

躍動感あふれる4頭立て馬車に乗った太陽神アポロンの像だ。昨年10月に再オープンしたバレエとオペラの殿堂、ボリショイ劇場のシンボル。その真上に描かれていた「鎌と鎚」の旧ソ連の国章は、昨年秋までの6年に及ぶ劇場の大改修でロシアの国章「双頭のワシ」に代わった。
ボリショイの起源は1776年。3度の火災を経て1856年に再建された姿が現在のものだ。ソ連崩壊から20年を経て、劇場内外でソ連時代のすすを落とし、帝政ロシア時代のロマノフ朝の輝きを取り戻した。総計で重さ4.5キロ分の金箔(きんぱく)を装飾に施した館内は絢爛(けんらん)豪華だ。

再オープン後に上演されたバレエの大作「眠れる森の美女」を見た。奥行きのある荘厳なセットの舞台で、オーロラ姫や妖精たちの華麗な踊りが次々と繰り出される。カーテンコールも延々と続いた。
新しい舞台は、七つの基盤を自由に組み合わせる可動式。現代装備の粋が導入されている。一方で、室内の細かな装飾か手にクレムリンの赤い城壁を眺めて進むと、左手に白亜の殿堂が姿を現す。目を引くのら王侯貴族の趣向が今によみがえる。メドベージェフ大統領の肝いりで修復工事を任された「スーマ・グループ」のミハイル・シドロフ社長顧問が「伝統と現代技術の融合」と強調していたのを思い出した。
観劇の前後に気楽に行けるレストランは、ロシア版ファミレスともいえる「ヨールキ・パールキ」だ。意味は「なんてこった」などの俗語。メニューも豊富でいつも混んでいる。
筆者お気に入りのセットがある。黒パンを発酵させたコーラのような飲料のクワス(0.5リットルで約250円)。キャベツ、きのこ、ひき肉が入ったピロシキセット(6個で約450円)。ボルシチ(約320円)。川魚のマスのグリル(約720円)。キュウリの酢漬けなどロシア伝統のサラダバーも充実している。

1962年生まれ。
大阪社会部などを経て2008年9月から現職。
エリツィン政権からプーチン政権に変わる99〜01年にもモスクワ勤務。
新年は赤の広場で迎えた。