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現場を旅する

[第103回]ニューオーリンズ、八雲が愛した「死者の街」

田玉恵美 GLOBE記者




Photo: Tadama Emi
《ニューオーリンズ》
米南部ルイジアナ州の港湾都市。年間1000万人を迎える全米有数の観光地。2005年のハリケーン・カトリーナで市街地の8割が浸水。45万の人口は一時半減したが、約40万まで戻ってきた。

















美食とジャズで知られる米ニューオーリンズの街は、どこか霊気に満ちている。繰り返される自然災害と、交易の街に花開いた独特の文化。のちに小泉八雲の名で知られたラフカディオ・ハーンも、来日前にこの街に住み、その魅力にとりつかれていた。ハーンが愛した混交と死者の街を歩いた。


市中心部から少し離れ、大学病院や駐車場が立ち並ぶ一角に、ぽつんとレンガ造りの2階建てアパートがある。壁の小さな掲示板が、ハーンが1882〜87年にここに住み、著作活動をしたことを伝えている。ミシシッピ川に面し、交易の拠点として全米はおろか世界中から人と物が集まったニューオーリンズを、ハーンは新聞記者として駆け回った。フランス、スペイン系白人とアフリカ人奴隷との混血などによるクレオール文化が花開いていたころだ。


古書店主のベッカムさん
Photo: Tadama Emi








「彼の本は人気だけど、なかなか入荷しないんだよ」。フランス植民地時代の街並みが残る「フレンチクオーター」にある創業49年の古書店「ベッカム書店」を訪ねると、共同経営者のケアリー・ベッカムさん(80)が迎えてくれた。店の奥から、ハーンが1885年に出版したクレオールの伝承本の復刻版を出してくれた。値段は9ドル95セントだった。


いまニューオーリンズでハーンのことを知る人は少ないが、当時は有名人だったという。「キリスト教の世界とは違う混沌(こんとん)とした文化が彼を引き付けたんだ」とベッカムさん。クレオール料理について書き残したのも彼の功績だという。


路上演奏者が街中に
Photo: Tadama Emi






街角でストリートミュージシャンたちが演奏する即興のジャズを聞きながら、近くの有名レストラン「ガンボショップ」を訪ねると、店の外まで行列ができていた。ガンボスープのほかジャンバラヤなど代表的なクレオール料理が一皿で楽しめる1番人気のコンビネーションプレートを頼む。ガンボはタマネギやピーマン、セロリがエビやカニと一緒に煮込まれたとろみのあるシチューのこと。奴隷たちが持ち込んだアフリカ原産のオクラが入っているのも特徴だ。「この豊かなフレイバーが人気の秘密だよ」と店員のアーリーさん。ハーンが聞き書きしたレシピは数百にものぼるという。




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