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現場を旅する

[第102回]"ショクニン"のいれるエスプレッソ

神谷毅 GLOBE記者





ワルシャワの旧市街地
Photo: Kamiya Takeshi
《ワルシャワ》
ポーランドの首都で、ヴィスワ川が南北を走る。人口約170万。大国に挟まれ、周辺から分割や占領をたびたび受けてきた。歴史地区とは対照的に、中心市街地には「東側」の雰囲気が残る。

ポーランドの今と昔が詰まった、約200年の歴史のあるカフェがあると聞いて、足を運んだ。


ワルシャワにあるカフェ「テリメナ」。エスプレッソをいれるバリスタとして働くミハウ・スパラヴィエルさん(22)が店の中を案内してくれた。


2階では1800年代初め、パリに移る前の若き日のショパンがピアノを披露した。ナチス・ドイツの占領下にあった1930年代末から40年代前半、カフェにはドイツ人だけが出入りした。


第2次世界大戦で街はことごとく破壊された。世界遺産になっている歴史地区の建物は「壁のひびに至るまで」と言われるほど忠実に、絵画や写真をもとに戦後、再建されたものだ。テリメナもこの時、元に戻った。


52年に成立した共産主義のポーランド人民共和国のもと、カフェは国営に。89年に冷戦が終結すると民間の手に移った。そして3年前、大手のコーヒーチェーンがカフェを買った。


案内を終えたころ、スパラヴィエルさんの口から突然、「ショクニン」という日本語の単語が飛び出した。「東京に、すきやばし次郎というすし屋がありますよね? テレビで職人の小野二郎さんのドキュメンタリー番組を見て、『僕はエスプレッソづくりの職人だ』と思ったんです。小野さんは毎日、すしを握る。僕の場合はエスプレッソ。僕も毎日、もっといいものを作ろうと努めています」


歴史地区を訪れた。広場に甲冑(かっちゅう)を身につけて剣を振り回す騎士姿の男がいる。大道芸人のパベル・スタジンスキーさん(34)。「僕の親戚は昔、ワルシャワの偉い人だった。高貴な家の出の僕は、本当の騎士なんだ!」


公共交通機関の1日券を15ズロチ(約430円)で買い、路面電車で大戦後に整備された街の中心部へ。旧ソ連共産党書記長スターリンが「ポーランド人民への贈り物」として建てた文化科学宮殿が目に飛び込んでくる。塔も含めて高さ237メートル。共産党時代には、こんなジョークがあったそうだ。「ワルシャワで最も美しい所は?」「文化科学宮殿に上ったら見られるよ」

 

周りには建設中のビルが目立つ。完成したビルの壁には超大型の広告の数々。景観を損なうと行政が規制に乗り出すほどだ。


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