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先読み日本経済

[第15回] 「ボリュームゾーン」に活路を
G20時代の日本の産業戦略

望月晴文 Harufumi Mochizuki 経済産業事務次官

世界的な不況に見舞われ、日本経済が苦しんでいる。輸出の落ち込み幅が主要国で最大だったことから、「輸出依存型の経済が問題だった」という論調が多い。だが私は、むしろ輸出から十分に利益を得られていないことに問題があるとみている。
2年前、資源エネルギー庁長官として、北アフリカのリビアを訪ねた。町を歩くと、外付けのエアコンには、韓国メーカーのマークばかり。日本製品は十分入り込めていなかった。

望月晴文氏=野島淳撮影

なぜなのか。日本のエアコンは世界一だと思う。よく冷えて、壊れないだけでなく、運転中の音も小さい。だが、現地の人たちは「静かさ」のような高い機能はなくても、「値段が安く、よく冷える」方が良いと考えているようだった。
日本の商品は、経済発展で急速に増えてきた「新興国の中間所得層」のニーズとミスマッチを起こしている、と感じた。
一世帯の可処分所得が年間5000ドル~3万5000ドルを中間所得層(ボリュームゾーン)と定義してみよう。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)ではこの層が、2002年の2.5億人から07年には6.3億人にまで増え、今後も厚みを増す。
日本市場は、品質への要求が世界一厳しい。そこで勝ち残った製品は、世界の富裕層を顧客として獲得してきた。しかし、ボリュームゾーンが相対的に厚くなるほど、この戦略だけでは市場の取りこぼしが大きくなってしまう。
ボリュームゾーンには、初めて車や家電製品を買う人が多い。80年代、ソニーは「マイ・ファースト・ソニー」と名付けた子ども向けのAV機器を作っていた。幼いころからソニーの製品に慣れ親しめば、大人になってもソニーブランドに愛着を持ってもらえるという戦略だ。
いま、韓国企業は同じ狙いで、新興国の中間所得層に製品を浸透させているのではないか。
日本製品が「高嶺の花」でいる間に品質と高級感でも追い上げる。いずれ「子どもの時から親しんだブランド」の強みを生かし、日本が得意とする富裕層相手の市場まで奪いにくるのではないか。

(次頁へ続く)

望月晴文氏の略歴

1949年生まれ。
京都大学法学部を卒業し73年、通商産業省(現・経済産業省)に入省。日本貿易振興会(現・日本貿易振興機構、JETRO)デュッセルドルフ・センター所長、産業政策局企業行動課長、商務流通審議官などを経て、03年から中小企業庁長官、06年から資源エネルギー庁長官を務めた。08年7月から現職。

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