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先読み日本経済

[第12回]逆走する経済政策
これで成長できるのか
大田弘子 Hiroko Ota 政策研究大学院大学副学長

わが国の経済落ち込みの背景には、サービス産業や農業の生産性が低すぎるという構造的な問題が横たわっている。このことが以前から地域経済の弱さにつながっており、製造業が弱い地域の経済は、金融危機の前から厳しかった。
 
したがって、単に一時的に需要を増やしても、地域経済が立ち直ることはない。ここで必要なのは、危機をバネに構造的問題に取り組むという発想である。そして、そのためには、政策をスクラップ(破棄)とビルド(創設)の組み合わせで講じることが重要だ。
 
スクラップとは、規制などの制度改革である。支援策(ビルド)とセットにして、それをテコに難しい制度改革(スクラップ)を進めるのである。  
例えば、農業を雇用の受け皿にするには、農業生産法人への補助金だけではなく、企業参入への一段の要件緩和が必要だし、農地の大規模化を進めるには、減反廃止をめざした専業農家への支援策や、農地の転用期待を排する制度改革が必要だ。
 
しかし、今回の経済対策は「ビルド&ビルド」である。スクラップはどんなに小さくても難しいが、ビルドには誰も文句はない。危機だから制度改革などと言っていられない、と反論されるだろうが、日本のように構造的問題を抱えた経済の場合は、危機をバネに改革への突破口を開くことを考えなくてはならない。危機だからこそ、改革に踏み切る力が生まれるし、財政出動の機会を生かすことができる。
弱いところを弱いまま守っても、5年先の経済への展望は何ら開けない。このことは90年代に学んだはずである。

見えない政策決定過程

第三は、プロセスについてである。経済対策の策定にあたって、首相の指示は経済財政諮問会議ではなく、まず与党になされている。これが私には残念でならない。90年代の景気対策は、天から降ってくるように規模の議論が起こり、どんな政策が打ち出されるのか、中身の決定過程は国民からは見えなかった。
 
しかし、経済財政諮問会議が創設され、補正予算もまずは諮問会議で議論がなされ、与党との調整を経て政府案がつくられるようになった。私が経済財政担当相を務めているときも、補正予算を含めた「予算の5原則」をつくり、諮問会議で議論をしてきた。与党と調整を行うのは当然のことだが、まず国民から見える諮問会議の場で、首相のリーダーシップを生かして案を策定し、その後に与党と調整を行うのと、最初から与党で策定するのとでは、プロセスは決定的に違う。
 
では、最大野党の民主党の経済対策案はどうかというと、上記の点でほとんど違いはない。
緊急経済対策の基本方針には、「既得権温存を目的とする事業、旧来型公共事業などの非効率な事業を排し……」と書かれており、このことはまさにスクラップだが、これを具体化した政策は見当たらない。自民党以上に「ビルド&ビルド」だ。
 
与党と野党の最大の違いは、種々の政策を、予算という形で最終的な出口まで示す責任を負うかどうかにある。予算という最終形に落とす必要がなければ、政策論議は比べものにならないほど楽だ。民主党は、政権交代をめざすのならば、
そろそろ細部に至るまで政策の出口(予算)を示すべきである。
 
いま、経済対策において、自民党と民主党の違いはきわめて分かりにくく、対立軸が見えなくなった。経済政策に関して明確な対立軸がなく、有権者は途方に暮れる、という意味でも、90年代に戻ってしまったようである。

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