い、現地のニーズを取り込む。こんな「戦略的な低コスト化」を進めれば、日本ブランドが持つ高級感と信頼感を維持した「廉価良品」を生み出せるはずだ。政府支援も生かしてボリュームゾーンに食い込むためには、技術力の優位性を維持することが不可欠だ。今春、成立した改正産業活力再生特別措置法(産業再生法)で、政府と民間が共同出資して「産業革新機構」をつくることが決まった。革新的な技術の結集・実用化を目指す事業に、最大で9000億円規模の出資が可能になる。
今年度からの税制改正も企業の研究開発の支援に役立つ。これまで海外子会社から親会社へ配当する際、日本の法人実効税率が高い分、税負担が重くなっていた。改正により、海外からの配当を国内の利益に算入しなくてすむようにした。これで海外に留め置かれていた資金が国内に還流しやすくなり、リスクをとった研究開発がしやすくなるだろう。
これからの日本は、少子高齢化が進む中で、国民の生活と社会保障の水準を維持しなければいけない。世界にまだ類を見ない挑戦だ。
人口が減って国内需要の伸びに限界がある以上、外需を使って経済成長を達成するしか道はありえない。
しかし今後は、国内で生産したモノを直接輸出して稼ぐ利益は相対的に減り、海外への投資で稼いだ配当などによって日本の経済力を維持する構図も強まるだろう。
そうであれば、国内で生まれた付加価値を表す国内総生産(GDP)に重きを置いたこれまでの考え方から脱却する必要がある。海外での稼ぎを含めた収益を表す国民総所得(GNI)をどう増やすか、という発想に変えていく必要があるのではないか。
世界の政治・経済の枠組みも、先進国中心から、中国やインドなど新興国を含むG20に移りつつある。経済成長を続ける新興国のボリュームゾーンの市場を開拓することで収益を上げ、資金を日本に還流させて、次の時代を担う技術開発に投資していく。こうした循環が今後、ますます重要になっていくはずだ。